【大学野球】「投手でも野手でも1位」今秋ドラフトの目玉、日体大の二刀流・矢澤宏太が抱く野望

日体大・矢澤宏太【写真:小林靖】

日体大・矢澤は2年秋に野手で、3年秋に投手でベストナイン

首都大学野球の春季リーグ戦は4月2日に開幕する。投打の二刀流で注目され、今秋のドラフト1位候補と期待される日体大の矢澤宏太投手は「最優秀投手」と「首位打者」、2つの目標を掲げた。投手でも野手でもドラフト1位の評価を受ける選手を目指し、指名漏れを経験した4年前の雪辱を期す。

今秋のドラフトで最も注目される選手とも言える存在。投手としては、左腕では貴重な140キロ台後半の直球に、縦と横に変化する2種類のスライダーやチェンジアップを操る。野手では長打力に加えて50メートルは5秒台の走力も魅力。投手なのか、野手なのか。ドラフトを控える大学4年生のシーズンを前に、矢澤が選んだ答えは「どっちも」だった。

「リーグ戦では最優秀投手と首位打者を獲得することが目標です。投手としても野手としても、単体で見たときにドラフト1位で評価してもらえる選手を目指しています」

日体大で1年春から外野手でリーグ戦に出場した矢澤は、2年秋のリーグ戦で打率.368をマークしてベストナインに選ばれた。3年生からは本格的な二刀流に挑戦。春のリーグ戦は投手で3勝2敗、防御率0.90と圧倒的な力を見せた。一方、打者としては打率.182と低迷。投打を両立させる難しさに直面した。秋のリーグ戦は3勝2敗、防御率2.00でベストナインに輝き、打者でも打率を3割に乗せて二刀流の可能性を感じさせた。

大学のリーグ戦は土曜と日曜の連戦になる。矢澤は土曜に先発投手を務め、打順は3番や4番に座った。日曜は野手として中軸を担った。3年の春は首や股関節の疲労から体幹が安定せず、打撃フォームが乱れたという。反省を生かすため、秋のリーグ戦に向けて調整方法を変更。練習試合などで野手として出場する試合前に投球練習をしたり、投手で出場した試合翌日の朝に打撃練習をしたりして、“二刀流仕様”の体をつくり、体の張り方も確認した。

「投手と野手、どちらもやる感覚は分かってきた」

その結果、秋のリーグ戦で打率が上昇。一定の手応えをつかんだ。それでも「投手と野手どちらもやる感覚は分かってきましたが、単打が多くて自分らしい打撃ができませんでした」と振り返り、「今季は納得できる結果を出したいと思っています」と力を込めた。

さらなる高みを見据えるのは理由がある。藤嶺藤沢高3年の秋、矢澤はプロ志望届を出している。しかし、ドラフト会議では最後まで名前は呼ばれなかった。「今になると、高校の時はプロ野球への思いは強くなかったと思います。ただ、指名漏れをした時に悔しい、プロに入りたいという思いがこみ上げてきました」。多数のプロ野球選手を輩出している日体大に進み、4年後にドラフト1位で指名を受けて活躍できる選手になると誓った。揺るぎない決意を胸に迎えたドラフトイヤー。矢澤には思い描いている理想の選手像がある。

「大学やプロで、矢澤が登板するから試合を見に行こう、矢澤の打席だからテレビを見ようと思ってもらえる選手になりたいと思っています。色んな方に注目されることでモチベーションは高くなりますし、成長できると考えています」

追い求めるのは「野球ファンの1人として見ている」というエンゼルス大谷翔平投手。日米の野球の常識を覆し、野球ファン以外も惹きつける姿に目を奪われ「大谷選手が登板する試合は見たいですし、打席の時だけでもチャンネルを変えて見たくなります」と言葉に熱がこもる。投手でも野手でも見る人を魅了する選手へ。二刀流・矢澤のドラフトに向けたシーズンが開幕する。(間淳 / Jun Aida)

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