【interview】独特な世界観のジオラマを作るHanabira工房、創作の極意と素顔に迫る!

100円ショップの材料を使ったジオラマや、独自の世界観や日常の一コマを再現したドールハウス作品を発表しているHanabira工房。YouTubeの再生回数は500万回超の作品もあり、チャンネル登録者数は81万人を超え、今も増え続けています。

そんなHanabira工房による初の書籍『ちいさい世界(もの)づくり~身近なものでできるジオラマとドールハウス~』(小社刊)が先日発売されました。同作では、作品の世界観やこだわったポイントを詳しく解説しているほか、初心者でもできるようにアレンジしたジオラマ&ドールハウスの作り方が、全プロセス写真付きで掲載されています。

老若男女に支持されるHanabira工房さんが、ミニチュア作りを始めたきっかけはなんだったのか、そして多くの方に支持される優しくて興味深い世界観作りの源流はどこにあるのか。ベールに包まれた素顔に迫りました!

スポーツばかりやっている子ども時代でした

――うちの家族もHanabira工房さんの動画のファンで、今回の『ちいさい世界(もの)づくり~身近なものでできるジオラマとドールハウス~』をじっくり読み込んでいました(笑)。丁寧な解説もそうですが、Hanabira工房さんの人柄が作品にも反映されていて、それが多くの方々に支持されているんだろうなあ、って思います。

Hanabira工房 ありがとうございます! やはり作業中はどうしても1人なので、見てくださっている方のコメントに助けられたり、アイデアの元になっているので、本当にありがたいです。

――ミニチュア作りを始められたきっかけを教えてください。

Hanabira工房 高校の頃、今後の進路について考える機会が多くなって、漠然とですが“モノ作りに携わりたいな”って思ったんです。高校2年生くらいから美大に進学したいと、予備校にも通っていたのですが、志望していた学校には全部落ちてしまって…。

――それは落ち込みますね。

Hanabira工房 たしかに、そこで落ち込みはしたんですけど、それよりもその結果に納得いかないな、というのも大きくて。

――え、すごいですね……!

Hanabira工房 そもそも、予備校に通っていたときも、自分が作ったモノへの自信と、評価してくれる人との感覚のズレをすごく感じていたんです。相手が求めていることをやれば良い評価をもらえるけど、それが自分の表現したいこととは逆だった場合、自分としては表現したいほうを選びたい。その想いが強すぎて、志望校に全部落ちてしまったわけですが(笑)。じゃあ自分のやりたいことをやって、ダイレクトに評価が返ってくる場って考えたときにYouTubeが良いんじゃないか、と思って始めたんです。

――そういう経緯があったんですね、そこで折れなかったからこそ、Hanabira工房が生まれたわけですもんね。ただ、YouTubeで表現するといっても、いろいろとあると思うのですが、そのなかでもミニチュア作りを選んだのは、Hanabira工房さんが小さい頃からそういうミニチュア作りが好きだった、という背景とかがあるのでしょうか?

Hanabira工房 いえ、幼少期はスポーツしかしてなかったですね(笑)。

――え、それはまたミニチュア作りとは真逆ですよね? どういう経緯で興味を持ちはじめたんですか?

Hanabira工房 実は、人と競うのが本当に苦手で。スポーツはそこが基本じゃないですか。なので、だんだんと自分には合わないなと思ってきて。消去法、というとあまり聞こえが良くないかもしれないのですが、ミニチュアやジオラマなどの創作活動は、基本作っているときは1人ですし、その最中に争ったり競ったりすることもない。予備校に通っているときも、デッサンよりかは、0から物語を作ったり、ストーリーを作れるような課題が楽しかったので、じゃあミニチュアを作ってみよう、という感じです。

――ジオラマやミニチュアを作るYouTubeチャンネルって多いと思うんですけど、Hanabira工房さんが心がけていることはありますか?

Hanabira工房 妥協しない、ということでしょうか。同じ作業を繰り返していると、心身ともに疲れて、目に見えてクオリティが下がってくるんですが、そこで妥協したものは絶対に数字に表れてくるんですよね。自分でうまくいかないな、と思っても妥協せずに足掻いたものは、ちゃんと良い再生回数になることがわかったので、妥協しないことは心がけています。

――なるほど。作品に対する姿勢が、リアクションに反映されるってことなんですね。動画投稿に関して、ご家族はどのような反応だったのでしょうか。

Hanabira工房 最初はやはり隠していました。でも、ある程度結果を出せば認めてくれるとは心のどこかで思っていたので。後日、明かしたときに、母は「なんかやってるんだろうなとは思っていた」らしいです、ずっと部屋から出てこないし(笑)。あ、それで言うと自分がHanabira工房をやっているのは、母親の影響もあるかもしれないですね。昔からお店で買う、というよりハンドメイドで作ってしまう人だったので。

――この本を読ませていただいて、発想が独特だな、と思いました。特に「深夜3時に金魚すくいができる店」などは、こんなのどこで思いつくんだろうって。

Hanabira工房 自分で考えるのもありますが、初期から「もっとこうした方が良いんじゃないですか?」とか「次はこういうのを作って欲しい」などのコメントをいただいていて、それを取り入れて作ったものもあるので……。自分ひとりで、というよりかは、見てくださっている皆さんと一緒に作り上げた、という気持ちですね。

――たしかに、チャンネルを見させていただいて、提案コメントをしやすい雰囲気があって、とても風通しが良いなと思っていました

Hanabira工房 それは見ていただいている方々のおかげですね。

その動画だけなぜ伸びたのか? を分析する

――この本には、初心者でもできるジオラマ&ドールハウスの作り方がとても丁寧に記載されていて、「見る」という楽しみ以外にも「作る」という楽しみ方ができる本だな、と思っているのですが、これを見て作ってみようという方に向けてのアドバイスはありますか?

Hanabira工房 今まさに自分がそうなんですが、細かくて根気のいる作業なので、没頭しすぎて心身を壊してしまうのだけは気をつけていただきたいですね。自分は没頭するあまり、ヘルニアになってしまったので……。最初に妥協しない、ってお話をさせていただいたのですが、きちんと心身を整えて創作活動に励んでいただけたらうれしいですね(笑)。

――その流れでお聞きするんですが、Hanabira工房さんの1日のスケジュールって、どういう感じなんですか?

Hanabira工房 最初の頃は昼夜問わず、集中力が途切れるまで作業をしていたのですが、さすがにもたなくなってしまったので、今は午前11時ごろからはじめて、午後6時くらいまでにしています。会社務めをしている方と同じくらいの時間帯ですね。こういう会社勤めじゃないフリーの仕事だと、最初の頃は“休むこと”に罪悪感があったんですけど、あまりにも調子が出ないときに休みたくないけど休む日を作ったら、最終的な作業ペースがあまり変わらず「こんなものか」ってわかったので、心身は大切に、ただクオリティは妥協しないって決めています。

――使われている素材なども、基本的には100円均一などで買えるもので構成されていますよね。Hanabira工房さんも、こういうミニチュア作りは0からのスタートだったと思うのですが、さまざまな知識はどこから得たのでしょうか?

Hanabira工房 自分の場合、始めるにあたって参考にさせていただいたのは、ミニチュア作りで有名な方のチャンネルというより、知名度は劣るけど1本だけすごく再生回数が伸びている動画を参考にさせていただきました。基礎的な知識はもちろん、なんでその動画が伸びたのか、というところに皆さんが“見たい”の答えがあると思ったんです。

――なるほど、それはミニチュア作りだけじゃなく、全ての仕事に通ずる考え方かもしれないですね。ご自身が1番思い入れのある作品はどれですか?

Hanabira工房 全てに思い入れがあるのですが、100均のフォトフレームを使ったお花屋さんというのは、ドールハウスなどをテーマに作っていこうというきっかけになった作品ですし、初めて再生回数も伸びたので、特に思い入れがありますね。

Hanabira工房 この本に載っているので言うと、本棚のやつ。これは本を作るだけで1か月かかったので(笑)、作業の大変さも含めてすごく印象に残っています。

普通だったら目がいかないようなところを見てしまう

――本当に細やかなところまでこだわりが見えて、例えば出てくる紅茶が「午前の紅茶」になってたりとか(笑)。こういう小ネタといわれるようなところも真剣にやられているな、といつも感服しています。

Hanabira工房 自己満足ではあるんですけどね(笑)。ただ昔から映画とかアニメなどを見ていても、本筋よりも脇役だったりとか、普通に見ていたら目がいかないようなところを見てしまうクセがあって。そういうところが作品にも活きているのかも、とは思います。

――これまでお話を聞いていても、どなたにも影響を受けずに、見てくださる方が喜ぶことを試行錯誤しながらやってらっしゃるように感じるのですが、心に残っている言葉はありますか?

Hanabira工房 そうですね、友人に「すぐに0か100かで考えちゃうよね」って言われたのは残ってますね。

――それは良い意味で言われたんですか? それとも悪い意味?

Hanabira工房 たぶん、どちらもあると思います(笑)。自分としてもなるほどな、と思いつつ、例えば70点を目指したら、70点以下しか出せないなってのは思っていて。0か100かの100は、自分としてはそういう気持ちなんですけど、でも少し極端に考えすぎてないか、と気にするようにはなりましたね。

――このYouTubeチャンネルを続けていくのだけでも大変だと思うんですが、今後もっと挑戦したいことはありますか?

Hanabira工房 実は最近、電子やプログラミングを勉強したいと思っていて、いつかそういう分野でも面白いものが作っていければいいなと思っています。

――なるほど。すごくストイックなんだな、と思いましたし、そのうえで遊び心があるのが素晴らしいなと思いました。そもそも、このミニチュア作りも、家でもう使わなくなったドールハウスをリメイクするというのは、捨てる同然のものを発想を転換させて、新たな息吹を吹き込むってことで、それってすごいSDGsだなって。

Hanabira工房 ありがとうございます。動画コメントやSNSで「Hanabira工房さんを見て、私もミニチュア作りを始めました」って言われるとすごくうれしいですし、そういう輪が広がっていくのは本当に良いことだな、と思います。この本を読んで、またそういう輪が広がっていけば良いなと思います。

写真/市瀬 真以

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ちいさい世界づくり
著:Hanabira工房

Hanabira工房

ミニチュア作家。2016年頃、ものづくりとYouTubeに興味を持ち、趣味の延長として作品を動画投稿するようになった。2019年からドールハウスを本格的に作りはじめ、身近な材料を使用して作られる精巧な作品に大きな注目が集まる。100円ショップの材料を使ったジオラマや、独自の世界観や日常の一コマを再現したドールハウス作品が人気で、再生回数500万回超の作品も。現在、チャンネル登録者数は81万人を超える(2022年3月現在)。本書が初の著書となる。
●YouTube Hanabira工房
●Twitter @Hanabira7878
●Instagram @hanabira_kobo

※本記事は、WANI BOOKS NewsCrunch <>独特なジオラマを作るHanabira工房、創作の極意と素顔に迫る!(2022.3.28)を、加筆編集したものです。

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