ブラジル移民の父知って 松原安太郎氏生誕130年で顕彰

松原安太郎夫妻(和歌山県移民史より複写)

 和歌山県みなべ町出身で、戦後のブラジル移民再開に貢献した「移民の父」、松原安太郎氏(1892~1961)の魅力を伝えようと、「生誕130周年記念顕彰事業実行委員会」が巡回写真展や講演会を企画している。

 松原氏は、旧岩代村出身で、1918年にブラジルへ渡り、大農場を経営した。第2次世界大戦後は経済危機の日本を救うため、ブラジル大統領に協力を求め、日本人4千世帯、2万人の移民を計画。戦後約6万人の日本人が移民する礎を築いた。

 実行委員会は、県中南米交流協会(真砂睦代表)が中核団体となり、みなべ町の有志などが参加して昨年12月に発足した。真砂代表とみなべ観光協会の岩本恵子さんが共同で実行委員長を務めている。

 日本からブラジルへの移住が始まって110年以上、戦後の再開からでも約70年が経過。ブラジルで暮らす日系人は日本への深い愛着があるのに対し、日本では移民の歴史を知る人自体が少なくなっている。

 実行委は今春から中高生や地域住民を対象に、松原氏の功績やブラジル移民についての出前講座を開く。みなべ町のサークル「ピカソグループ」が制作した紙芝居「移民の父 松原安太郎物語」も小中学校で上演する。

 11月からは、ブラジルでの移民生活や紀伊田辺駅からブラジルに向かう人々を見送る人だかりなどを記録した写真を展示するパネル展を、みなべ町と田辺市で開催する。みなべ町では講演会、田辺市ではシンポジウムも開く。

 来年10月には「第2回県人会世界大会」があり、ブラジルやペルーなど南米、北米の県人会から約300人が来県し、田辺市にも滞在する予定。記念事業の盛り上がりが、ブラジル関係者との交流につながると期待している。

 実行委員長の真砂さんは「地域出身の人物が動かした歴史を知ってもらいたい。若者には腕一本で海外に渡り、道を切り開いた先人の教訓を学び、人生の糧にしてもらいたい」と言い、岩本さんは「地元にこんな偉大な先人がいたのは誇らしい。多くの人に知ってもらいたい。そして、来年の世界大会では高校生ら若者が新しい交流を築いてほしい」と話している。

 実行委は今回の企画に合わせ、写真や手紙など移民関係資料の情報を求めている。出前講座のリクエストも受け付けている。問い合わせは実行委事務局(0739.83.2495)へ。

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