園児半数がブラジル人、幼心に芽生えた異文化理解 福井県越前市の保育園、行政は通訳などケア

ブラジル人園児がほぼ半数を占める上太田保育園でお店屋さんごっこを楽しむ園児たち=2月、福井県越前市

 「ボンジーア、ボンジーア、みなさん、ボンジーア」。保育園に朝の歌が響く。1番の歌詞は「おはよう」、2番ではポルトガル語の「ボンジーア」。「うちの園では、これが普通です」。すっかり仲良しになった園児たちに保育士が笑顔を向けた。

 福井県の越前市上太田保育園は、0~5歳児計69人のうち、ほぼ半数の33人がブラジル人園児。園の遊びや行事には、ブラジルの文化も取り入れている。フルーツバスケットでは、日本語とポルトガル語の両方で果物の名前が飛び交う。運動会の開会宣言は園児自らがポルトガル語で行った。

 「お家ではブラジルの言葉。お友達と話すのは日本語。どっちも得意だよ」。ブラジル人の6歳の女児は友達同士の通訳をすることも。行事で一緒にダンスを披露した日本人の6歳の女児は「ブラジルの曲で言葉が分からなくても、(ブラジル人の友達に)教えてもらえるから大丈夫」と笑った。

  ■  ■  ■

 越前市の外国人市民は総人口の約6.3%に当たる5126人(1月1日現在)。市内企業への就業による子育て世代の転入が目立ち、外国籍園児は134人(2021年4月1日現在)と5年で2.7倍に増えた。市内の保育園・認定こども園全25園のうち、20園に外国籍園児が通っている。

 入園直後の園児は、日本語はもちろん、ポルトガル語も未熟で自ら意思表示することが難しい場合が少なくない。市は、通訳ができる外国籍児童保育補助7人を各園に配置。保育士や園児同士の言葉のやりとりを仲介するだけでなく、保育活動の趣旨を踏まえた上で遊びや学びに寄り添う。

 保護者向けの通訳対応では、ブラジル人市民の外国籍児童対応員4人が各園を巡回。通知文や園だよりの翻訳に当たるほか、保護者と保育カウンセラーの面会に同席して、相談の橋渡し役を務めている。

  ■  ■  ■

 保育現場に一層のケアが求められるようになった一方で、子どもたちにとっては外国語や異文化に身近に触れる機会が増えた。

 世界地図を見て日本とブラジルが遠く離れていることを知った上太田保育園の園児たち。発表会では、ブラジルのアニメを創作劇の題材に選んだ。「みんなちがってみんないい」「これからもずっと友達でいよう」。ラストシーンのセリフには、子どもたちに自然と芽生えた気持ちを表した。

 「言葉や文化が違っても一緒に遊べる。相手の考えを知ろうとするのが大事」。生き生きと触れ合う園児たちの姿に、同園保育士の田中千陽さん(27)は未来を思う。「これから20年、30年たって外国人の力を借りないといけない社会が来るかもしれない。これが当たり前なら日本は明るいんじゃないかな」

  ×  ×  ×

 越前市に暮らす外国人は過去5年で約1.6倍に増え、福井県内で最多となった。ブラジル人市民はその7割超の約3800人を占め、定住志向も高まっている。多文化共生を目指す社会の中で、学び舎の子どもたちを取り巻く保育、教育の現状を追った。

© 株式会社福井新聞社