【高校野球】近江・山田に「私も野球人として感動」 浦和学院監督、延長170球の熱投に脱帽

準決勝の第1試合では浦和学院が2-5で近江にサヨナラ負け

聖地初采配だった森大監督「甲子園は本当に素晴らしい」

相手エースの気迫に負けた。第94回選抜高校野球大会は30日、阪神甲子園球場で準決勝が行われ、第1試合では浦和学院(埼玉)が近江(滋賀)に延長11回の末、2-5でサヨナラ負けを喫した。森大(もり・だい)監督は、チームを30年間率いた父の森士(もり・おさむ)前監督が昨夏限りで退任したあとを受けて就任。今大会で進撃を続けてきたが、父が指揮を執り頂点に立った2013年大会以来となる決勝進出に、あと一歩届かなかった。

「準決勝では宮城を使わない。他の投手の継投で勝つぞ。先発は浅田で行く」。森監督は九州国際大付(福岡)との準々決勝を制した28日夜のミーティングで、ナインにそう伝えていた。

準々決勝まで全3試合に先発しチームを牽引してきたエースの宮城誇南(こなん=3年)について「春先に他の投手より少し調整が遅れていた。(大会開幕前の時点で)4連投はさせないと決めていました」と明かす。

エース抜きで臨んだ一戦で、4回に4連打で2点を先制。先発した背番号「10」の浅田康成(3年)も4回まで4安打1失点に抑え、試合をリードした。しかし5回から登板した2番手の左腕・芳野大輝(3年)が2死から連続四球を与え、続く相手のエース兼4番・山田陽翔(3年)の左足へ死球をぶつけたところで、ショートを守っていた金田優太(3年)に替わった。

主将・八谷晟歩「“新生・浦和学院”にふさわしい試合は見せられたと思います」

誤算だったのは、相手のエース・山田が死球を受けた後、球威が落ちるどころか、むしろギアを上げたことだ。浦和学院は森大監督の下で昨秋以降、「緊迫した場面での1本の長打」をテーマに、木製バットを使用しながら打力強化に取り組み、今大会ではチームで4本塁打を放っていた。ところが、この日は闘志むき出しの相手のエースをとらえ切れない。金田も好投したが、7回にスクイズで同点に追いつかれ、延長11回に大橋大翔(3年)にサヨナラ3ランを浴びたのだった。

森監督は山田を「最後までボールの質が落ちなかった。昨夏の甲子園での経験もあり、世代トップクラスの投手だと思います。うちの選手もよく食らいついたが、彼の気迫には私も野球人として感動しました」と称賛した。さらに「私が監督になって半年、選手たちと取り組んできたことの成果は出たと思います」とうなずき、「ここで勝ち切るのに必要なのは山田君の気持ち、気迫。最後はそこなんだと、私自身改めて感じましたし、そう感じさせてくれた甲子園は本当に素晴らしいと思います」と感慨深げに話した。

主将の八谷晟歩(3年)も「森大監督になって1年目、“新生・浦和学院”にふさわしい試合は見せられたと思います」と満足感いっぱい。「この冬に打撃を強化してきましたが、大事なところで1本出せるように、さらに強化していきたいです」と夏へ目を向けた。31歳の若き指揮官の下、改めて頂点を目指す。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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