新庄ハムがハマった“落とし穴” 先発加藤が「良すぎて」逸した継投のタイミング

日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】

加藤は5回まで1安打も…6回2死から7連打で5失点、25年ぶり開幕5連敗

■西武 5ー3 日本ハム(30日・札幌ドーム)

日本ハムは30日、札幌ドームで行われた西武戦を3-5で落とし、開幕5連敗を喫した。6連敗した1997年以来、25年ぶりの屈辱だ。1点をリードした6回、先発の加藤貴之投手は2死を奪ったところからなんと7連打を浴び5失点で試合をひっくり返された。あと1死でチェンジという状況、新庄剛志監督を始めとしたベンチは、試合序盤の“良すぎた”加藤の姿に惑わされ、継投の機会を失ってしまったようだ。

まるで悪夢だった。6回、加藤は2死を奪ったところからいきなり崩れた。鈴木の中前打に始まり、オグレディも右前打で一、三塁。ここから森、山川、中村のクリーンアップに3連続適時打を許し、あっけなく逆転された。さらに外崎にも左前打でつながれ、栗山には粘られた末に中前へ2点適時打。ここでようやく、新庄監督は古川侑への交代を告げた。

指揮官は試合後、広報を通じて「あした、あした」とコメントを発表。代わって武田勝投手コーチが、この間のベンチの“本音”を代弁する。「そこまでは完ぺきに抑えていましたからね……。3点までは本人の力で頑張ってほしかった。良すぎて(交代の)難しさはありました」。序盤の投球が良すぎて、欲も出た。継投期の見極めが難しくなっていたのだ。

加藤は今季2試合目の登板。初登板は25日の開幕戦で、2番手のリリーフだった。中4日で起用法が変わった影響を武田コーチは「体力的にもメンタルにも、何の影響もなかったと思う」。実際に立ち上がりから、西武打線を手玉に取った。5回1死まで、13人の打者を1人の走者も出さずに打ち取った。中村に初安打となる二塁打を許してからも、外崎、栗山と後続を冷静に打ち取っていた。6回2死からの姿とは、まるで正反対だった。

日本ハム・加藤貴之【写真:荒川祐史】

テンポとキレで抑える投手が、打者のリズムに巻き込まれると…

突然崩れた理由を武田コーチは「完ぺきだったものが1本打たれたことによって、ガタガタと崩れてしまった」と分析している。自身が歩んできた道だからだ。加藤とは同じ左腕。テンポとボールのキレで勝負する姿は「昔の僕に似ているよね」と言うほどだ。だから、焦って自分のリズムで投げられなくなった時に何が起こるのかも、手に取るようにわかる。球威がない分、ひとたび打者のリズムで捉えられるともう、抑えが効かないのだ。

指揮官はソフトバンクとの開幕カードを「遊びます」と宣言し、リリーフ起用を続けてきた北山を開幕投手に指名、3戦でのべ17人の投手をマウンドに送り出した。一方でここからが本番としていたこの西武戦では、昨季12勝の上沢に29日の初戦を任せ、8回126球を投げさせた。そして昨季6勝ながら、規定投球回数に達した加藤もまた、できれば試合を任せ、イニングを重ねてほしい投手だった。

武田コーチは「2アウトからの7連打。本人もショックでしょうけど、そこを乗り越えて欲しい。同じことを2度繰り返してはいけない」と加藤を思いやり、対話を通じて再起へのレールを敷くつもりでいる。31日の試合では、昨季終盤に好投を見せた立野が先発。さらに今後、開幕戦でリリーフした伊藤も先発ローテーション入りする見込みだ。戦力不足が否めない日本ハムで、数少ない“長所”が豊富な先発候補。加藤にも、大炎上を糧にした復活が待たれる。(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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