いつもと違う駅で降りてみて! 週末のプチお出掛け 〜ホーボーケン編〜

ポカポカ陽気に誘われて、いつもと違う駅で降りれば意外な発見もあるはず。今号では、往復5.50ドルでちょっとした旅気分を味わえる街、ニュージャージー州ホーボーケンを探索した。(取材・文/加藤麻美)


半日あれば十分!

ホーボーケンお散歩コース

赤い線の範囲内がホーボーケン

マンハッタン区6番街9丁目、またはクリストファーストリート/シェリダンスクエアからパストレインで10分。隣町ジャージーシティーと並んで「ニューヨーク市6番目の区」と呼ばれるホーボーケンは、総面積わずか1275平方マイルの小さな町だ。

ベッドタウンとしても人気で、1990年代後半から大型コンドミニアムが次々と完成。リプトン紅茶やマックスウェルコーヒーの工場跡は大規模な集合住宅に変わり、遊歩道が整備されるなどハドソン川沿いの景色はこの30年で大きく変わった。

アイルランドやイタリア系移民が多く居住したことからヨーロッパ風建築が立ち並び、現在も白人が人口の8割以上を占めている。川を隔てて目と鼻の先にもかかわらず、ニューヨーク市とは全く違った雰囲気を漂わせるホーボーケンを、いざ探索!


お散歩スタート!

ターミナル駅と時計台

パストレインのホーボーケン駅に着いたら、改札を出て右側の階段を上がる。目の前のハドソンプレースを右に歩くと、緑鮮やかなパティーナ(緑青)で彩られたボザール様式の堂々たる外観の建物が見える。これが鉄道、フェリー、パストレインが乗り入れるホーボーケンターミナルで、1907年にデラウェア・ラッカワナ&ウェスタン鉄道が建造した。建築家ケネス・M・マーチン設計の駅舎は、ニュージャージー州と米国の歴史的建造物に登録されている。待合室の天井にはめ込まれたタイル張りのステンドグラスはルイス・コンフォート・ティファニーが制作。ハドソン川は当時、霧のために遅れることが多かったので、フェリーの到着を待つ多数の人を収容できる大劇場のような造りになったそうだ。

駅舎と一緒に建てられた225フィート(約69メートル)の時計台は、構造上の問題と経年劣化のため50年代初頭に解体され、ターミナル駅開業100周年記念となる2007年にオリジナル同様に再現。夜間はライトアップされる。


ラ・イスラ

フードネットワークの「ダイナーズ・ドライブイン・ダイブ」にも登場したキューバ料理店「ラ・イスラ」はグルメガイドの常連。ここで探索前の腹ごしらえをする。日替わりランチは「レチョンアサド」(キューバ風ローストポーク、17ドル)がおすすめ。

La Isla Restaurant
104 Washington St.
Hoboken, NJ 07030
TEL: 201-659-8197
laislarestaurant.com


コートストリート

イタリアの小さな町に迷いこんだよう

お腹がいっぱいになったら1丁目をハドソン川方向に歩き、川沿いに北へ延びるウォーターフロントウォークウェーへ。途中に石畳の道コートストリートがあるので要チェック。ホーボーケン歴史博物館によると、この道ができたのは1804年。マーロン・ブランド主演の1954年の映画「On The Waterfront」のロケ地としても使われた。

ウォーターフロント
ウォークウェー

ウォーターフロントウォークウェーに出たら、桟橋のように突き出た緑地ピアAパークと浮島のようなピアCパークをマンハッタンのスカイラインを横目にのんびり歩こう。ピアCパークには子供向けの滑り台もあり、子供たちの歓声が聞こえる。突端の丸ベンチではスナックを持ち寄ってピクニックを楽しむグループの姿も。頬をなでる川風が気持ちいい。


シナトラパーク 〜 スティーブンス工科大学キャンパス

ピアCパークの少し先にあるのがシナトラパーク。フランク・シナトラ(1915〜88)の銅像が目印だ。ホーボーケンは米国を代表する大歌手、フランク・シナトラ生誕の地。住民のシナトラ愛は深く、大歌手のポートレートやイラストが街中の至るところで見られる。

また、フランク・シナトラ・ドライブ沿いに見える1856年建造の城の塔に通じる階段の上には、スティーブンス工科大学のキャンパスが広がっている。1870年創立の米国最古の工科大学の1つで、留学生が最も多い米国大学番付では第3位。


ハドソンストリート 〜 ホーボーケン歴史博物館

ホーボーケン歴史博物館のシナトララウンジではシニアがまったりシナトラ鑑賞

スティーブンス工科大学のキャンパスを抜けて最初にぶつかる通りがハドソンストリート。19世紀末から20世紀初頭にかけて建てられたフェデラル様式やブラウンストーンの家が立ち並ぶ風情ある一角を北上すると、1846年6月19日に米国で初めて野球の公式試合が行われたとされるエリジアンパークが見える。さらに北上すると地域の歴史を紹介し、地域在住のアーティストの作品を展示するホーボーケン歴史博物館に到着する(入場料5ドル)。

同博物館のウェブサイトでは17世紀初頭から始まる町の歴史を、知られざる逸話と共に紹介。史跡を巡るウォーキングツアー用の地図を無料でダウンロードできるので、予習も兼ねてぜひ活用しよう(5面参照)。

Hoboken Historical Museum
1301 Hudson St.
Hoboken, NJ 07030
TEL: 201-656-2240
hobokenmuseum.org


シェパード & ナックルヘッド

そろそろ喉も乾いてきた。トイレにも行っておきたい。ホーボーケン歴史博物館から5ブロック西に行ったウィローアベニューにある「シェパード&ナックルヘッド」で一休みすることにしよう。地元ニュースサイト、ニュージャージー・ドット・コムの「クラフトビールバー番付」で第1位に選ばれた人気店で、全米・世界各地から集めたクラフトビールが49種類もそろっている(1杯8ドル)。

The Shepherd & The Knucklehead
1313 Willow Ave., Hoboken, NJ 07030
TEL: 201-714-4222/theshepnj.com


ウィローアベニュー 〜 ワシントンストリート

ワシントンストリートには米国初の野球試合を記念する銅板も

おいしいビールで喉を潤したら、13丁目沿いを4ブロック東に歩いて町一番の目抜き通り、ワシントンストリートへ出よう。交差点を渡らずにそのまま南下、12丁目と11丁目の間にあるイタリアンデリ「M & P ビアンカマーノ」を経由して6丁目で右折、ウィローアベニューの2ブロック東、グランドストリートにある「ドムズ・ベーカリー・グランド」と、ワシントンストリートの「オールド・ジャーマン・ベーカリー」を目指す。


M & P ビアンカマーノ

1981年創業。イタリア・サレルノ出身のビアンカマーノ夫妻が経営するデリ&レストラン。毎朝5時から起きて作るというモッツァレラは、毎年5月に開催されるムッツフェスティバルの人気投票で第1位に選出。ヒーローサンドイッチやパスタなどのデリメニューはホーボーケンの定番中の定番の味。

自家製モッツァレラ(1パウンド12ドル)

M & P Biancamano
1116 Washington St., Hoboken, NJ 07030
TEL: 201-795-0274/mpbiancamano.netwaiter.com

ドムズ・ベーカリー・グランド

イタリアはナポリ近郊の街、ガゼルタで生まれ、10代の頃にホーボーケンに移民したというドム・キャステロトさんが1979年に創業。自家製トマトソースを使ったフォカッチャやナポリの伝統菓子スフォリアテッラ(2.75ドル)が有名。シナトラもお気に入りで、わざわざ西海岸までお取り寄せしたとのこと。ハリウッドのセレブもとりこにした味だ。

Dom’s Bakery Grand
506 Grand St., Hoboken, NJ 07030
TEL: 201-653-1948
facebook.com/domsbakerygrand


オールド・ジャーマン・ベーカリー

ビエンシュティッヒ(右)、チェリー・チョコレート・クリスプ

ドイツ・ケルン出身のアルメニア系ドイツ人のヘイタッド・ウラヒヤンさんが2011年に創業。材料は全てドイツから直輸入し、本場のレシピを忠実に再現していると自慢するウラヒヤンさんのイチオシは、ビエンシュティッヒ(ビーハイブ=蜂蜜=のケーキ、6.90ドル)。甘めの生地にキャラメルアーモンドをトッピングして焼き上げ、バニラカスタードとクリームをサンド。甘さ控えめ、蜂蜜がほのかに香るケーキは食べ終わるのが悲しくなるほど。

Old German Bakery
332 Washington St.
Hoboken, NJ 07030
TEL: 201-683-8644
oldgermanbakery.com


ワシントンストリート 〜 ダウンタウンホーボーケン

どこで飲んでもハズレがない

新型コロナウイルスのパンデミック前は120軒以上のバーが軒を連ね、人口あたりのバーの数が東海岸で最も多かったのがホーボーケン。知る人ぞ知る「のんべえ天国」なのだ。パストレインの駅のそばには手頃なバーが何軒もあるので、プチお出掛けの締めくくりに、一杯ひっかけて帰ることにしよう。


ホーボーケン歴史博物館

おすすめのセルフツアー

The Hidden Face of Hoboken

上を見上げて歩くときは車と自転車、通行人に注意!

獅子の胴体にワシの頭と翼をもつ幻獣グリフィンや白頭ワシ、ライオンの頭、海賊、オオカミ男、鳥人、女神など、ホーボーケンにはミステリアスな生き物が建物の壁や屋根に生息中。ハドソンストリートからモンローストリートにある550を超えるマスカロン(建物のファサードを飾る伝説上の生き物や人間の顔をかたどった装飾)やガーゴイルをマップを見ながら探すツアー。マップはホーボーケン歴史博物館で配布している。


Hoboken Historic Walking Tour

マップはホーボーケン探索の記念にもなる

ビクトリア様式のブラウンストーンや南北戦争前に建てられた長屋、ゴシック風建築の教会、れんが造りの工場などをホーボーケン歴史博物館を出発地点に歩いて巡るツアー。マップ(同歴史博物館で配布。アプリもあり)ではワシントンストリート周辺を中心に、ウォーターフロントやウィローアベニュー、パストレイン駅付近に点在する33の歴史的建造物や史跡を写真と共に紹介。所要時間はゆっくり歩いて2〜3時間ほど。


ホーボーケングッズを買うなら
ワシントン・ジェネラル・ストア

ワシントンストリートにあるギフトショップ。ホーボーケンをテーマにしたマグカップやキーホールダー、Tシャツ、トートバックなどを販売。

Washington General Store
509 Washington St., Hoboken, NJ 07030
washingtongeneralstore.com


ビンテージグッズを買うなら
リバイバル・ビンテージ・ブティック

のみの市ブルックリンフリーでのベンダーから発展して2008年にオープン。カジュアルからフォーマル、アクセサリー、LP盤までバラエティー豊かなラインアップ。

Revival Vintage Boutique
86 Park Ave., Hoboken, NJ 07030
revivalvintageboutique.com


春はイベントもいっぱい!

  • 4月9日(土)午後1〜5時
    3rd Annual Hoboken Mac & Cheese Festival
    マッケンチーズの試食イベント。人気投票でナンバーワンを決定。
    場所: 参加の各店
  • 5月1日(日)午前11時〜午後6時
    Hoboken Spring Arts & Music Festival 2022
    300人以上のアーティスト、クラフト作家、フードベンダー、地元企業などが参加。3つのステージでライブパフォーマンスあり。
    場所: Washington St., (bet. Observer Highway & 7th St.)
  • 5月15日(日)午後1〜5時
    Hoboken Mutzfest
    モッツァレラチーズの試食イベント。人気投票でナンバーワンを決定。
    場所: 参加の各店
  • 6月7日(火)午後6〜9時
    A Taste of Hoboken
    20年以上続く地域のチャリティーイベント。人気レストランのテイスティング、ワインやスピリッツの試飲、ライブ演奏と盛りだくさん。今年からサイレントオークションも始まる予定。
    場所: Maxwell Place Park(11th Sinatra Dr., N.)

ぜったい行きたい!
Hoboken Italian Festival

hobokenitalianfestival

9月の木曜から日曜の4日間、ニュージャージー州最大級のイタリアンフェスティバルを開催。土曜には聖フランシス教会(ジェファーソンストリート308番地)から重さ800ポンドの「マドンナ・ディ・マルティリ(殉教の聖母)」像がみこしに担がれ、ホーボーケンの街中を練り歩き、シナトラパークでは花火が打ち上げられる。沿道にはフードベンダーが出店。特設ステージではコンサートも行う(今年の日時は未発表)。

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