首都大学リーグの日体大・矢澤宏太は最速150キロ左腕、4番打者も務める
身長173センチ、体重73キロ。決して体は大きくないが、エンゼルス大谷翔平投手に続く二刀流選手として期待されているのが、今秋のドラフト1位候補で、2日から最終学年のリーグ戦を戦う矢澤宏太投手(日体大4年)だ。少年野球ではチームで最も背が低かったという矢澤がプロで活躍する夢を追い続けられた理由の1つに挙げたのが、当時のコーチに授けられた言葉「勘違いの才能」を持ち続けて努力したことだった。
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二刀流候補として注目されている矢澤は、大谷のように体格に恵まれた選手ではない。野球選手としては小柄な方だ。それでも、投手として左腕から最速150キロの直球を投げ込み、野手として長打力を武器に名門・日体大の4番に座る。
矢澤は今秋ドラフトで「最大の注目選手」「ドラフト1位候補」と言われている。だが、大学入学時から突出した存在だったわけではない。実際、神奈川・藤嶺藤沢高3年の秋にプロ志望届を提出したものの、指名されなかった。周囲から「プロ野球選手は無理」との声も聞こえてくる中、日体大入学当初から「ドラフト1位でプロ入りする」と宣言してきた。
「体も小さくて細かった。『ドラフト1位でプロに行きます』と言い続けていても、自信は全然ありませんでした」
強気な言葉と胸中は必ずしも一致していなかった。体は大きくない。投手では制球に苦しみ、練習試合では打者の背中を通る“大暴投”も少なくなかったという。プロ野球選手への夢を諦めてもおかしくない状況で、信じ続けたのが「勘違いの才能」という言葉だ。
「勘違いでもいいから『プロに行ける』と思って練習していた」
少年野球をしていた頃、矢澤はチームで一番背が低かった。練習を続ける原動力となったのがコーチからの教え。今も大切に胸に刻んでいる。
「『勘違いの才能を持ちなさい』と言われました。周りから何と言われようと、自分だけは勘違いでもいいから『プロに行ける』と思って練習していました。いい意味で勘違いして野球をやっていました」
当時はコーチの言葉に半信半疑だった。それでも「チームで誰よりも速い球を投げる」「誰よりも遠くまで打球を飛ばす」と目標を掲げて練習を続けた。高校でも大学でも「もう少し頑張ればプロに行けるかもしれない」と自分に言い聞かせてきた結果、ドラフト1位候補にまでなった。本格的な二刀流に挑戦した昨季は、首都大学秋季リーグ戦で7試合に登板して3度の完封。投手でベストナインに輝き、打者としても打率.300をマークした。
2022年春季リーグ戦は4月2日に開幕する。「大学ナンバーワン左腕」の呼び声にも矢澤は現状に満足していない。「もっと直球の質を高めていきたい。狙って空振りやファウルを取れる直球を追い求めています」。信じ続けた「勘違いの才能」は本物になって開花。大学ラストイヤーにどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。(川村虎大 / Kodai Kawamura)
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