<金口木舌>成人年齢と出演強要

 「駅でスカウトされた。知らないうちにいろいろなことが決められ、12本契約してアダルトビデオ(AV)に出演した」「同級生に知られた。消えてしまいたい」。AV出演強要の被害者を支援するNPO法人「ぱっぷす」のウェブサイトに体験談が載っている

▼民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられた。同団体は契約を後から取り消せる「未成年者取り消し権」をAV出演に関しては18~19歳に認めるよう各政党に立法を求めた

▼意に沿わない出演を立証するのは20歳以上でも困難だという。取り消し権の対象外になれば「泣き寝入りを余儀なくされる」と指摘する

▼警察庁によると2020年の人身取引被害者は37人。うち20歳未満は21人で大半を女性が占める。17年の被害者にはAV出演強要の被害に遭った18歳の女性15人も含まれていた

▼酒やたばこ、競馬などの公営ギャンブルは依存症の懸念などから「20歳以上」が維持された。性的搾取の被害を防ぐ仕組みも必要だ。制度改正のあおりで弱者が虐げられることがあってはならない。

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