4月5日スタート、度会博文氏がヘッドコーチを務める
ヤクルトが「ベースボールアカデミー」を開校する。4月5日の初日に向け、準備は佳境。次世代の山田哲人、村上宗隆の育成へ――。ヘッドコーチを務める度会博文氏が「楽しく」をテーマに野球の底辺拡大を目指す思いを語った。
球団の長年の構想が、ついに実現する。10年ほど前からプランがありながら、東京という土地柄、練習場所の確保が困難だった。しかしこのほど、中央区スクール、渋谷区スクール、港区スクールの3校で使用できるグラウンドが確保でき、スタートを切ることになった。
同じ東京に本拠地を持つ巨人からは「野球をやる子どもが減ってしまっている。東京の野球を一緒に盛り上げましょう。ヤクルトさんもやれば子どもたちは喜ぶんじゃないですか」との言葉をもらっていた。2006年にアカデミーを創設していた巨人や、西武、ロッテなど関東のチームの話も聞きながら“立ち上げ”は進んでいった。
コーチは5人。度会氏と、2005年高校生ドラフト1巡目で2018年まで在籍した村中恭兵氏が主に技術指導を担う。さらにアマチュアや子どもたちへの指導経験のある3人が加わる。コースは幼児、小学1、2年生、同3、4年生、同5、6年生の4つ。すでにほとんどのコースは定員に達する人気だという。
「野球をやっている子もやっていない子も、どなたでも来てくださいと言っています。色んなレベルの子がいると思いますが、そこに応じてやっていきたいと思います」と度会コーチ。一度入会すれば、翌年以降も継続可能のため、練習メニューは学年が上がるごとにステップアップできるように作成する。小学5、6年生になれば24~26人の生徒の中でレベルの差も生まれることが予想されるため「キャッチボールなどはレベルに合った子同士でやれるように、僕らコーチ陣が見定めます。安全第一、事故なくやらせていってあげたい」と語った。
「体験イベント」は約1500人が集まり大盛況となった
2月23日には神宮球場で「アカデミー体験イベント」を実施。付き添いの親なども含めて約1500人が集まる盛況ぶりだった。度会氏がバットを持って打撃を、村中氏が投球を実践。「飛ばすように、打てるようになれば楽しいと思う」という言葉通り、“プロの技”を見た子どもたちは歓声を上げ目を輝かせた。
度会氏が掲げるのは「野球を楽しんで好きになってもらう」こと。だから指導方針も「楽しみながら野球を教えていってあげたい」という。「楽しくなければ続かない。つまらないと思ったら辞めてしまうと思います。だから“中学に行ってもやりたいな”と思ってもらえたら」と願った。
度会氏は球団広報となった2013年頃、都内の小学校を訪問して正しいボールの投げ方を伝授する「投げ方教室」を始めた。これは社会貢献活動の一環として、現在も行われている。2018年からは4年連続でスワローズジュニアの監督を務め、2019、20年に連覇を達成した。「子どもたちが一生懸命やっている姿を見るのは好きだし、可愛いですよね」と目を細める度会氏は、すっかりアカデミー“ヘッドコーチ”の姿だ。
子どもたちが野球を好きになり、中学以降も続けた先には、ヤクルトアカデミー出身の燕戦士誕生の夢も描く。次世代の山田哲人、村上宗隆育成へ「最終的にはプロ野球選手、山田や村上のような選手を目指してもらいたい」と見据えた。
昨年、チームは2001年以来20年ぶりの日本一に輝き、これ以上ないタイミングでの船出となる。未来の“スター”育成へ、度会氏が「楽しく」新プロジェクトを牽引していく。(町田利衣 / Rie Machida)
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