“女子のセンバツ”で響いた美声アナウンス 現役選手の女子大生が届けたかった思い

平成国際大女子硬式野球部・井上愛海さん【写真:編集部】

3日の決勝は史上初めて東京ドームで開催となる

第23回全国高校女子硬式野球選抜大会の準決勝2試合が3月31日、埼玉・加須市の加須きずなスタジアムで行われ、福井工大福井と神戸弘陵(兵庫)がそれぞれ決勝進出を決めた。決勝は4月3日、史上初めて東京ドームで開催される。加須ラウンドを支えたのが平成国際大女子硬式野球部の選手たち。“後輩”たちのために試合進行のアナウンスをするウグイス嬢となったのだ。

全国屈指の女子野球の強豪で、今季、プロ野球、巨人の女子チームに入団した金満梨々那捕手らを輩出した平成国際大女子硬式野球部は、加須市に学校があり、活動している。普段は選手としてグラウンドに立っているが、大会運営として、大会前の準備やグラウンド整備、公式記録、パンフレットの販売などを行っていた。その中で大きな役割を占めていたのが、場内アナウンスだった。

ハキハキとした声でアナウンスをしていたのが、3年生の井上愛海さん。「今日は60点ぐらいですね。交代が大変で間違えちゃいました」と恥ずかしそうに笑顔を見せていたが、表情は充実していた。

井上さんのポジションは捕手と一塁。小学2年生で野球を始め、「ソフトボールではなく野球がしたい」と中学、高校と駒沢学園女子で野球を続けてきた。ボールを捕ってからの送球の速さが持ち味の井上さん。大学卒業後は母校で女子野球の指導をすることが目標だ。

「女子野球は、とにかく何をするにも一生懸命なんです。試合に出られなくても、ベンチから声を出して一体感がありますし、いつも笑顔です。大会運営をしていると、後輩たちの試合が見られるので嬉しいですね」。

平成国際大女子硬式野球部・井上愛海さん【写真:編集部】

選手はアナウンスに違和感を覚えると「打席で気が散ってしまう」

今年で2年目のアナウンス担当となった井上さんだったが、前日には発声練習と早口言葉の練習をしてから試合に臨んだ。選手としてプレーしているときに、聞こえてくる名前が間違っていたり、イントネーションが違うと、打席で気が散ってしまう気持ちがわかるからこそ、仲間と何度も名前を確認してアナウンスを行った。

「風が強い日は、聞き取りやすいよう意識してアナウンスをしました」。後輩たちが気持ちよくプレーができるよう、選手としての気持ちを大切にアナウンスしている。

井上さんは、加須きずなスタジアムで行われる準決勝までアナウンスを担当した。

「東京ドームで野球ができるという大きな目標に向かって戦える選手が正直、羨ましいですが、女子が野球をする環境がどんどん整ってきて本当に嬉しいです。母校は負けてしまったのでアナウンスができなかったですけど、選手が全力でプレーできるよう、私たちも最後まで頑張ります。決勝戦は有観客なので、選手が笑顔でプレーしている女子野球を、ぜひ多くの方に見てもらいたいです」。

彼女たちの献身が、未来の女子選手たちの力になる。(小倉星羅 / Seira Ogura)

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