阪神・藤浪は「今年は大丈夫じゃないかな」 元投手コーチが感じる“復調の気配”

1日の巨人戦では4回6失点でマウンドを降りた阪神・藤浪晋太郎【写真:荒川祐史】

2015年まで阪神の投手コーチを務めた山口高志氏「去年までは横振りが気になっていた」

阪神が開幕ダッシュに失敗、セ・リーグワーストの9連敗を喫していまだ白星がない。先発ローテーションの一員として大きな期待がかかる開幕投手の藤浪晋太郎は、ここまで2試合に登板し、1日の巨人戦では自己ワーストの3被弾。背水の陣で今季に挑む右腕に、元阪神投手コーチで関大硬式野球部アドバイザリースタッフの山口高志氏は「キャンプ中に見せていた縦振り、力強い真っすぐとスライダー」を復調のポイントにあげる。

阪急時代には「プロ野球史上最も速い球を投げた投手」とも言われ、通算50勝をマークした山口氏。現役引退後は阪急、オリックス、そして2003年~2004年、2009年~2015年までは阪神の1軍投手コーチを務めた。藤浪は入団当初から指導し、13年~15年の3年連続2桁勝利に関わった。先発ローテを守り、エースとして活躍した“一番いい状態”を知るだけに、ここ数年の姿を気にかけていた。

160キロを計測しながらも、突如として制球難に陥り甘い球を痛打される姿に「去年までは(投球フォームで腕の)横振りが気になっていた」と指摘。だが、2022年シーズンに向け「キャンプの映像を見た時は縦振りに戻っていた。今年は大丈夫じゃないかなと見てました」と復調の気配を感じとっている。

「リリーフから先発は調整の期間が必要。時間をかけないと厳しい」

藤浪は今キャンプ、オープン戦で結果を残し、新型コロナウイルスに感染した青柳の代役開幕投手としてシーズンをスタート。3月25日のヤクルト戦では7回3失点、7奪三振の力投も、後を受けたリリーフ陣が逆転を許し白星を逃した。そして1日の巨人戦では4回7安打(3被弾)、6失点でKOされ今季初黒星を喫した。

2013年から2019年は1軍の登板は全て先発。だが、2020年からは先発で結果が出なければリリーフに回るなどシーズン中の配置転換が続いている。昨季までの守護神・スアレスが抜けた穴は大きく、今季は中継ぎ陣が踏ん張り切れず連敗を喫する光景が目立っている。

この状況が続けば、再び藤浪の“中継ぎ待望論”が再燃する可能性も十分にある。だが、山口氏は「先発からリリーフはある程度はいける。だけど、リリーフから先発は調整の期間が必要。時間をかけないと厳しい」と指摘する。

代役開幕投手も「ある程度の自信、確信を持って使えると判断しているはず」

藤浪の全盛期を知る山口氏は「力のある真っすぐとスライダー。そして縦振りを続けていけば先発として十分にいける」と語る。さらに他の投手にはない「体の強さ、タフさ」も評価し「その点では一番可能性を持っている」と“先発・藤浪”のメリットを口にする。

ここまでの2試合を見て判断するのは時期尚早だろう。代役での開幕投手だが、シーズン前に結果を残し、先発ローテを勝ち取った。その点を見ても「当初から先発ローテに入っていたわけだから。(チームとしても)ある程度の自信、確信を持って使えると判断しているはず」と、もう少し長い目で見る必要があると感じている。

「自分の好きなように取り組んで、人のことは気にせずやればいい」。シーズンはまだ始まったばかり。山口氏は教え子の活躍を心から祈っている。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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