【寄稿】新規勧誘の高すぎる壁(WEB版)/大﨑一万発

ド派手な出玉性能を掲げたP機がホールを賑わせ、6号機への移行も憂慮したよりスムーズに進んでいるようです。コロナ禍が未だ収束せぬ中ですが、一息ついた、僅かながらの光も差してきたように思える今日この頃、さあここから一気に回復基調へ! ……とはならないのが今の業界事情の厳しさです。一部機種が人気を博してはいても、既存のお客様がシマ移動・ホール移動しただけに見受けられ、プレイヤー総数増には直結していないのが現実。兎にも角にも漸減止まらぬ参加人口を増加に転じさせなければ、V字回復も画餅に過ぎません。

ノンユーザーにも目を留めてもらうべく大型版権の獲得やTVCMはじめ多様な販促活動が行われているのは周知ですが、その類の空中戦は大手企業様の頑張りに期待するしかない。我々末端がユーザー増に貢献できる活動はと言えば、「草の根運動」になるでしょうか。1人1増、地道にコツコツ……、とはいえ30万人とも40万人とも言われる業界関係者が全力で取り組めばバカにならぬ力となるはずで、嘆くよりまず行動すべし! が本筋ではありますよね。

しかし。新規勧誘は、言うは易し行うは難しの極みでもあります。偉そうに申し上げている当の僕ですら、家人をパチンコに誘えないままなのです。いや、子どもができるまでは打つこともありました。もともとやったことがない女性でしたが、1人で甘海を楽しめるぐらいには教え込みました。それが子育て期間を経て、すっかり打たなくなってしまったんです。専業主婦ですから時間がないわけじゃない。経験もあるし嫌いなわけでもない。お金がないわけでもありません。なぜやらないか、それは「パチンコしなくても毎日楽しいから」なんだそうです。育児、掃除や料理、植木やペットの世話、スーパーへ買い出し、そんな家庭内の一切を「娯楽」として楽しくやっている。今のままでも十分充実しているってことですから、差し置いてパチンコ打とうなんて言えるはずもありません。パチンコには毒があります。だから怖いし、だからこそ面白い。その毒を毒と知って飲み込める、割り切った上で無駄を楽しめる人に向けた遊びです。しかしそんな「できた大人」は、僕の家内のように自分なりの楽しいをしっかり持っているものですから、そこにパチンコが入り込める隙があるかと言うと、なかなかに難しいわけです。日々を健全に過ごしている人に、毒も食らってみろなどと言ったら、頭オカシイ扱いです。

逆に家内が毎日に不満で退屈してるのならば、以前のように行ってみたらと水を向けることもできるのですが、そんな不安定な状態で罷り間違ってパチンコの毒に当てられてしまったら……。業界的にはプラスかもしれませんけど(笑)、夫の立場としては誘えるわけもないんですよね。

確かにパチンコは、出れば楽しいのは間違いない。刺激的な時間を過ごせる。お金も儲かるかもしれない。でも、基本的には負けますよ、依存すると難儀ですよ、ガラの悪いお客さんも多いし、理不尽な思いをすることも珍しくないですよ……。ノンユーザーに対し、諸々の現実を語らずいい面ばかり強調して「打ってみようよ」と勧誘するなんてあまりに不誠実。しかしちゃんと啓蒙しようとするならば、隠しておきたいネガな面も曝け出す必要がある。さて、それで打ってもらえるものなんでしょうか? 毒もあるとわかった上で、一歩踏み出してくれる人はどんだけいるんでしょうか? パチンコを深く理解するほどに、軽々に新規勧誘なんてできなくなる。ジレンマに頭を抱える業界人は少なくないと思います。

アンビバレントなパチンコの魅力を、さてどうやって伝え、理解してもらうか。ネットに飛び交う罵詈雑言や、ホールでの不良客の振る舞いを見ていると、現役ユーザーでさえ「楽しい」に辿り着けている人は少数派じゃなかろうかと不安になってしまう状況です。そんな「難しい」娯楽に、無責任に誘い込むことが果たして良いことなのか。実に難しい問題だと思います。申し訳ありませんが、僕は未だ答えを見つけられていません。

■プロフィール
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。オンラインサロン『パチンコ未来ラボ』主宰。

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