イモラでGTWCヨーロッパ開幕。前年王者チームWRTが優勝、初参戦のロッシはまさかのピット通過

 4月1~3日、ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパの2022年シーズン開幕戦がイタリア、イモラ・サーキットで開催され、前年の総合王者であるチームWRTの32号車アウディR8 LMS Evo II(ドリス・ファントール/シャルル・ウィーツ/ケルビン・ファン・デル・リンデ組)が、3日に行われたエンデュランスカップ第1戦の決勝3時間レースを制した。

 今季開幕戦でポール・トゥ・ウィンを飾り、新しいアウディのGT3モデルにシリーズ初勝利をもたらしたチームWRT。彼らは決勝日に行われた予選でポールポジションを獲得し、同じくアウディ陣営のサンテロック・ジュニア・チーム(25号車アウディR8 LMS Evo II)とともにフロントロウにチャンピオンカーである32号車アウディを並べた。

 迎えた決勝、ファーストスティントを担当したウィーツが好スタートを決めたが、バリアにクラッシュした112号車マクラーレン720S GT3(JPモータースポーツ)とスピンしてコース上に止まった83号車フェラーリ488 GT3 Evo(アイアン・デイムス)の回収のため、スタート後わずか2分でセーフティカー(SC)が導入される。

 レースは10分後にリスタート。32号車アウディは再スタートもうまく決めるが、その後まもなくウィーツがグラベルに飛び出してしまい2番手に後退。替わって25号車アウディがトップに浮上する。32号車の背後にはラファエル・マルチェッロ駆る88号車メルセデスAMG GT3(メルセデスAMG・アコーディスASPチーム)が迫る。

 チームWRTは、フルコースイエロー(FCY)と2度目SCランを挟んで迎えた1回目のピットタイミングでアンダーカットを選択する。これが奏功し32号車は1周遅れてピットに入った25号車アウディを逆転、トップに返り咲いた。また、32号車と同じタイミングでピットに入った95号車アストンマーティン・バンテージGT3(ビーチディーンAMR)も4番手から3番手に順位を上げることに成功している。

 スタートから1時間25分後、2番手を走る25号車アウディのルーカス・レギュレがタンブレロでコースを外れる。幸いクラッシュには至らずコースに復帰するが、このスティントで46号車アウディR8 LMS Evo II(チームWRT)に乗り込んだバレンティーノ・ロッシの後方、14番手までポジションを下げてしまった。

2022年GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ第1戦イモラのスタートシーン
バレンティーノ・ロッシがドライブする46号車アウディR8 LMS Evo II(チームWRT)

■混雑するピットロードでストップ位置を見失ったロッシ

 そのロッシは2度目のSC出動時に、32号車アウディや88号車メルセデスなどの上位陣とともにピットへ飛び込んだ。しかし、先行するマシンの影で視界が遮られたかチームWRTのピットボックスを通り過ぎてしまい、もう1周コースを回ってくることに。

 翌周、今度は所定の位置に止まったロッシは、チームメイトのフレデリック・バービシュにマシンを託しGTWCデビュー戦での仕事を終えた。チームは“MotoGPレジェンド”の働きについて、ペースも良くとても良い仕事をしたと評価。ピットストップの問題はミスコミュニケーションによるもので彼のせいではなく、ほぼ全車が同時にピットレーンに入ったときに起こり得ること、としている。

 上位陣の争いでは32号車アウディが首位の座を守って2時間過ぎのリスタートを迎え、2番手に88号車メルセデス、2号車メルセデスAMG GT3(AMGチーム・ゲットスピード)が3番手につける展開に。一方、第2スティントで2番手につけていた95号車アストンマーティンは、ピットインが1周遅れたことが災いし18番手まで順位を落としてしまった。

 最終スティントも短いFCYとSCランがあり各車のギャップがリセットされるも、首位を走る32号車アウディは一貫したペースを崩さず徐々に後続を引き離していく。そして最終的には6.2秒の差を築いてトップチェッカー。今季開幕戦をポール・トゥ・ウインで制してみせた。2位は88号車メルセデス、3位表彰台はトレゾル・バイ・カーコレクションの12号車アウディR8 LMS Evo IIとのバトルを制した2号車メルセデスが獲得している。

 シルバーカップはチームWRTの30号車アウディR8 LMS Evoがクラス優勝を飾り、新設されたゴールドカップではハーバー・モータースポーツの911号車ポルシェ911 GT3 Rが初代ウイナーとなった。プロ・アマの勝者はSPSオートモーティブ・パフォーマンスの20号車メルセデスAMG GT3だ。

 日本勢は、チームWRTからゴールドカップにエントリーしている富田竜一郎が33号車アウディR8 LMS Evo IIをドライブする予定だったが、マシントラブルの影響でグリッドに着けず。スタート前にリタイアとなった。

 VSRの563号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evoで、シルバーカップに挑戦する根本悠生はレース終盤の第3スティントを任された。燃料タンク容量の関係で早めのピットインができず、前のスティントから6つ順位が落ちた展開のなかマシンに乗り込んだ根本は、SC明けに4台を交わしてクラス11番手から7番手まで順位を挽回する。その後、6番手31号車アウディR8 LMS Evo IIとのバトルの中でコース外に押し出されひとつ順位を落としたものの、ふたたび抜き返しクラス7位でフィニッシュした。なおレース後、31号車にペナルティが出たため最終順位はクラス6位/総合24位となっている。

 ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパの次戦第2戦は、4月30日から5月1日にかけてイギリス、ブランズハッチで開催される。同ラウンドは60分のタイムレースを週末に2回行うスプリントカップの第1戦だ。

■GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ第1戦イモラ 決勝レースハイライト

メルセデスAMG・アコーディスASPチームの88号車メルセデスAMG GT3
VSRの563号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo
2022年GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ第1戦イモラの表彰式

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