第44回「ある年ある日のニューイヤー」

今は浅草ビューホテルになってしまっている浅草国際劇場。 舞台裏は自分たちの控室に、山本ミック(山本翔)が入ってきて、ひとしきり一人で陽気にしゃべりまくっているときのこと。酔っぱらった誰かが開けっ放しのドアから入り込み、入口に倒れこんだ。 山本ミックから「PANTAさん、蹴とばしてやっちゃってくださいよ」と声がかかるも、早々とスタッフに部屋から引きずり出された。と同時に、伝令が走りこんできて、「PANTAさん、時間です、早く来てくれとのことです」との指令。 「じゃ行ってくる」とみんなをあとにし、控室脇の階段を駆け上ると、舞台幕裏でデビューしたばかりのアナーキーが、ベロベロに酔っぱらったガンさん(村上元一)にカラまれていた。 矛先を変えようと、「いやあ、ガンさん」と声をかけると、振り向いたガンさんは、「おおっ、PANTA、乗ってるかぁ」と両手を広げ、右手でバイクのアクセルをひねりまくりながら抱きついてきた。 後の言葉は表記できない会話が一方的にガンさんの口から放たれたわけだが、そのうち、下手の幕裏から、「PANTA、何やってんだよ、早く来いよ!」と、あの鼻にかかった甲高い声が響いてきた。 ガンさんを引き離し、集合場所のほうへ小走りに移動すると背中から、「何が仕事だ、この野郎!」、とガンさんの声が届き、それに応えるように、甲高い声が、「てめえ、あとで話しつけるからな!」という応戦らしき言い合いが続く。 外ではヤクザに喧嘩を売ったギャラリーらしき一人の男が車から降りてきた数人のその手の男たちに囲まれ、「おい、事務所へ連れてけ!」とフェンスに押し込まれる。その後ろから一升瓶を背中に隠したウチのスタッフが、なぜかそこに紛れ込んできたのが後で笑い話になっている。 集合場所に設置されたテレビカメラの前で、司会の南美希子(?)さんの段取りの確認。カウントダウンに合わせて枡酒を割るというものだったのだが、ADのカウントが始まると同時に、後ろから、何かものが飛んできて、隣の力也の頬っぺたにバシッと叩きつけられた。 ムッとした力也が振り向くと同時に、ADのキューが入り、全員、何事もなかったかのように枡酒を掲げ、笑顔で「新年おめでとうございます!」と大団円となった次第のある年ある日のニューイヤーでした。

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