“売り子のビール販売”は台湾でも好評 日本人CEOが続々打ち出す「球場改革」

楽天モンキーズ・川田喜則CEO【写真:球団提供】

3年目の楽天モンキーズ、川田喜則CEOが思う“魅力ある球場”とは?

2020年に台湾プロ野球界に参入した楽天モンキーズ。3年目を迎えるチームでCEOを務めるのは、日本人職員の川田喜則さんだ。NPBの楽天イーグルスで球場長を務め、スタジアムの改修に力を入れてきた。モンキーズでも「ボールパーク構想」を掲げており、本拠地の桃園国際球場(桃園市)は改修が進んでいる。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、球団誕生から計画していたことが思うように実行できない事情もあるが、球場のボールパーク化は着々と進んでいる。2021年には、スタンド上部に設置されたVIPルームに透明有機ELディスプレイを設置。ディスプレイにより視界が遮られることがないため、試合を見ながら映像を楽しむことができると好評だ。

「今後は屋外型のボックスシートや、バックネット裏にVIPシートを作るなど、毎年ファンの方々の反応を見ながら進めていきたいと考えています。座席の改修だけでなく、食事をセットにしたり、生ビールのサーバーを座席にセットするなど、サービスにもまだまだ発展の余地がある。台湾のサービスとして有用かどうかを考えながら、検討していきたいと思っています」

売り子がスタンドを歩きながらビールを売る光景は日本では当たり前になっているが、海外では浸透していない。モンキーズでは昨年から日系のビール会社と共同で、ワゴンを引きながら生ビールを販売するという新たな試みを行った。ほかにもビッグプランはあるというが、まずはファンに魅力ある球場づくりをしていきたいと話す。

もっと企業とのコラボを「モンキーズのコンテンツを活用していただけるのでは」

「台湾には球場でビールを飲むという文化が日本ほどありませんが、評判が良かったので販売員の人数を増やしたり、拠点を増やすことを考えています。美味しいご飯が食べられる、グッズを買う楽しみがある、子どもたちが野球に飽きたら遊べる場所がある。そういった基本的なところからやっていきたいと思います」

台湾でも野球は人気のあるスポーツで、野球に対するファンの熱い思いは日本と変わらないと川田さんは話す。しかし、プロスポーツのバリュー拡大の余地はまだまだあり、もっと企業とコラボレーションができるのではないかと考えている。

「企業のブランディング、プロモーションとして更にモンキーズのコンテンツを活用していただけるのではないかと思っています。球場の広告のみならず、試合、選手、チアリーダーを活用したタイアップイベントを行い、会社名や商品を掲示することは、企業にとって非常に価値がある。日本では黒字化の球団も多数あり、収益のバランスを意識し独立企業として運営していますが、台湾ではまだ、スポーツ球団は親会社の広告宣伝的価値という認識があり、そこに改善の余地があると思います」

今後は日本のように地域密着にも取り組みたいといい、すでに本拠地の桃園市とパートナーを組み、さまざまな企画を考えている。日本の野球文化は台湾球界にどんな影響をもたらすのか。今後が楽しみだ。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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