核禁条約、WG設置を 放射線被害者支援で提言 長崎大レクナ・原研

放射線被害者支援の具体化に向け、提言を発表する広瀬副センター長(左)ら=長崎市文教町、長崎大核兵器廃絶研究センター

 核兵器禁止条約の第1回締約国会議が6月にオーストリアのウィーンで開催されるのを前に、長崎大は6日、同条約の柱の一つ「放射線被害者支援」の具体化に向けた政策提言を発表した。被爆地が蓄積した放射線研究の知見を踏まえ、「医療」と「支援制度」の2分野のワーキンググループ(WG)を設けることを提案。両WGが実務的な協議を担い、早期の支援体制構築につなげるよう求めている。
 核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)と原爆後障害医療研究所(原研)が共同で策定し、6日の記者会見で公表した。
 同条約は核兵器の全面禁止に加え、核兵器の使用や核実験の被害者への医療援助などを規定。ただ、具体策や実施行程は定まっておらず、2年ごとの締約国会議で協議することになっている。同大は第1回会議が2日間と短く十分な議論は望めないとして、2024年の第2回会議までにWGで協議を進めるよう提案している。
 提言は、主に核実験の被害者を想定。WGは締約国や専門家、非政府組織(NGO)などでつくり、医療グループは、核実験の影響を受けた地域の線量や住民の健康状態などのデータベース化や、国際的な支援ガイドラインの作成を担う。支援制度グループは国際的な連携体制の整備、支援資金の確保や運用方法について具体策を練る。両WGでこうした支援を担う医療人材の育成に取り組むことなども盛り込んだ。
 初の締約国会議を前に主要締約国やNGOの他、核保有国などにも提言書を提出する予定。執筆した広瀬訓レクナ副センター長は「人道的見地から(核兵器を禁止して)新しい被害者を生まず、被害者に対しては適切な救済をする目的で作られた」と条約の意義を強調。その上で「長崎には原研などに放射線被害者の治療についての蓄積があり国際的に役立てたい。(健診や医療費支援など)被害者支援の経験もあり、条約に具体的な貢献ができる」と述べた。


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