会社員が実践すべき、両立できる副業を構築するための3フェーズとは

副業もビジネスなので、成功する保証はないですし、逆に軌道にのり繁忙になっても本業が疎かになっては本末転倒です。

そこで、森 新( @mori_arata )氏の著書『普通の会社員のための超副業力』(CCCメディアハウス)より、一部を抜粋・編集して副業を構築するためのフェーズを紹介します。


副業の構築(1)模索フェーズ

「現職」か「転職」か「起業」か。

この3択の中で、最も自己成長につながるような経験値を多く積めるものは、どれだと思いますか?

この問いには、「起業」と答える方が多いでしょう。

私自身、失敗も含めてですが、いくつもの新規事業の立ち上げに挑戦をしてきました。そのため、起業によって経験値が積めるのは事実だと感じています。

しかし、現職を辞めて起業に挑戦する場合は、本業の安定的な収入を失うことになるため、リスクも伴います。

また「転職」においても、いまより安定した状態を構築できる保証がないため、本業が安定している人においては一定のリスクが伴います。しかし、現職維持の場合よりも、新しい職場で新しいスキルセットを得られるチャンス、つまり自己成長の機会を多く得られる可能性は高くなります。

●安定度と自己成長度の関係性

このように、安定度と自己成長度(リスク)は、二律背反の状態と一般的には認識されています。

現職のままで、あと何年かすれば次の職位に昇格ができそうだ。そうなれば年収が増え、新しい経験もきっと積むことができるはずだ。よし、もう少し「現職」のままで様子を見よう。

このような、「現職」「転職」「起業」の3択の思考サイクルになりがちではないでしょうか。

ここに「現職+副業」という四つめの選択肢を加えると、現職の収入、職位や社内実績を維持したままで、副業での新たな経験値を得ることが可能になります。仮に副業収入がゼロだった場合でも、経験値という意味ではプラスです。

副業の構築(2)自律フェーズ

2つめのフェーズは、本業を守り抜く大切さと、外部環境の変化に強くなるという点です。私は、本業と副業は2輪の前輪と後輪の関係にあると思っています。車輪のサイズは、年収と考えてください。

●本業と副業のバランス

図のように、本業のみの場合は1輪車の状態です。路面がきれいな環境では、なんら問題はないのですが、石がごろごろと転がっているようなハードな路面だったらどうでしょうか。路面環境の影響をすべて1輪で受けきることが求められるため、乗りこなすには相当なテクニックが必要になります。

一方で、副業が構築できている状態は、2輪で走行できている状態です。副業を複数構築できたとすれば、3輪以上の状態となり、安定性はさらに増していきます。少なくとも2輪があれば、路面が悪い状況でも、ある程度の安定性を維持することができます。

ここで路面として表現しているのは、外部環境を意味します。不可抗力の自然災害、社会情勢の変化、新型コロナウイルスなどの感染症、自社や重要取引先の倒産、法改正、上司との性格の不一致、家族の介護……。大小問わず、外部環境の変化は、これからも絶え間なくやってくるでしょう。

副業を構築しておくと、収入ポートフォリオの観点からも安定性が高くなります。1輪ではなく、2輪以上で前進できる状態を目指しましょう。

では、前輪は副業でしょうか。それとも、本業でしょうか。

大きな車輪を前輪にしていないと、段差を越えることができなくなります。立ち上げ当初から、副業年収が本業を安定して上回るケースになる人は、きわめて稀です。

つまり、前輪が本業、後輪が副業となります。仮に前輪が壊れた、外れた、失ったとなれば、文字通り本末転倒。副業構築のメリットを生かしきるためにも、前輪はしっかり守り抜くことが重要です。

副業の構築(3)振り子フェーズ

最後は、本業へのシナジーです。副業の構築に挑戦し、結果として収入の安定化に成功した暁には、そこまでの道のりで得られた経験を糧に、ビジネススキルが大幅にアップしているはずです。ここで、「挑戦の振り子の幅を広げる」という考え方をご紹介します。

ウィキペディアを参照すると、振り子とは「空間固定点(支点)から吊るされ、重力の作用により、揺れを繰り返す物体である。支点での摩擦や空気抵抗のない理想の環境では、永久に揺れ続ける」と定義されています。

子どもの時分に振り子の原理を応用したおもちゃや振り子時計にふれて、その動きを興味深く見つめた経験がある人も、多いのではないでしょうか。

振り子は、左右いずれかの位置から放たれて加速します。その位置が高ければ高いほど、反対側へ向かう際の運動エネルギーは大きくなる。

この関係は、「本業と副業」においても同じことが言えます。副業において、いままでやったことのないことに挑戦し、その結果、副業の何かしらの分野において高いポジションを獲得するとしましょう。

その高いポジションを得る過程の中で、心技体それぞれにポジティブな変化が生まれます。結果、副業における高いポジションを得た振り子は、もう一方の活動にも好影響をもたらすのです。

副業をやると「本業がおろそかになるのでは」という心配をされる経営者の方も多いのですが、このステージまで到達した人に限っては、それはないと言い切りたいと思います。

ただ、本人にとって本業での仕事の魅力がなくなった場合には、「転職や離職」を選択するケースもあります。ただしそれは、副業による直接的な影響ではなく、職場魅力度という別の、従来からの問題です。

●振り子理論

最後に、重要な点をお伝えします。

振り子は、本業に近いところで振っても、振ることができません。

たとえば、マーケティングを本業とする人が副業で別会社のマーケティングを担ったり、不動産仲介を本業とする人が副業で別の不動産仲介を手がけるなど、本業にきわめて近い領域を副業で選択した場合、ほとんど振り子を振ることができないのです。もしくは、その振り子を振ること自体、社会的にもなかなか許容されづらくなります。

仮に、強引に振ろうとすると、ネガティブな風が吹き、振り子は本業側も含めて乱れていくかもしれません。

副業を考えるときには、本業で得た直接的なノウハウやスキルという出発地点から考えがちです。しかし先述の通り、前輪を失ってはなりません。本業側に隠さなければならない副業は、続きません。振り子を自信を持って大きく振れるような副業を、選択しましょう。

著者 森 新

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・めざすのは「年収500万円」ではなく「合計年収500万円」
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・副業が軌道に乗ったときに、本業をおろそかにしないバランスの取り方とは?
19万部超『アウトルック最速仕事術』『脱マウス最速仕事術』の著者(普通の会社員)が語る、副業の思考と実践法とは?大失敗と大成功のエピソードから得られる、新しい働き方のヒント。

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