副業を本業と両立させるために知っておきたい「時間の作り方」とは

なかなか時間がとれなくて、副業に興味はあるけれど取り組めていない方もいるのではないでしょうか。

そこで、森 新( @mori_arata )氏の著書『普通の会社員のための超副業力』(CCCメディアハウス)より、一部を抜粋・編集して可処分時間をいかに作るかを紹介します。


朝が弱い人の可処分時間の作り方

可処分時間を作るための一つの観点をご紹介します。それは朝の時間です。私はどちらかというと、朝型ではなく夜型の人間でした。朝は目覚めが悪く、どうしても生産性が上がらない気がしていたからです。

出社ぎりぎりまで睡眠時間に充てることこそ、自分には向いている。そう思い続けてきました。しかしある日、父から突然、1冊の文庫本が送られてきました。朝の時間の使い方に関する本です。

自身が教育者であることもあり、口うるさかった父は、私が中学生のころから何度も繰り返し「朝の時間を大切にしなさい」と言っていました。朝の時間をうまく使わないと、人生はいい方向に進まないんだ、と。

「まだ同じこと言ってんのか。自分は朝型じゃないから……」と思いながら表紙をめくると、ところどころ、黄色い蛍光ペンでマークされています。「大事な箇所はわかるようにしておいたから、せめてそこだけでも読め」というわけです。

特に気乗りしないまま読み始めた私の目に飛び込んできたのは、「オセロ理論」と称する、時間の使い方をオセロになぞらえた考え方でした。あのボードゲームのオセロです。

●オセロ理論

この考え方ではまず、朝に意図的に自分にミッションを設定し、そのミッションをクリアすることで自己評価に○をつけます。日中に働いている人であれば、朝は自分でコントロールしやすい時間帯のため、自分の意思で予定が組みやすいからです。

一方、昼は他人とのチームワークの中で働くことが多いので、○になるか×になるか△になるかは、その日の外的な環境次第。

そして夜は、過度な残業に支配されなければ、再び自分の裁量でコントロールできる時間となります。そのため、自己評価が○になる予定を設定して、〇をつけます。

オセロのルールで考えれば両側の朝と夜が○なので、真ん中の昼もどんな環境であれ、○にひっくり返るという発想なんですね。

ちょっと屁理屈のような部分もありますが、言いたいことは「朝と夜の時間の使い方次第で、人生に好循環をもたらすことができる」ということです。

この屁理屈が、そのときの私にはすとんと腹に落ちました。同時に「朝は自由に使える時間なのに、普段は何の予定も立てていないな」ということに気づいたのです。自分次第でコントロールできるのだから、まずは朝の時間の使い方を見直して、新しい動き方に挑戦してみようと思ったのです。

じつに遅まきながら、中学時代以来の父の小言の意味がようやくわかってきたような気もしました。

「朝限定:OB訪問、受けつけます」

しかし、朝の時間の使い方を変える決意をしたといっても、「いや、朝は眠いし」と思ってしまう人間の本質は、なかなか変わりません。早く起きてランニングをするとか本を読むなどといった計画を立てても、自分は絶対にさぼってしまうだろうという自信がありました。

私は意志が強い人間ではありません。生まれてから28年続いた歴史のある夜型です。これを断ち切るには、劇薬が必要だと考えました。

そこで私は、「毎日、朝に人と約束する」ことを始めました。

企業で働いていると、就職活動中の大学生から「OB訪問を受け入れてもらえないか」という相談が頻繁に寄せられます。何者でもない私にも、就活生なら会いたいと言ってくれるわけです。

何かしらの形で彼らの役に立つのだという前提で、私が朝早く起きるためのきっかけとして利用させてもらうことにしました。

「朝の7時半から1時間限定、OB訪問を受けつけます」

そうアナウンスしてみたところ、ものすごい数のオファーが来ました。ひっきりなしに問い合わせが来る日もありました。

それから、OB訪問に応じるという私にとっての朝活が始まり、毎朝決まったスターバックスで学生さんと会うことが習慣になったのです。

人との約束があるから、朝が苦手だろうが、否が応でも早く起きなくてはなりません。そうして狙い通りに動き続けていった結果、朝の時間の使い方に自己肯定感を得られるようになっている自分を発見しました。しかも、ある程度は人の役に立ちながら。

朝早くから会いに来てくれた学生さんたちに「1時間自由に使っていただいていいので、聞きたいことは何でも聞いてください」と言い、1年ほど300人近い学生さんと会いました。仕事の厳しさだけではなく、いかに楽しいかも伝えていきました。

朝限定のOB訪問は、普通はなかなかないと思いますが、学生さんたちは「社会人になるのは大変そうだと思っていたけれど、楽しそうに働いている社会人もいるんだな」とポジティブに受け止めてくれていたようです。

これを1年近く実行し、夜型人間を朝型人間にシフトさせることで、私は朝の1時間を可処分時間の在庫に追加することを成功させました。これだけで、年250日稼働とすれば、すでに年間250時間をさらに獲得できたのです。のちにこの習慣と可処分時間は、「朝副業」の時間に変身してくれました。

ルーティンを変えるだけで、新しい目で世界が見える

日本を代表する経営コンサルタントの大前研一さんは、「人間が変わる方法は三つしかない」と述べています。

時間配分を変える。
住む場所を変える。
つきあう相手を変える。
この三つでしか変わらない。

私は、この考え方が大好きで、自分の人生に取り入れてきました。

新しいことを始めたいのなら、日常のルーティンの時間配分を変えるのをおすすめします。通勤時間を30分〜1時間早くしたり、遅くしたりするだけでも、世界の見え方は変わってくるはずです。街を歩いている人の雰囲気も、普段とは違うでしょう。私は通勤時間や経路をしょっちゅう変えていますが、おもしろい発見の連続です。

もしあなたが毎週、本を2冊読んでいるのであれば、いったん本を読むのをやめてみて、ほかのことをしてみるといいかもしれません。たとえば、読むのではなく、本やブログを自分で書いてみる。テレビをよく見てしまうのであれば、脱テレビを開始した日付を付箋に書いてテレビに貼りつけ、電源を1か月抜いてみる。

どれもちょっとしたことですが、やってみると明らかに物の見え方が変わりますし、新しい発見があります。自分の中にあるルーティンを書き出して、それぞれ別の時間に割り振ってみましょう。また、現代における「大人のおしゃぶり」とも称されるスマホから、ときには目を離し、人間観察をしてみるのもいいでしょう。

たとえば私は、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大してからは、店舗や施設の入口で道行く人たちを見て「アルコール消毒をする人」と「アルコール消毒をしない人」の違いに着目し、思考実験をしていました。

この差は、どこから生まれているのでしょうか。地域性?年齢層?そうしたことを思いながら観察を続けます。「ハンドバッグやスマホを片手に持っている人はあまり消毒液を使わないかも」「リュックサックやショルダーバッグなどの両手が自由になるバッグを持っている人は、消毒液の利用率が高そうだ」―。そんな仮説が生まれました。

もし自分が店舗や施設のオーナーならば、入口に荷物を置くスペースを設けるか、足踏み式の消毒液スタンドを設置する。そうすることで、利用者がより安心した状況で利用できるのでは?

こうして適当な思考実験を繰り広げるのも、私にとっては大切な活動です。日常に変化を与えながらアイデア千本ノックと称して「新規事業アイデア帳」と名づけたノートを常に持ち歩き、発見したことや気づいたことがあれば、ひたすらアイデア帳に書き込んでいるのです。

アイデアが出ないときは、その瞬間その瞬間で気づいたことを書いたり、人に言われたことを書き留めたり。とにかくひたすら書いています。

人間は誰しも、無意識のうちにさまざまなルーティンに縛られています。

3秒のルーティンでも、自分で変えられる範囲のものをどんどん変えてみて、新しい目で世界を見てみる。そうすればきっと、キャリアに対する考え方や生き方も変わると思うのです。そんな1秒の積み重ねが人生なのですから。

著者 森 新

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