鈴鹿央士が俳優業にやりがいを感じる瞬間は視聴者からの声が届いた時「プラスじゃない言葉も、作品にのめり込んでもらえる要素に」――「クロステイル ~探偵教室~」インタビュー

広瀬すずに見いだされ芸能界デビューし、映画「蜜蜂と遠雷」(2019年)では映画祭の賞を総なめした鈴鹿央士。若手のホープがついにドラマ「クロステイル ~探偵教室~」(フジテレビ系=東海テレビ制作)で連続ドラマ単独初主演を果たす。

ドラマ「半沢直樹」(TBS系)や「家政夫のミタゾノ」(テレビ朝日系)など数々のヒット作を生み出した脚本家・八津弘幸と最強タッグを組んだ本作で鈴鹿が演じるのは、就職先が決まる前に大学卒業の日を迎えた上、推理小説家の父(板尾創路)が莫大な借金を残して失踪したため生活が一転してしまう飛田匡。父親を捜すためと就職の一挙両得で探偵学校に入学するも、イメージとかけ離れた地道な調査に幻滅…。しかし、課題などを通して人間の心に寄り添う探偵の仕事にやりがいを見つけていく。

今回TVガイドwebでは、連続ドラマ単独初主演を務める上での率直な気持ちや、俳優業にやりがいを感じる瞬間などを聞いた。

――連続ドラマ単独初主演ですね。

「“連続ドラマ単独初主演”という言葉だけ聞くと責任感とかプレッシャーを感じますが、気持ちとしては作品の良さや自分の持てる感情・愛情をすべて込めて作っていこうという、毎回の作品に入る時と変わらないです。現場に入って撮影をして毎日楽しくできているので、今すごくポジティブな気持ちでいれています」

――台本を読んでの感想を教えてください。

「スピーディーな展開とテンポ感のある会話が面白いし、1回読んだだけじゃ分からない深いところにポイントが詰められています。一番最初に読んだ時は『うわ、面白い!』となるけど、何回か読むと気づきというか…『ここって、こういうところにつながっているんだ』とか『この人ってこういう感じだったけど、こうなるんだ』とか人間を深く描いているので、(視聴者の方も)いろんなところに注目しながら見てほしいなと思いました。だからこそ僕も、小さいところをちゃんと逃さないように演じていかないといけないなと思っています」

――印象的だったセリフは?

「お父さん役の板尾さんに『匡、頑張れよ』と言われるんです。本当は“就職、頑張れよ”って意味なんですけど、頑張れよって言われたところからお父さんがいなくなるので、『頑張ってお父さん捜してね』とか、たった一言の『頑張れよ』にいろんな意味があるのかなとか……って考え出すと止まらないです(笑)」

――飛田匡をどう捉えていますか?

「だいぶ破天荒というか、ぶっ飛んだお父さんがいて、かわいらしい天然なお母さんがいて。その両親に育てられたので結構安定志向の匡くんですけど、そういう2人に挟まれていたからこそ出てくる要素というか。お母さんのこういうところと似てるなとか、お父さんの血を継いでいるんだなって思うところもあって。これまで僕が演じてきた中でも(本作は)周りにいるキャラクターが濃いので、その人たちに振り回されながらも、いいところとか色を自分でうまく組み取りながら成長していく人だなと思っています」

――以前、気になりだすと寝れないところが似ているとお話されていました。ほかに匡とご自身に共通点はありますか?

「(実際の)母親がおしゃべりで天然な感じでして。母親は役の母親と似ていますね。母親役の山口香緖里さんは事務所の先輩で以前共演させていただいたこともあるし、自分の母親と似ている性格でもあるし…というのもあって、親近感が湧いて入っていきやすい感じがあります」

――撮影中のエピソードがあれば教えてください。

「檀れいさんと探偵会社のシーンを撮ったんですけど、すごく美しいですね(笑)。圧倒されちゃって頭が働かなかったです。『あー、ヤバいヤバい』って。ちゃんとしなきゃって思ってたんですけど、緊張してそわそわしちゃって。撮影が終わってから檀さんに『頑張ってね』って肩ポンポンってしていただいて、すごくやる気満々になりました(笑)。板尾さんとは、現場で『僕は食べても筋肉とかつかなくて』と相談したら、『30歳とかになったらお肉もつくようになるよ~!』とおっしゃっていて(笑)。板尾さんの役は破天荒ですけど、現場では和気あいあいといい雰囲気で撮れています」

――いい雰囲気の中で撮影されているとのことですが、第1話の中で「ここに注目!」というポイントをぜひ!

「(熟考した上で)全部ですね。見ててほしいです。家族のこともそうですけど、探偵学校での会話とかを覚えていてほしくて。(今後の放送の中に)散りばめられているので覚えていたら『あ、ここつながった!』とか分かってもらえるかもしれないです」

――匡は探偵の卵ですが、鈴鹿さんが探偵になりたいと思ったことは…?

「探偵になりたいと思ったことあります。(僕は)『この人、気になるな』『この人、どういう生活してるんだろうな』って深くいろんなことを考えちゃうタイプで。ストーカーではないんですけど(笑)、その人を知って、その人のことを愛するというか。ちゃんと人間を理解したいという思いで生きています」

――実際に探偵の方にお話を聞いて印象に残っていることはありますか?

「僕が想像していた探偵のイメージよりもっと泥くさいというか。ドラマの中でも描かれていますけど、その人を調べなきゃいけないってなった時に、足取りをつかむために自分はいろんなものを我慢しなきゃいけないし、目を離しちゃいけない、そういう根気強さとか、泥くささとか、根性がいるんだなって。(想像していたよりも)もっと過酷なものでした。だから、本気でやらなきゃなって思いましたし、匡も話を重ねていくごとに探偵の素晴らしさに気付いていくので、そこも気持ち的に参考にしたいなと思います」

――「クロステイル」には接近して尾行するという意味がありますが、今、接近したい人は?

「BTS! 『チンチャチョアヨ』(笑)。日本語で言うと『ほんとに好き』っていう意味です。僕よくシャッフルで音楽聴くんですけど、2019年くらいの冬にBTSの曲が流れてきて『めちゃくちゃいい!』って思ってからハマったんです。ステージ上でも格好いいですし、BTSの番組とかで着ている服とかも格好よくて。彼らが着ている服と同じものとはいかないけど、こういう組み方あるんだとか参考にして、自分の私服に昇華したりしています。皆さん格好よくて、追いかけたくなっちゃいます(笑)。メンバーに接近できたら、『毎日元気もらってます。ありがとうございます』って伝えます(笑)」

――では今、深掘りしたいものはありますか?

「愛ですね。去年、役的にも愛されない役をやっていたりと、愛について考えることが多かったです。愛についての本とかを読んだりしていました。でも、やっぱり答えという答えは見つからなかったし、人生の先輩に聞いても答えという答えは出てこないから、人生の中でもずっと考えていくことなんだろうなと思っています。恋人とかへの愛だけでなくて、人への愛とか環境とか、愛についてずっと深掘りし続けていきたいですね」

――匡は探偵の仕事にやりがいを見いだしていきますが、鈴鹿さんが俳優業でやりがいを感じる瞬間をぜひ教えてください。

「始めたての頃は作品が終わりましたという時に『あの時楽しかったな』とか『この瞬間、すごい感動してたな』と、カタルシス的な感じだったんです。でも、ちょっとずつドラマとかに出させていただいて、見ていただいた方にどう影響したのかとか、作品がまだ世に出ていない頃は作品しか自分に返ってくるものがないけど、誰かに見られた時に『明日から頑張ろうと思いました』『この1週間、頑張れます』とかの声をもらうと『よかったな』という思いが生まれるようになりました。そういうところにやりがいを感じています」

――去年は役柄的に苦しい場面も多かったかと思います。声はたくさん届きましたか?

「『この作品で見た人だ!』とかもありましたけど、『(役的に)ムカつく!』とかも届きました。プラスの感情じゃないかもしれないけど、その人が作品にのめり込んでもらう要素になれたというか、僕はマイナスな言葉を受け取っているけど、それが作品としてはプラスになっているので。作品を通して『ムカつく』とか言われたのは初めてだったんですけど、そういう反響があったのはうれしかったです」

――初座長の作品がいよいよ始まります。本作を作り上げる上で大事にしたいことを教えてください。

「撮影している期間はずっとメラメラしていたいし、モチベーションを保つのって難しかったりするけど、作品への気持ちを絶やさないように作品への愛情とともにどんどん上昇していければいいなと。今回も、一つのチームでみんなで協力していい作品を作るという思いを忘れないようにできたらいいなと思います!」

取材後記

実は、昔BTSのオフィシャルパンフレットを撮っていたカメラマンが今回の撮影を担当。それを撮影の合間に伝えると「え!」と驚いた後、あどけなさが残るキラキラしたすてきな笑顔に! カメラマンから「誰が好きなんですか?」と聞かれると、「最初はジミンが好きだったんですけど、今はみんな好きです」とにっこり。また、さすがメンノンモデル!と言わんばかりに、さまざまな表情を見せてくれた鈴鹿さん。時にはおちゃめな表情も。ご時世的にこちら側が笑えないことが残念なくらい、サービス精神旺盛で現場を盛り上げてくださいました。でもやっぱり、撮影中はカメラマンとBTSの話で盛り上がりをみせる鈴鹿さんでした。

【プロフィール】

鈴鹿央士(すずか おうじ)
2000年1月11日生まれ。岡山県出身。17年に公開された映画「先生!、、、好きになってもいいですか?」にエキストラ出演した際、広瀬すずの目に留まり芸能界へ。NHK連続テレビ小説「なつぞら」で俳優デビューした後、ドラマ「おっさんずラブ – in the sky -」(テレビ朝日系)、「MIU404」「ドラゴン桜」(ともにTBS系)、映画「星空のむこうの国」(21年)など、数々のドラマや映画に出演。19年に出演した映画「蜜蜂と遠雷」で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞、第93回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第74回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第44回報知映画賞新人賞と各賞を獲得した。また、19年よりメンズノンノモデルとしても活躍中。22年8月19日より映画「バイオレンスアクション」が、22年夏に劇場アニメ「夏へのトンネル、さよならの出口」が公開予定。

【番組情報】

「クロステイル ~探偵教室~」
フジテレビ系
土曜 午後11:40~深夜0:35

取材・文/Y・O(フジテレビ担当) 撮影/尾崎篤志

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