ラーメン店の倒産4割減、過去10年で最少に 「シメのラーメン」に期待も

 値段も食べ方も味も千差万別のラーメン店。コロナ禍で営業時間が制限され、飲み会後のシメのラーメンは姿を消した。
 ところが、生活様式の変化で自宅で食べる麺類は伸びている。はからずもコロナ禍は、麺類が大好きな国民性を浮き上がらせた。
 2021年度のラーメン店の倒産は全国で22件(前年度比38.8%減、前年度36件)にとどまり、過去10年で最少を記録した。これはゼロ・ゼロ融資や雇用調整助成金、持続化協力金などのコロナ関連支援が大きかった。
 2022年3月、まん延防止等重点措置が全面解除され、コロナ禍に翻弄されたラーメン店にもようやく薄日が差しつつある。「シメのラーメン」の復活は、ラーメン店が長いトンネルから抜け出す起爆剤でもある。
大手ラーメンチェーン店は、ひと足先に強気の業績を見込んでいる。“日高屋”を展開する(株)ハイデイ日高は今期、大幅増収を見込む。また、家系ラーメンの“町田商店”を展開する(株)ギフトホールディングスも3月の国内直営既存店の売上高(全営業日)が前年同月比19.6%増と好調が続く。

ラーメン店の倒産が急減

 厳しい環境に置かれたラーメン店だが、2021年度の倒産(負債1000万円以上)は22件(前年度比38.8%減)と大幅に減少した。種々の支援策に加え、持ち帰りやデリバリー強化などの効果が出たようだ。
 ただ、相次ぐ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出で、時短営業や酒類提供の自粛が残した痕跡は深い。
 さらに感染者数が落ち着いても、想定外の難しい局面が待ち受けている。感染者数が落ち着くとコロナ関連支援が縮小し、客足が戻らないラーメン店は「売上不振と支援縮小」の二重苦に追い込まれかねないからだ。

大手は回復の兆し、宅食との競争は激化へ

 コロナ禍で外食は減ったが、自宅で麺類を食べる人は増えている。総務省の家計調査によると、2021年(総世帯)の麺類の1世帯当たりの支出額は1万5,671円で、米の1万6,962円と肩を並べる。これを裏付けるように、カップヌードルを手がける日清食品ホールディングス(株)の2022年(4-12月)は、国内即席麺が好調だった。
 とはいえラーメン店も黙ってはいない。ハイデイ日高は、さらなる感染拡大がなく、徐々にコロナ前の状況に近づく想定で、2023年2月期は売上高375億円(前期比42.0%増)、営業利益18億円(前期35億円の赤字)と強気の業績を見込む。
 ハイデイ日高の担当者は、「遅い時間の動きはまだ鈍いが、感染者数が落ち着けば回復が期待できる」と強気の姿勢を崩さない。

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 コロナ感染拡大は3年目に入った。この間、生活様式の変化が定着し、夜遅くまで外食店で過ごす人は減り、シメのラーメンを食べる機会も少なくなった。
 一方で、革新が続く即席麺やカップ麺に加え、ラーメン店からの持ち帰りやデリバリー対応も進んでいる。だが、競争相手はコロナだけではない。円安進行とロシアのウクライナ侵攻で、小麦など食材や原油、原材料が高騰し、隠れていた人手不足も顕在化し始めている。
 これから大型連休を迎え、夜遅い時間帯のお客争奪戦も激しさを増すだろう。新型コロナで中断していた本当の生き残り競争が、再び始まる。

joujou

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