<社説>小学生ケアラー初調査 当事者調査と支援急務だ

 小学生を対象とした厚生労働省の初の「ヤングケアラー」調査で、小学6年生の約15人に1人に当たる6.5%が「世話をしている家族がいる」と回答した。既に調査が行われている中学生、高校生の回答数を上回った。 若年層の一定数が家族の介護などに追われている。発達への影響が懸念される。進学や就職の足かせともなる。回答者へのフォローアップ、総合的な支援など対策を取る必要がある。県内では、実態を詳しく把握するため、児童生徒らへの調査を急ぐべきだ。

 深刻なのは、ケアによると思われる影響だ。小学生ケアラーは健康状態が「よくない・あまりよくない」が4.6%、遅刻や早退を「たまにする・よくする」は22.9%と、世話をしていない児童よりもいずれも2倍前後となった。周りの大人にしてほしいことを聞くと「自由に使える時間がほしい」が15.2%、「勉強を教えてほしい」が13.3%、「自分の話を聞いてほしい」も11.9%いた。

 中学校への進学を控え、心身の発達に重要な時期にある児童が、勉強や遊びなどに時間を費やす自由が制限されている。ケア開始の年齢は7~12歳が約7割、6歳以下も約2割いた。小学校入学前から家族の世話に追われる児童がいる。調査結果は小学生ケアラーのSOSとも受け取れる。

 大学3年生を対象にした調査では、大学進学に際して学費の制約や受験勉強への影響、通学の不安など、何かしらの苦労があったことも分かった。就職への不安の声も寄せられた。切実な訴えである。

 当事者らの理解を深めることも重要だ。重い負担を背負っていると自覚できない場合もあるからだ。逆に過度な負担には当たらない手伝いが含まれている可能性もある。具体的な支援につなげるためにも調査の継続でより現実に即した数値を把握する必要があることは言うまでもない。

 埼玉県入間市はヤングケアラーに特化した支援条例を市議会に提案する。ケアラーは「発見するのが最も重要かつ難しい」との認識から、学校に「生活環境の確認、支援の必要性の把握」を求める。その上で、学校任せにしないために市による支援や措置を努力規定ではなく義務とし、財政措置も明記するという。

 沖縄では昨年、県が小5~高3の実態を調査した。ただ、これは学級担任を対象にした調査だった。結果でケアラーとみられる数は1088人(0.86%)で、厚労省調査の数字とは乖離(かいり)がある。

 ひとり親世帯や貧困の増加がヤングケアラーが生まれる背景にあるとされる。県内には潜在的なケアラーがいるとみる方が妥当だろう。県内にも当事者がいることを知らしめた県調査は画期的だった。これにとどまらず、児童生徒への調査などで実態を把握し、困っている子どもたちに支援を行き渡らせる必要がある。

© 株式会社琉球新報社