野尻智紀が王者の貫禄見せつける。平川亮との直接対決をポール・トゥ・ウィンで制す【SF第2戦富士決勝】

 2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権の第2戦決勝が富士スピードウェイ行われ、野尻智紀(TEAM MUGEN)がポール・トゥ・ウィンを飾った。2位に入ったのは第1戦覇者の平川亮(carenex TEAM IMPUL)。前日とは野尻と立場を入れ替えての直接対決となったが、第2戦は野尻に軍配が上がり、2位に続いた。3位には宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が入り、スーパーフォーミュラで自身初となる表彰台を獲得している。

 前日同様の晴天に恵まれた富士スピードウェイ。風も穏やかで、絶好のレース観戦日和となった。スタート進行が始まると、午前中の公式予選で決定されたグリッドに続々とマシンが着いていく。14時30分からのフォーメーションラップののち、シグナルのブラックアウトでレーススタートを迎えた。

 野尻、宮田とフロントロウの2台が好スタートをきる一方、3番グリッドの笹原右京(TEAM MUGEN)が2戦連続のエンジンストール。隣に並んだ佐藤蓮(TEAM GOH)出遅れ、山下健太(KONDO RACING)、小林可夢偉(KCMG)、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)、そして8番グリッドスタートの平川がオープニングラップでポジションアップした。

 平川の背後には三宅淳詞(TEAM GOH)が迫り、コカ・コーラコーナーではアウト側から平川に襲い掛かかるが、平川は冷静にポジションをキープ。そのまま集団が一気になだれ込んでいくが、最後尾スタートから大幅ポジションアップを果たしていた松下信治(B-Max Racing Team)がダンロップコーナーで牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と接触。牧野はコース上にストップしてしまい、先頭の野尻が2周目に入ったところでセーフティカー(SC)が導入された。

 車両回収を終え、レースが再開したのは5周目。ギャップが縮まったところで各車がバトルを仕掛けるが、5番手を走るフェネストラズがアドバンコーナーで大きくコースオフ。フェネストラズは7周目のトヨペット100Rコーナー手前でも大きくコースを外れ、マシンに異常を感じたのかそのままピットへ。タイヤを交換してコースに復帰したが、最後尾まで順位を落とすことになった。また、牧野と接触した松下にはドライビングスルーペナルティの裁定が下り、9周を終えたところで消化している。

 トップ野尻と宮田との差は1秒から2秒の間で膠着状態が続くが、その後方では可夢偉と三宅の4番手争いがヒートアップ。オーバーテイクシステム(OTS)を使用しTGRコーナーで仕掛ける三宅に対し、可夢偉はレイトブレーキングで魔ポジションを守りきる。新人にベテランの技を見せつけた可夢偉は、ピットウィンドウが開いた10周目にピットイン。これに佐藤、アレジ、笹原らが続く。

 KCMGはスムーズなタイヤ交換を見せたものの、後ろからピットに入ってくる車両がファーストピットレーンを通過するのを待つことになりタイムロス。この影響で可夢偉はジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)と大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)にポジションを奪われるかたちに。

 後方のマシンが次々とピット作業に入っていくなか、トップの野尻と2番手宮田は依然として2秒前後の差で周回していたが、16周目あたりからペースに差が出始める。17周目に自己ベストラップを更新した野尻は、宮田との差を3秒に広げ、翌周には3.4秒、19周目には3.6秒と徐々にその差を広げていった。

 また、18周目のホームストレートで山下をかわし3番手に上がった平川も、1分24秒4の自己ベストトラップで前の2台に近づく。一方、平川にかわされた山下は20周目を迎えるところでタイヤ交換へ。アレジの前で復帰したものの、すでにタイヤに熱が入ったアレジにダンロップコーナーでパスされてしまう。しかし、このアウトラップでペースを取り戻すとアレジに迫り、20周目に入ったホームストレートで一気にオーバーテイクしポジションを取り戻すことに成功した。

 さらに山下は、タイヤ交換を済ませ眼前でコースに戻ってきた三宅をロックオン。まだタイヤの冷えている三宅をダンロップコーナーで刺し、ポジションを上げた。山下に続いて三宅を攻略したいアレジだったが、ダンロップコーナーに入るところでわずかに挙動を乱しコースオフ。すぐにコース復帰を果たすも、山下と三宅から離されてしまうかたちとなった。

 レースも折り返しを過ぎたころ、上位陣のなかで最初に動きを見せたのが平川だった。第1戦同様、インラップの22周目で攻めの走りを見せると、それに呼応するかのようにチームも6.1秒という停止時間で平川をコースへと送り出す。これで山下よりも前で戦列に復帰した平川は、タイヤ交換を済ませたグループの中では最上位となる。

 続いて、24周を終えるところで宮田がピットイン。この周、平川は1分23秒7のファステストラップを記録して宮田、野尻らとの差を削ってきた。宮田は平川より少し前でコースに戻ったが、トヨペット100Rコーナーで平川に捕らえられ後退。実質の2番手までポジションを上げた平川のターゲットは野尻のみとなった。

 その野尻は25周を終えてピットイン。ピットでの停止時間は7.3秒と、carenex TEAM IMPULよりもわずかに時間がかかるも、平川の前でコースに復帰する。2台の差は約1.6秒。野尻は冷静に平川とのギャップをはかりながら、タイヤを温めていくと、アウトラップでポジションを守りきることに成功した。

 その後、26周目に坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、29周目に関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)がピットへ向かったことで、野尻は見た目上でもトップ浮上。終盤の約10周は、後続とのギャップをコントロールしているかのような安定ぶりを見せ、ファイナルラップは温存させていたOTSを点滅させながらドライブ。平川との1.659秒差をキープしてトップチェッカーを受けた。タイヤ交換のタイミングなど、前日とは立場が逆転した平川とのバトルを制し、野尻が今季初優勝を飾った。2位の平川に続いた宮田は、前の2人に離されず、野尻から2.494秒差でチェッカー。フル参戦2年目にして自身初のスーパーフォーミュラ表彰台を獲得した。

2022スーパーフォーミュラ第2戦富士 スタート
2022スーパーフォーミュラ第2戦富士を制した野尻智紀(TEAM MUGEN)
2022スーパーフォーミュラ第2戦富士 平川亮(carenex TEAM IMPUL)
フル参戦2年目で待望の初商標台を獲得した宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)
佐藤蓮(TEAM GOH)、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)、松下信治(B-Max Racing Team)の中段勢
三宅淳詞(TEAM GOH)、山下健太(KONDO RACING)、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)のバトル
ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)とのポジション争いを制した大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が7位入賞
2022スーパーフォーミュラ第2戦富士 表彰台

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