国連安保理の常任理事国はどうしたら変わる?

2月24日(現地ウクライナ時間)にウクライナへの軍事侵攻をロシアが開始しました。
国際紛争に際しては国連の安全保障理事会(安保理)が紛争の平和的解決や、当事者への要請などを行うはずですが、ウクライナ侵攻にあたっては安保理がその役割を果たすことができませんでした。
本記事では安保理の役割やメンバー国について、そしてロシアが安保理常任理事国である中でどのようなときに安保理の常任理事国が変わりうるのかなど、国連安保理の制度や仕組みについて紹介します。

国連とは? 

国連安保理について知る前に、そもそも国連―国際連合とは何でしょうか。
国連とは、第二次世界大戦を防ぐことができなかった国際連盟の反省を踏まえ、1945年10月に設立された国際機構で、設立時は51か国、現在は193か国が加盟しています。
国連には「国際連合憲章」があり、加盟国の権利や義務についての規定や、国連の主要機関や手続きを定めています。

国連憲章 第1条
国際連合の目的は、次のとおりである。

国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
これらの共通の目的の達成に当って諸国の行動を調和するための中心となること。

https://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/

国連安全保障理事会とは?

上記の国連の目的の一つに国際平和・安全の維持があります。この国連の目的を具体的に役割として担っている国連の機関が安全保障理事会(安保理)です。

安保理は国連憲章の第23条にその構成や役割について定められています。

国連憲章 第5章 第23条

1 安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。
2 安全保障理事会の非常任理事国は、2年の任期で選挙される。安全保障理事会の理事国の定数が11から15に増加された後の第1回の非常任理事国の選挙では、追加の4理事国のうち2理事国は、1年の任期で選ばれる。退任理事国は、引き続いて再選される資格はない。
3 (略)

国連の設立当時、安保理は5つの常任理事国と6つの非常任理事国の11か国で構成されると定められていましたが、1965年の国連憲章改正によって15か国になりました。

(国連憲章に定められている「中華民国」の地位は1971年のアルバニア決議によって「中華人民共和国」が、「ソヴィエト社会主義共和国連邦(ソ連)」の地位は1991年のソ連崩壊とロシア連邦による継承によってロシアが、それぞれ引き継いでいるとされています。)

安保理の常任理事国とは?

安保理の構成国のうち、常任理事国とは中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカの5か国で、国連憲章に定められており、この5か国の常任理事国としての地位は国連憲章が改正されない限り恒久的です(P5, Permanent 5 とも呼ばれます)。

また、常任理事国には「拒否権」があります。安保理の議決は理事国15か国のうち9か国以上が賛成した場合に成立しますが、実質事項についての決定は常任理事国5か国全てを含む9か国以上である必要があり、常任理事国のうち1か国でも反対すると議決は成立しません。そのためこのことは常任理事国の拒否権と呼ばれます。

国連憲章の改正は国連総会の3分の2の多数で採択され、常任理事国全てを含む国連総会の3分の2の国による批准が必要であり、国連憲章の改正についても安保理の常任理事国は拒否権を持っているともいえます。

今回のロシアによるウクライナ侵攻では、2月25日に開かれた安保理の会合で、ロシアへの非難と即時撤退を求める決議案が提出され、中国、UAE、インドの3か国が棄権、11か国が賛成しましたが、ロシアの拒否権により不採択となりました。

まとめ 安保理常任理事国が変わるには…

本記事では国連や安保理の制度について簡単に紹介しました。
・国連安保理常任理事国を変えるには、国連憲章の改正が必要
・国連憲章の改正には安保理常任理事国全てを含む国連総会の3分の2が必要
がポイントとなります。

https://go2senkyo.com/articles/2022/03/03/66425.html

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