市場にとって予想外だった?株価の下落要因になった「世界の中央銀行の政策」

今回は、「世界の中央銀行の政策」についてのお話しです。株式市場とは切っても切れない関係で、とても重要な存在であると言えます。

先週の日経平均やNYダウは、前週に比べて大きく下落しました。その要因として、日本時間の2022年4月6日(水)にFRBのブレイナード理事が、量的引き締め(QT)と呼ばれる資産圧縮について「5月にも急ピッチで始める」と発言した事と、日本時間の同4月7日(木)に開示された3月のFOMCの議事要旨で、FRBの「大規模な保有資産を月額最大950億ドル(約11兆7600億円)のペースで縮小する」と公表された事が嫌気された側面が強いように感じます。

なぜ、この2つの事が株価の下落要因になるのかを、簡単に説明します。


金利は株価にどう影響するのか

2020年3月に「新型コロナウイルス」は世界的に感染が拡大しました。当時、米国を始め、欧州など各地でロックダウンが宣言(日本は非常事態宣言)され、経済活動がストップする事態となりました。当然ながら、世界の株価は大幅な下落となりました。

急速に進む、株安をなんとか食い止める為に、世界の中央銀行は相次いで金利を引き下げました。金利の引き下げは、株価を意図的に浮上させる為の一つの手段として用いられる事が多いのです。

例えば、マイホームを購入する際に、金利が2%の時と1%の時であれば、誰もが安い金利の時を選択するでしょう。中央銀行は金利を下げる事で銀行の貸し出しを増やし、景気浮上を考えます。しかし、2020年3月の時は、金利を下げただけでは、株価は下げ止まりませんでした。

そこで、米国FRBは、米国債やMBS(住宅ローン担保証券)や社債などを購入するなど、ありとあらゆる手段を講じて下落する株価への対策を打ちました。また、米国だけではなく、世界各国の中央銀行も超緩和政策を講じた事で株価は上昇に転じました。

皆さんの中にも、新型コロナが感染拡大の最中に、株価が上昇に転じた事を不思議に感じた方も多かったのではないかと思います。

利上げや量的緩和の終了は予想していたが…

世界の中央銀行の緩和政策により、新型コロナの影響で下振れしていた企業業績や失業率などはだいぶ回復してきました。また、金利の引き下げと世界の中央銀行の緩和政策で、市場に溢れたマネーが様々な商品や暗号資産などに資金がまわり、実体とはかけ離れた価格をつける場面が見られるようになりました。

そうした背景から、米国FRBは2020年3月から続けていた、米国債とMBSの購入を段階的に引き下げ、今年3月に終了させました。また3月のFOMCで0.25%の利上げを行いました。米国は、原油価格などの高騰や半導体不足などの影響で、物価が数十年ぶりの上昇となり、その対応策をとった形です。

世界の株式市場としては、利上げや量的緩和の終了は予想していました。しかし、冒頭に記載した早期の量的引き締め(QT)は急展開で織り込んでいなかった(予想外だった)為、株価の下落につながったように感じます。

2020年の新型コロナ感染拡大時の超緩和政策から一気に逆方向へのシナリオで、引き締め政策へと転換点を迎えようとしています。昨年までの米国株は超緩和政策で右肩上がりの相場が続きましたが、政策変更によってこれまでのように上昇し続ける事はないように感じています。

米国の動きに注目する理由

ここまで米国市場の動きを中心にお伝えしてきましたが、最後になぜ、米国の動きに注目するのかをお伝えします。世界の株式市場の主となるのは、やはり米国です。日本株はその影響を受けずにはいられません。

例えば時価総額で比べるとNYは約28兆9907億ドル、ナスダックが24兆0358億ドル、それに対し東京市場は6兆1476億ドルです(2022年3月31日時点)。どの様なニュースであっても、米国の流れを汲んでしまうのは、規模の大きさから見て一目瞭然です。

全体的な流れは米国に左右される部分が大きいので、注目せざるを得ない状況です。

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