複数ルートOKの「二区間定期券」、相鉄・東急直通線で登場する可能性は?

特定のルートを日々の通勤・通学で繰り返し使う利用客のために、鉄道事業者が一定の期間を区切って発行する「定期券」――

実はこの定期券には、2つ以上のルートを選択できるものが存在する。「二区間定期券」と呼ばれるものだ。

たとえば東武と東京メトロは二区間定期券「二東流」を発売している。和光市~池袋間を移動する際に東武東上線・東京メトロ有楽町線・副都心線どの路線でも使えるというもので、ライフスタイルに合わせたルート選択がウリ。

自宅が東武東上線の和光市以西にある場合などは便利に使える。都心で買い物して帰宅する際は、池袋「始発」の東武東上線を選択。追加で着席整理券を買ってTJライナーを使うのもいい。逆に都心へ向かう場合は和光市から有楽町線・副都心線に乗り入れる直通電車で乗り換えなし、といった使い分けができる。

2区間定期券「二東流」使用例(画像は東武鉄道ホームページから)

発売区間は東武東上線・越生線各駅(成増~池袋間を除く)から、東京メトロ線各駅(和光市~要町間を除く)まで。PASMOの通勤定期券で発売している(モバイルPASMOやApple PayのPASMOでも購入できる)。通学定期は対象ではない。

もちろん東武と東京メトロだけではない。西武なら池袋線と東京メトロ・東急線の通勤定期「だぶるーと」、新宿線とJRの通勤定期「Oneだぶる」、少し趣向は異なるものの、小田急の「二区間定期券」や京王の「どっちーも」など、様々な事業者が発売している。

複数の路線が相互直通運転を行う地域ならではのサービスといえる。通勤定期代に少し追加することでプラスアルファが得られる「二区間定期券」、ただ便利なだけではなく「混雑避け」という観点からも使えるサービスだから、気になる人はぜひチェックしてみて欲しい。

相鉄・東急直通線で新「二区間定期券」の登場はあるか

画像は7社局連名のリリースから。西武鉄道は相鉄新横浜線・東急新横浜線との直通運転は行わない

ここで気になるのが2023年3月開業予定の相鉄・東急直通線だ。

西谷~新横浜間は「相鉄新横浜線」、新横浜~日吉間は「東急新横浜線」となり、相鉄沿線民は新横浜から東急線経由で武蔵小杉や目黒に向かえるようになる。

相鉄沿線から東急線への乗換が2種類の経路で可能になると、何が起こるか。たとえばこれまで横浜で相鉄線に乗り換えていた人が相鉄・東急直通線経由の定期券に切り替えた場合、横浜が定期券の区間から外れてしまうので「休日は横浜にお出かけ・お買い物」といった需要が拾いづらくなる。

相鉄の2020年3月期決算説明会資料には「特殊2区間定期券の検討……直通線の定期券で相鉄新横浜駅の利用を可能とする定期券の導入検討」という文言がある。相鉄・東急直通線の開業を機に、通勤は直通線で、休日は本線で横浜へ行けるタイプの定期券が出る可能性は十分に考えられる。

相鉄「2020年3月期決算説明会資料」から

2019年11月に開業した相鉄・JR直通線と来春開業の相鉄・東急直通線が「どちらも使えます」という二区間定期券も面白い。ただこの場合は「相鉄横浜駅の利用を可能とする定期券」にはあたらないので、見込みは薄いかもしれない。

© 株式会社エキスプレス