佐々木朗希の攻略は「まず球数投げさせろ」 元燕の名手が説く“野村ID”的アプローチ

ロッテ・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

ノムさんならどんな策を? 飯田哲也氏の想像は「球数を投げさせろ」

10日のオリックス戦(ZOZOマリン)で28年ぶり・史上16人目の完全試合、日本タイ記録の19奪三振、従来の日本記録を大幅に塗り替える13者連続奪三振を記録したロッテ・佐々木朗希投手。夢物語だが、2020年2月に死去した野村克也氏の“ID野球”をもってすれば、攻略も可能だったのだろうか。元ヤクルト外野手で野村氏の“秘蔵っ子”の1人である野球評論家・飯田哲也氏が分析した。

ノムさんが相手チームの監督だったら、佐々木朗攻略のためにどんな策を授けるだろうか。「まずは『球数を投げさせろ』ですかね……」と飯田氏は想像する。

確かに、9回105球で完全試合を達成した佐々木朗だが、プロ入り後は慎重に、少しずつ投げる体力をつけてきたとあって、100球超えは1軍デビュー戦の昨年5月16日・西武戦(ZOZOマリン)で107球を投じて以来、2度目に過ぎない。ファウルで粘って球数を投げさせるのは、理にかなっている。

ただ10日の佐々木朗は、それすらも難しい剛球を投げていた。飯田氏も「ストレートの最速が164キロ、平均でも159キロ出ていましたから。そんなピッチャー見たことがありません。コントロールもよかった。あの調子なら、オリックス・山本由伸の好調時より上。(球界で)断トツではないでしょうか」と感心しきりだ。「僕もできることなら打席に立ってみたい。僕ならバットを振るのではなく、チョコンと当てるだけ。せめてファウルにできればいいけれど……当たらないかもしれません」と苦笑した。

セーフティバント、タイム、立ち位置を変える…「あらゆる手を使う」

ファウルにもできないとなれば、打者は佐々木朗にどう立ち向かえばいいのか。飯田氏は「セーフティバントの構えをしたり、実際にやったりして、投球フォームのバランスを崩させる。あるいはちょっとずるいですが、タイムを取って間を外す。気持ち良く投げさせてはダメ。リズムを変えるために、あらゆる手を使うべきだと思います」と言う。

投手に余計な神経を使わせるためなら、打席中に投手方向へ出たり、捕手方向へ下がったり、ホームベースへ近づいたり、離れたりと、立ち位置を変える手もある。「僕も現役時代、カウント3ボールから四球狙いで立ち位置を変えたことがあります」と飯田氏。その時は相手捕手から「変なことをするんじゃねえよ」と声が飛んだそうだが、「相手が気にしている証拠。それで良かったんですよ」とうなずく。

10日の佐々木朗は105球中、ストレートが64球を占め、変化球はフォークが36球、カーブが3球、スライダーが2球だった。「普通は割合の高いストレートにタイミングを合わせた上で、変化球にも対応しようとしますが、佐々木朗に限っては、比較的球速の落ちるフォークに合わせるのも手かもしれません」とも飯田氏は見た。

佐々木朗が好調だった場合、データや投球フォームの癖から球種を探ることもほとんど無意味だ。飯田氏は「オリックスの打者がストレートに狙いを絞って打っても、前へ飛んでいなかった。傾向もへったくれもない。データを上回る投球でした」と脱帽した。

今季、毎週日曜日に先発してきた佐々木朗の次回登板は、17日の日本ハム戦(ZOZOマリン)と予想される。「球界屈指のミートの巧さを誇る近藤(健介)君との対決が今から楽しみです」と飯田氏。「いつかは全アウトを三振で取る、1試合27奪三振を見てみたい」とも。20歳の“令和の怪物”が次に何をやってのけるのか、もはや想像もつかない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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