まさかの借金「11」、阪神が巻き返すには? 名コーチが読み解くセ・リーグの戦局

阪神・矢野燿大監督【写真:荒川祐史】

鈴木誠也が抜け厳しい戦いが予想された広島が単独首位

プロ野球のペナントレースが開幕しセ・リーグもある程度の戦い方が見えてきた。巨人が開幕ダッシュに成功し、阪神はリーグ最長の開幕9連敗を喫するまさかの事態も起きた。南海、近鉄で通算2038安打を放ち名球会入りした野球評論家・新井宏昌氏は「前評判を踏まえると広島が一番いいスタートを切った」と、現時点での戦いぶりを語った。

リーグ3連覇から3年連続Bクラスの広島は、主砲の鈴木誠也がメジャー移籍したことで厳しい戦いが予想されていた。だが、蓋を開ければ開幕カードのDeNA戦、次カードの阪神戦を全勝し開幕6連勝。中日には3連敗を喫したが、その後は大崩れすることなく、単独首位に立つなど勢いが止まらない。

「チームの前評判は悪かったが開幕から大瀬良、森下と続けて投げさせた。これは少し驚いたが、勝ちたい投手を続けて起用した。そして、上本に代表されるように日替わりで活躍する選手が出ることで流れを掴んだ。昨年最多勝の九里、左の床田と先発陣が好スタートを切ったことも良かった」

チーム本塁打はリーグ最少の4本だが、打線が繋がりリーグトップの打率261、73得点をマークしている。「上本らが日替わりで活躍し、それぞれの選手が順番に働いている」と一発に頼らない打撃を評価した。

さらに新井氏はかつての守護神・中崎の復活も大きいと見ている。6日の巨人戦でこそ吉川に逆転2ランを浴び敗戦投手となったが、チーム最多の8試合に登板。「今年はボールの力も徐々に戻ってきている。首脳陣も勝ちパターンとして起用しているのが信頼している証拠」と、守護神・栗林と共に“勝利の方程式”として機能していることを好調の要因にあげた。

2位の巨人はエース・菅野が不安要素「絶対的な投球がまだ見えてない」

2位の巨人は両リーグトップの19本塁打をマークするなど、強力打線が復活。吉川、坂本、4番の岡本和が好調で、中田翔や下位打線に座る丸ら、どこからでも点が取れるのが大きい。唯一の不安要素として挙げるのはエース・菅野だ。ここまで3試合に登板し2勝をマークしているが、「絶対的な投球がまだ見えていない」と、大黒柱の復調が必要不可欠と見ている。

昨季日本一に輝いたヤクルトは開幕3連勝と絶好のスタートを切り、ここまで3位とまずますの成績。だが、打率.343、4本塁打のサンタナが離脱し、奥川も1試合を投げたところで抹消。左腕・高橋がここまで3戦2勝、防御率0.84と一人立ちの気配を見せるが、小川、石川のベテラン勢が不調で「先発が心もとない。奥川の早期復帰と先発ローテを整備できるか」と連覇に必要なポイントを指摘した。

DeNAは新型コロナウイルスの感染者が続出。8日からの中日3連戦が中止と思わぬ事態となったが、「ソト、オースティンの不在が響いている。2年目の牧や宮崎らもいるが、打線で投手をカバーするチーム。両外国人の復帰が必要」。ベストオーダーをいつ組むことができるかが復調のポイントになりそうだ。

立浪新監督を迎えた中日「監督、コーチが新しくなり打撃スタイルが変わった選手が多い」

立浪新監督を迎えた中日は勝率5割とまずまずのスタートを切った。先発陣には大野雄、柳、小笠原に2年目の高橋宏が加わり、中継ぎ陣もある程度計算できる状況。課題は打撃で「監督、コーチが新しくなり打撃スタイルが変わった選手が多い。もう少し時間が必要だが、それが身になり上手くつかめば面白い打線になる」と期待を込めている。

両リーグ最速の10敗を喫するなど、浮上のきっかけをつかめない阪神。新井氏はヤクルトとの開幕戦で7点リードからの大逆転負けを喫したことが全ての元凶と見ている。まだ開幕して間もない時期で借金「11」はかなり厳しい状況だ。

「心配する要素はスアレスが抜けた抑えぐらいだったが……。色々と不安のあった藤浪に勝ちがつかなかったのが痛い。もし1勝していればその後の展開は変わった。昨年の勝ち頭だった青柳が戻ってきて、先発投手陣が整備されれば。色々と過去のデータを言われるが、優勝できない訳じゃない。借金11は苦しいことに違いないが、地道に戦っていくしかない」

昨年はスタートダッシュから前半戦まで、圧倒的な成績を残した阪神が終盤に大失速。ヤクルトが大まくりを見せた。圧倒的な戦力を誇るチームがいないだけに、セ・リーグはまだまだ分からない。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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