阪神浮上の鍵は「ムードメーカー」 優勝予想した評論家が提言「雰囲気が良くない」

阪神・矢野燿大監督【写真:荒川祐史】

元ヤクルト外野手・飯田哲也氏「まだ残り130試合近くある」

1勝12敗1分けで最下位を“独走中”の阪神(11日現在)。2年連続2位で開幕前の下馬評が高かったが、よもやのスタートとなった。かつてヤクルトの名外野手として活躍した野球評論家・飯田哲也氏も、阪神の優勝を予想していた1人。今なお「残り130試合近くある。まだまだ巻き返せるし、優勝の可能性だってあると思っている」と語る。その“条件”とは──。

「とにかくベンチの雰囲気が良くない。負けが込んでいるからそう見えてしまう、という部分もありますが、先制点を取られただけで『今日もまた負けじゃないのか』という雰囲気が漂っているように見えます」。飯田氏は第一にそう指摘する。

そこで求められるのが、ムードメーカーだ。例えばソフトバンク・松田宣浩内野手のように、大声を張り上げチームを牽引する選手である。「プレーも大事ですが、ベンチのムードを変えるのも大事。今の阪神には、元気を出して盛り上げる選手がほしい。それだけでベンチに入れてもいいくらいですよ」と飯田氏は言う。阪神はおとなしい選手が多いといわれるが、「選手にいないのなら、コーチでもマネジャーでも通訳でも構いません」とまで力説する。

戦術的には、リリーフ投手陣の“勝ちパターン”確立が急務。飯田氏は「最大の誤算は開幕戦ですよ」と振り返る。3月25日のオープニングゲームで、ヤクルトに7点差をつけながら追い上げられ、最後は新守護神のカイル・ケラー投手が大炎上し逆転負け。ケラーは2度目の登板となった3月29日の広島戦でも、1死しか取れずにマウンドを降り、早々と2軍落ちした。チームはリリーフ陣の再編を余儀なくされている。

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

佐藤輝&大山の左右の長距離砲は順調な滑り出し

「8回は誰、9回の守護神は誰と、きっちり決めた方がいい。そうでないと、ブルペンで準備する投手も不安だと思う」と提言する。負け試合が続いているため、継投も苦労しているようにみえる。そんな中で10日、本拠地・甲子園球場で広島に0-1と惜敗したものの、先発のジョー・ガンケル投手から球威十分の湯浅京己投手、経験豊富な岩崎優投手へとつなぎ、それぞれ1回無失点で締めたのは光明と言える。

「阪神に優勝争いができる力があるのは間違いない」と飯田氏。2年目の佐藤輝明内野手を開幕から4番に固定し、7番スタートだった大山悠輔内野手も5戦目から5番に昇格。左右の長距離砲が並び立っている。ともに2本塁打を放つなど順調な滑り出し。先発投手陣もそれほど悪くはない。昨年最多勝で開幕投手を務めることが決まっていた青柳晃洋投手が、新型コロナウイルス陽性で急きょ回避する誤算はあったが、代役を担った藤浪晋太郎投手が7回3失点と試合をつくった。

また、矢野燿大監督はキャンプイン前日、今季限りでの退任を明言した。長いプロ野球の歴史でも異例のことだが、飯田氏は「矢野さんは覚悟を示した。僕は“あり”だと思っています。結果的に出端をくじかれてしまったけれど、監督が来年替わるから今年は言うことを聞かない、なんていう選手はいるはずがない」と前向きに評価する。「まだいける」と強調する飯田氏。目覚めのきっかけさえつかめば、猛虎に戻れるはずだ。(Full-Count編集部)

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