ジョーイ・ロガーノとの最終周決戦を制し、ウイリアム・バイロンが今季2勝目/NASCAR第8戦

 2022年のNASCARカップシリーズ第8戦としてマーティンスビルを舞台に開催された『Blue-Emu Maximum Pain Relief 400』は、シーズン開幕序盤の展開と同様にふたたびヘンドリック・モータースポーツ勢が席巻。第5戦勝者でもあるウイリアム・バイロン(シボレー・カマロ)が最後のリスタートと白旗ラップでのミスを乗り越え、0.526マイルのショートトラックでジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を0.303秒差で降し、今季2勝目を飾っている。

 トヨタ勢の完勝に終わった前戦リッチモンドを経て、舞台はサタデーナイツ・イベントのマーティンスビルとなり、2戦連続ショートオーバルでの勝負が繰り広げられた。

 ここで速さを見せたのは、同トラックを大の得意とするシボレー陣営のトップチームで、今季より導入の新車両規定“Next-Gen”でもいち早くセットアップの最適解に辿り着き、2020年シリーズチャンピオンのチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がプラクティス最速の勢いそのままに、予選ポールポジションを獲得してみせた。

 そのまま土曜夜に迎えた決勝序盤でも優位を保ったエリオットは、スタートから185周ものリードラップを記録し、両ステージを制覇。しかし、最後のステージブレイクを経てリーダーの座を引き継いだのは僚友バイロンで、最終ステージの途中でアンダーグリーンのピット作業を実施するまで118周の間、トップランをキープする。

 その後、前戦勝者デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)がピットロードでスタックし、この日3度目のコーションが発生すると、バイロンは325周目のリスタート後もレースの主導権を維持。ロガーノをパスして2番手に浮上してきたオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)を従え、さらなるリードラップを刻んでいく。

 そして393周目にこの日最後の、そしてマーティンスビル史上最小となる4度目のイエローを終えると、400周レースは残り2周の“延長戦”へと突入する。ここで「幸いなことに僕らはステイアウトが選択できて、積極的に勝ちに行くことができた。タイヤにふたたび熱を入れたときに『大丈夫』だと感じたんだ」と語った首位バイロンは、ホワイトフラッグが振られた最終ラップの「ターン3とターン4でタイヤを滑らせる」ミスを犯しながらも、2番手追走のフォード・マスタング22号車を振り切ることに成功。2022年1番乗りで、複数勝利を挙げたドライバーとなった。

「最後のコーション(393周目にトッド・ギリランド(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)がターン4のウォールに接触)では、僕の背後にいるみんながピットに入ると思っていたんだ」と、最終的に403周中212周の最多リードを記録したバイロン。

■ファイナルラップでボトム(ライン)を開けてしまったときは「焦った」

プラクティス最速の勢いそのままに、ポールウイナーとなった2020年チャンピオンのチェイス・エリオット(Hendrick Motorsports/シボレー・カマロ)
0.526マイルのショートトラック戦、マーティンスビルは”Saturday Night’s”イベントとして開催された
ここマーティンスビルを得意とするHendrick Motorsports勢は、単一トラックでカップ通算10000ラップリードの新記録も樹立した
チームとしての苦戦が「受け入れ難い」と語ったデニー・ハムリン(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリ)に対し、カート・ブッシュ(23XI Racing/トヨタ・カムリ)がトヨタ最上位の6位、カイル・ブッシュ(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリ/左)が7位に
最後の勝負でウイリアム・バイロンとの接触もあった2位ジョーイ・ロガーノ(Team Penske/フォード・マスタング)は「彼のマシンは頑丈だから、もう少しハードに行く必要があったね(笑)」

「背後にいるロガーノはグリッド上でもっとも攻撃的なドライバーのひとりだから、最終ラップでタイヤを“チャタリング”させ、ボトム(のライン)を開けてしまったときは焦ったよ。でもコーナー出口でうまくラインを抑え、なんとかブロックすることができたんだ」と明かしたバイロン。

 これで木曜夜のNASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズでも勝利を挙げ、両シリーズ制覇を成し遂げた男が、カップシリーズ通算4勝目、マーティンスビル初優勝を手にし、レース全体を通して両親をピットボックスに招いていた絶好の機会に、待望の今季2勝目を飾る結果となった。

「この優勝を母に捧げたい。昨年の同じ週末、彼女は一種の発作を起こして脳腫瘍と診断されたんだ。彼女がここにいることは多くのことを意味し、最後はコクピットにも母がいてくれるような気さえしたよ。皆さんのサポートに心から感謝し、母と勝利を分かち合えるこの素晴らしい瞬間を楽しみたいと思う」

 一方、惜敗の2位フィニッシュとなったロガーノは、2022年開幕前の“Next-Gen”初レースとなったエキシビジョン戦を制してはいるものの、公式戦ではこの結果により37戦連続未勝利の記録を継続することとなり、実際「複雑な感情が渦巻いている」と、その心情を吐露した。

「最後のリスタートで最前列に並び、ウィリー(バイロン)はターン4を“台無し”にして僕を彼のところに近づけてくれた。それでも彼はブレーキチェックで本当に良い仕事をした」と最後の勝負を振り返ったロガーノ。

「彼は実際、鋭いターンインを見せていたし、僕を彼の後ろに詰め込みラインチェンジも加速勝負も許さなかった。僕のクルマは堅調に推移したが、勝利に近づきながらそれを実現できないのは最悪だ。2位でも“最低の気分”になるときはある。今日はもう……それだけさ」

 3位ディロンに続き、今季の“予選最速男”ことライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が4位、そして『台風の目』となっている第6戦ウイナーのロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)が続くトップ5に。

 デイル・アーンハートJr.のひさびさ復帰参戦に沸いたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第8戦は、チームメイトのタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・GRスープラ)を最後の最後で逆転し、わずか0.677秒差で競り勝ったブレンダン・ジョーンズ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・GRスープラ)が今季初優勝。

 そして前述のとおり完璧なピット戦略で、2016年以来参戦のトラックでも勝利を飾ったバイロンに対し、トヨタ陣営でタンドラTRD Proの2台体制を敷く服部茂章のハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は、タイラー・アンクラムの16号車が10位、チェイス・パーディの61号車が29位でレースを終えている。

最後のピットを前に5周のリードを奪ったライアン・ブレイニー(Team Penske/フォード・マスタング)は4位
ウイリアム・バイロン(Hendrick Motorsports/シボレー・カマロ)が2022年1番乗りで、複数勝利を挙げたドライバーとなった
NASCAR Xfinity Series第8戦は、わずか0.677秒差で競り勝ったブレンダン・ジョーンズ(Joe Gibbs Racing/トヨタ・GRスープラ)が今季初勝利
「トラックの運転も忘れてなかった」と語るウイリアム・バイロン(Spire Motorsports/シボレー・シルバラードRST)が、NASCAR Camping World Truck Seriesでも勝利を挙げた
母のダナ、父ビルとともにカップシリーズ通算4勝目、マーティンスビル初優勝を祝ったバイロン

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