「だるま食堂」惜しまれ閉店 五島、福江大火後から60年営業 “お客さんに感謝したい”

3月末で営業を終えた「だるま食堂」の川原さん夫妻=五島市末広町

 1962年の福江大火後、バラック小屋から始まり60年間営業してきた長崎県五島市末広町の「だるま食堂」が3月末閉店した。
 大火は同年9月26日未明に発生し、市中心部の商店街など約600戸を焼いた。店主の川原一徳さん(69)は当時9歳。両親ら家族と逃げ出し、けがはなかったが、自宅は全焼した。
 父富三郎さん(故人)はバス会社の食堂の料理人だったが、大火を機に独立。区画整理後、現在地に小屋を建て食堂を始めた。
 一徳さんは県外の調理師学校を経て21歳で五島に戻り、手伝ってきた。30歳で店主を引き継ぎ、妻裕子さん(68)らと切り盛り。20席ほどの店は大忙しだったが、高齢化などで客は次第に減少。開業60年を機に閉店を決めた。
 3月の彼岸では、父が眠る墓に報告。この60年、まちの復興からにぎわいなど変遷を見つめてきた。周囲から閉店を惜しまれたが、一徳さんは「ありがたい。お客さんに感謝したい」と語った。

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