新型『トヨタ・カローラGR SPORT TCR』と『フィアット・ティーポTCR』がホモロゲーション取得へ

 南米大陸を代表するカテゴリーとして“世界最速のFFツーリングカー選手権”を標榜するスーパーTC2000(STC2000)で、現在トヨタのファクトリー活動を展開するTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)は、TCR規定を統括するWSCグループが実施したグローバル・ホモロゲーションの承認プロセスに参加。トヨタ・ブランドから新たなTCRモデルとして登場予定の『トヨタ・カローラGR SPORT TCR(仮称)』が、本格的な世界デビューに向け着実に歩を進めている。

 かねてからTGRA主導のプログラムとして開発が進められてきた現地版カローラGR SPORTのTCRモデルは、例年シーズン前に実施されるTCR規定登録車両に対するBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)テストを前に、完全な“フル・ホモロゲーション”取得に向けた審査に臨んだ。

 同じく、イタリアの小規模コンストラクターであるテクノドン・スポーツが開発した『フィアット・ティーポTCR』と同時に、今回ホモロゲ取得プロセスを開始した『トヨタ・カローラGR SPORT TCR』は、すでに“母国”アルゼンチンでシェイクダウンテストを済ませており、この2022年にも南米でのレースデビューが見込まれている。

 一方、こちらは地域ホモロゲーションを取得して地元TCRイタリアなどで実戦経験を積んでいる『フィアット・ティーポTCR』は、ゲストエントリーとしてシングルカー体制を敷いた開発チームだけでなく、2020年にスポット参戦したTCRヨーロッパのエントラントなどをメインにカスタマー活動を活性化させるべく、いよいよ完全ホモロゲーションの審査に臨むこととなった。

地元アルゼンチンでは、STC2000の4冠王者マティアス・ロッシを開発ドライバーに起用する
トリノ近郊に位置するピニンファリーナ所有の風洞で、ダウンフォースとドラッグの係数を評価するテストを実施した

■両車はイタリアでホモロゲーション取得作業を実施

 その両車はWSC技術部門の求めに応じてイタリアに赴き、ピエモンテ州トリノ近郊に位置するグルリアスコにあるピニンファリーナ所有の風洞で、ダウンフォースとドラッグの係数を評価するテストを受け、リヤウイング迎角などを調整可能な範囲で異なる構成に変更し、ライドハイト設定とともにトラック上で再現可能なあらゆる状況が計測された。

 その後、ドイツに移動した2台はバイエルン州レッツに位置するビークルダイナミクス開発支援企業のJS-PE GmbHに送られ、車両を丸ごと回転させることが可能なプラットフォームを活用し、TCR規定ツーリングカーとしての“Centre of Gravity(車両重心位置)”の計測と評価が行われた。

 またその間もトヨタとフィアットのエンジンだけはイタリア・モデナに移送され、オーラル・エンジニアリングが所有する施設でダイナモ上のベンチテストが実施され、このテストから合流するために輸送されてきた『ラーダ・ベスタ・スポーツFL TCR』のユニットと一緒にテストセル内に設置され、出力とトルクの曲線を測定。さまざまな出力構成でエンジンマップをチェックする計測プロセスが実行された。

 そうしたホモロゲーション取得作業が続くなか、2021年はTCRイタリアの数戦にスポット参戦したジョナサン・ジャコンは、自身が開発ドライバーを務めてきた『フィアット・ティーポTCR』でのフルシーズンエントリーを計画しており、2022年のTCRイタリアではこの新型モデルとともにチャンピオンシップを戦うことを表明。

 そのプログラムを遂行するテクノドン・スポーツは、ジョナサンの兄弟であるスティーブも起用し、こちらは既存のアウディRS3 LMSを走らせることで、開発を担った新型TCRサルーンの実戦評価と熟成を進めていく計画だ。

イタリアのテクノドン・スポーツが開発した『フィアット・ティーポTCR』は、2020年から地域ホモロゲで実戦経験を積む
車両を丸ごと回転させることが可能なプラットフォームを活用し、TCR規定ツーリングカーとしての“Centre of Gravity(車両重心位置)”の計測と評価が行われた

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