F1併催アルバートパークのスプリント戦は、王者SVGとWAUのモスタートが各2勝を記録/RSC第3戦

 4月7~10日にアルバートパークで開催されたF1第3戦オーストラリアGPとの併催イベントとして組み込まれたRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ第3戦『Beaurepaires Melbourne 400』は、各20周スプリント4戦の変則フォーマットでの開催に。

 世界からの視線が南半球に集まるなか、TCRオーストラリア2代目王者チャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド(WAU)/ホールデン・コモドアZB)と、2021年に自身2度目の戴冠を果たしたレッドブル・アンポル・レーシングのディフェンディングチャンピオン“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)の実力者ふたりが、それぞれ2勝ずつを手にする結果となった。

 フェルナンド・アロンソとセルジオ・ペレスが、恒例となるF1スターによるスーパーカー“ゲストドライブ”を終えたあと、週末最初のヒートを前に引き続きの予選セッションが実施され、ここでも強豪シェルVパワー・レーシングのアントン・デ・パスカーレとウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)/フォード・マスタング)が連続ポールポジションを獲得。

 すでに木曜時点で今季6人目のポールシッターとなっていたデビッド・レイノルズ(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)と、レース2向けの予選でも最速をマークしたデイビソンを含め、レイアウト改修を受け「より高速でワイルドになった」アルバートパークで、マスタングが予選全セッションを制圧する速さを見せた。

「プラクティスを終えた後は少し“迷子”になっていたが、クルマに施した微調整がうまくハマってくれた。僕自身、予選は98%のラップだったけど、最前列を確保するのに充分なタイムになってくれた」と、自身2019年以来、そしてグローブ・レーシング移籍後初のポールポジション獲得となったレイノルズ。

 しかしF1関係者が見守るオープニングヒートで主役を演じたのは、ポールシッターのレイノルズではなく8番手発進となったモスタートで、スタートからペンライト・レーシングのマスタングに迫るジャンプアップで2番手に躍進すると、3周目には早くも首位を奪取する勢いを見せる。

各イベント開催地で精力的にテストを重ねる、2023年導入予定の“Gen3”車両を、F1を率いるステファノ・ドメニカリCEOも視察した
予選ではシェルVパワー・レーシングのアントン・デ・パスカーレとウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)らを中心に、マスタングが速さを見せた
週末オープニングヒートに向け、2019年以来のポールポジションを獲得したデビッド・レイノルズ(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)

■「このカテゴリーで勝つ瞬間は、いつだって素晴らしい」とモスタート

 義務ピット消化後には3番手でコースに復帰したモスタートが、早めにハードコンパウンドからソフトへとスイッチしアンダーカットを狙っていた2台のシェルVパワーマスタングを追い詰めていく。よりフレッシュなラバーで優位に立ったWAUのエースは、そのままデイビソン、パスカーレを立て続けに仕留め、最終的に7秒以上のマージンを築いて独走での今季2勝目を飾った。

「このカテゴリーで勝つ瞬間は、いつだって素晴らしいんだ! クルマはますます速くなったし(全ヒートでポイント圏外に終わり)失意に沈んだタスマニアのあと、チームのクルー全員とトロフィーを掲げられるのは最高の気分だね」とモスタート。

 一方、その後もDJRの2台はソフトタイヤのデグラデーションに苦しみ始め、タイムを大幅に失ったデイビソンは緊急ピットを余儀なくされ、パスカーレはパンクにより完全にエアを失ったタイヤでフルラップ完了を余儀なくされ万事休す。

 この結果2位にはレイノルズが返り咲き、背後の3位にはなんと予選時のレッドフラッグによりタイム計時が叶わず、24番グリッドからの巻き返しを強いられていたSVGが驚異のカムバックを披露。チームの“コール”もハマった王者は、強力なレースペースも活かして最後のポディウムを射止める見事な“リカバリー・ドライブ”を披露した。

 明けた土曜に実施された2ヒートでは、まずデイビソンが順当にポール発進を決めたものの、前日にグリッド後方から怒涛のスパートを成功させたトリプル・エイトのチャンピオンが、3番グリッドから悠々と主導権を奪う展開に。

 2周目には早々と首位を奪ったSVGは、背後で発生したアンドレ・ハイムガートナー(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)と初代TCR王者ウィル・ブラウン(エレバス・モータースポーツ/ホールデン・コモドアZB)のアクシデントによりセーフティカーが出動する展開にも助けられ、レイノルズとその僚友リー・ホールズワース(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)従え、まずは週末最初の勝利を確保した。

初戦をモノにしたチャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/ホールデン・コモドアZB)だが、実質最後尾スタートのSVGが3位表彰台にカムバック
R2でウォールに押しやられた形のアンドレ・ハイムガートナー(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)「お互いにヒットするのは仕方ないが、誰かをフェンスの餌食にするのはバカげている」
R2ではキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)と絡むアクシデントで、ふたたび勝機を逃したウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)

■最終ヒートのレース4はSVGとモスタートによる一騎打ち

「デイブ(ウィル・デイビソン)の前に出た後は、自分のソフトタイヤを守ることだけに集中したが、ラッキーなことにセーフティカーの助けも得て、リスタート後は意識してファステストラップを刻み、コントロールすることができたよ」とレース2を振り返ったSVGは、続くレース3でも同じくデイビソンを捉え、悠々とキャリア通算60勝目を手にした。

「正直、今日の僕のクルマはまるでロケットだ(笑)」と、笑顔を見せたSVG。「レッドブル・アンポル・レーシングのみんなには感謝しても仕切れないね。今週末はとても楽しいよ。僕はただプッシュに次ぐプッシュを続ければ、それで良いレースができる。この(改修された)トラックは、オーバーテイクしやすくレースに向いているね!」

 そして週末最終ヒートを迎えた日曜レース4は、ふたたび最前列から出たDJR艦隊がタイヤロックアップなどでダメージを負い序盤のストップを強いられると、SVGとモスタートによる一騎打ちの様相に。

 しかし終盤のターン9でまさかのブレーキングミスを犯したSVGは、自身もタイヤダメージからピット帰還を余儀なくされることに。これで敵の消えたモスタートが2台のシェルVパワーマスタングを従え週末2勝目。一方、キャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)を追走していた5番手レイノルズも、ターン8で「左フロントに異変が生じ」コースオフを喫し、週末最多得点者の称号をこのヒート20位に終わったSVGに譲る結果となった。

 これでポイントスタンディング上でも、2番手パスカーレに対し144点ものリードを築いたSVGだが、続く第4戦『Bunnings Trade Perth SuperNight』は4月30~5月1日の週末に、同国西部パース近郊に位置するワネルー・レースウェイでナイトレースが争われる。

最終ヒートもアクシデントが相次ぐなか、マーク・ウインターボトム(チーム18/ホールデン・コモドアZB)らがトップ10に喰い込んだ
予選で速さを見せたDJR勢だが、タイヤの摩耗に苦しみレースペースは伸びず。「現状、出来ることはやり切った」
「まだやるべきことがいくつかあるが、今週末に2勝するのは素晴らしいこと」とモスタート

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