第45回「月光仮面」

駒込のさるお寺でイラク戦争に関する反対集会が開かれたとき、かの川内康範さんの隣席に座らせてもらったことがある。 川内さんについては書き始めたら数十冊の本になるくらいの人物。先のグリコ森永事件でも、新聞に一面広告をあげてしまうほどの熱血漢。森進一の「おふくろさん」を始めとして大ヒット曲は数知れず、憲法9条護持を念じる法華宗の信者。 そしてかの『月光仮面』の作者である川内さんが、その話に触れたとき、自分の顔を見つめながら、「月光菩薩のお手伝いをする者として『月光仮面』をつくったんですよ」と語ったときの鋭くも優しい目元が忘れられない。 リアルタイムで『月光仮面』をテレビで見ていた自分は、そのシリーズのあとの『七色仮面』なども見させてもらっていたが、なんといっても、『月光仮面』のあとにきた番組が『アラーの使者』だから、いまだったらまず放映はできないだろうと思ってしまう。 太陽は災いをもたらすだけと、月をシンボルとするアラブの思いを色濃く主張する『月光仮面』とともに、こんな番組を少年少女に提供する川内康範さんの暴れっぷりが懐かしい限りだ。 そんな川内さんが国連の査察報告に話がもつれ込んだとき、マイクを手に持ち声を荒げて語ったのは、「先日、フセインに査察を受け入れろと手紙を書いた。そうすればブッシュのたくらみもすべてが明るみに出るのだから」と呆気に取られて話を聞いている自分らをよそに「そしてこの前、わかったと返事が来たばかりだ」とマイクを置いた。 どうリアクションして良いのか、もしここでマイクを渡されたら、川内さんも含めてどうコメントしたら良いのか、もう頭がバトルロイヤル状態。 そんな混乱の中でお開きとなり、川内さんのほうから手を差し出してくれ、熱い握手を交わせたのはいまとなっても貴重な体験だったと感謝するのみ。 駒込を離れ、仲間たちと合流したときも第一声は、「おい、“月光仮面”と握手してきたぞ」と…!

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