【MLB】鈴木誠也の2打席連発導いた思考 試合中の“取捨選択”と試合前の“意思疎通”

カブス・鈴木誠也(左)とグレッグ・ブラウン打撃コーチ(中央)【写真:木崎英夫】

平凡な右飛に倒れた1打席目の犠牲で得た打感で放った2号ソロ

■カブス 2ー1 パイレーツ(日本時間13日・ピッツバーグ)

カブスの鈴木誠也外野手が12日(日本時間13日)、敵地でのパイレーツ戦に「5番・右翼」で先発出場。2試合連続となる2号先制ソロ、3号ソロと2打席連続アーチを描く大活躍を見せた。試合は鈴木が叩き出した2点をカブス投手陣が守り抜き、2-1で競り勝った。

初の敵地で躍動した。パイレーツの本拠地PNCパークの試合開始時の気温は約19度。右中間スタンドの後方を悠然と流れるアルゲニー川からは、春先に見舞われる強風が吹くことはなかった。「本能」と呼ぶ打席での感性を生かし、日本時代に真骨頂とした右中間への2号ソロを放ったのは、5回の第2打席だった。カウント3-2からの6球目、真ん中高めの146キロ直球を捉えた。

「(直球は)映像だときれいに見えていたんですけど、若干ちょっとインサイド、カットというか、ナチュラル的に入ってきていたので。思ったより差し込まれた部分があったので、そこは2打席目はしっかり対応できたのでよかったかなと思います」

情報は詰め過ぎない。先発として初体験の左腕投手ホセ・キンタナの直球、スライダー、チェンジアップの球筋だけを映像チェック。だが、きれいな順回転のイメージが残った直球は、いざ打席に立つと小さく切れ込んでくる厄介な球だった。平凡な右飛に倒れた1打席目の犠牲で得たその打感でタイミングを計った。

ブラウン打撃コーチのアドバイスも後押しした3号ソロ

決勝点を叩き出した2発目は、直前の情報を打席で反映させた。7回、先頭で対峙した2番手の長身左腕アンソニー・バンダは150キロ台後半の直球が武器。「早いカウントで仕掛けていかないと、チェンジアップがいいので厳しいかなというのがあった」。2球目の直球を芯で捉えると、打球は西日を受けた左翼スタンドに着弾した。

両方向への豪打は、グレッグ・ブラウン打撃コーチのアドバイスも後押ししている。試合前の打撃練習で、これまでにはなかった身振り手振りを入れた意見交換をおこなう姿があった。

同コーチに聞くと、

「セイヤが何を考え、どんな感触を得ながらバットを振っているのかを知りたかった。もちろん、僕が注意して見ている点の確認もした。来るボールに対して体が迎えにいかないこと。そして、フィールドを広角に使って打つということ。もちろん、左肩の開きは禁物という基本的なことも添えたけど、その程度さ。彼は心配不要だ。日々の観察の蓄積が大切なのは言うまでもないこと」

米データサイト「STATS Perform」の公式アカウント「Stats By STATS」によれば、打点が公式記録となった1920年以降で、デビューから4試合で8打点以上&4四球以上をマークした初のメジャー選手となった鈴木。だが、本人いわく「まだ4試合。あと150試合以上あるので。今はいろんなピッチャーに立って、しっかりその日その日、1打席1打席を大切にやりたいと思います」と先を見つめる。

事前情報の取捨選択と打席での対応力、そしてコーチとの意思疎通――。鈴木誠也は確かなリズムをつかみ出している。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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