TRF・DJ KOO インタビュー ④ 国民的大ヒット trf から昭和ジェネレーションパラダイスへ  キラキラした時代を駆け抜けた人たちといい音楽を共有して元気なイベントを作りたい

__第4回 DJ KOOのスタンス。アフリカの空に響く「川の流れのように」__

TRFのDJとしてのスタンス

― KOOさんにはDJが裏方という意識もあったと思います。それがDJというスタンスのままでバラエティ番組などにもたくさんお出になるようになって…。TRFの国民的ヒットからご自身のスタンスが変わっていった部分はありますか。

KOO:やはり、クラブのDJをずっと仕事にしてきて、小室さんもその辺を理解してくれていて、「KOOちゃんの仕事というのは1時間なりのパートの中で選曲をして、お客さんを躍らす踊らすことだと思うけど、1曲3分の中で、どうにかDJの良さを出してくれ。それを考えて」という風に言われましたね。だから僕は裏方の楽曲制作に携わりながら、曲が出た時点で僕の仕事は完成してる意識だったんですよ。それが今度、楽曲が出来上がった上で何をやるかというのがテーマでしたね。パフォーマーとして。小室さんにそれを言われて実際にパフォーマーとしてのDJがメンバーにいることで、最初は「あいつ何やってんだ?」ってさんざん言われて、「いや、何もやってないよ」って言うしかなかったんで(笑)。
それでも小室さんのアドバイスから派手な格好にしたりとか、機材で見せるとか考えていきましたね。でも言われてみたらそれが2015年ぐらいからEDMが流行って、エレクトリック・ダンス・カーニバルだとかが世界的に何万人も集めてやっていくDJフェスも主流になって、まさにDJが先導者となってやってるスタイルですよね。僕はそれをTRFでずっとやってきたんで、そこは良かったんだと思います。

一番のこだわりは現場のDJであるということ

― やはり、KOOさんが新宿でDJをやられていた時など、ディスコではスターだったけど、世の中的には全然認知がなかったということですよね。

KOO:そうですね。全然なかったと思います。

― そんな状況からKOOさんがDJという存在を世の中に広めていったと同時にDJカルチャーもどんどん認知されていくという。

KOO:そこにまだ自分のカッコつけてる部分とか変なこだわりがあって…。一般の人に「あいつ何やってるんだ?」と言われるのはいいんですが、一番嫌だったのは、同業者のDJに「何もやってないじゃん」と言われたことですね。
でもそうじゃなくてTRFのパフォーマーとしてヴォーカル、ダンサー、DJのユニットなんだぞ、というような全体の見え方から自分のポジションはここにあるんだという意識になりました。で、自分が実際にDJの活動をする時は、TRFとは違った居場所がありました。

― KOOさんはTRF以降もご自身でミキシングしたCDをたくさん出されていますよね。そこはTRFと同じスタンスだったのでしょうか。

KOO:そこはTRFというより、一個人のDJとしてのスタンスですね。ずっと現場のDJであるというのが僕の一番のこだわりでもありますから。なので、現場でお客さんとコール&レスポンスしつつ、リアルタイムに選曲をしていきながら昔の曲ばかりかけるのではなく、昔の曲から今の曲までをお客さんに合わせて選曲して、他のどのDJよりもピークを高く持っていけるっていうのをやり続けていかなくてはと思います。
キレイにワンパートを繋げてお客さんが気分良く踊れるというよりも、誰よりも高いピークを作ってお客さんを盛り上げていかなくてはならないと思っています。

― それは新宿のディスコ時代から変わっていないKOOさんの心の部分ですよね。

KOO:だから、僕、還暦になって、年取ったDJがやっていてどうなのかな? とか、自問自答はしますけど、自分の強みって、40年前から煽ってお客さんを盛り上げていくスタイルがあったんです。それだけやってきているから、自分は強いはずだし、そこを信じてこれからもDJをやっていこうという気持ちですね。

新たな挑戦「オドレーJAPAN!」

― そのスタンスの中、先日も「オドレーJAPAN!」をリリースされて、ここでも昭和から平成にかけてのヒット曲をミックスしたというのもそのような気持ちで。

KOO:まさにお客さんがフロアにいる感覚で楽しめる選曲ですよね。いろいろな時代の曲が入っているのですが、DJとして楽曲を繋ぐのであれば、同じテンポのものを繋いだ方が楽なんです。あと同じ時代のもを繋いでいったほうが楽なんです。だから「オドレーJAPAN!」は新たな挑戦でしたね。

― 選曲がDJの目線だと感じました。

KOO:そうですね。DJというのはグルーヴを作らなくてはいけないので、楽曲を繋げていく中で、これはこのジャンルで繋げられるかな? というパターンを2、3曲で作りながらグルーヴを作って展開させていく。だから最初に選曲する時にブロック分けをしながらストーリーを作っていきましたね。

― ちなみにディスコ時代は事前に曲の順番を考えていたのですか。

KOO:考えてないです。当時はPCでやってないし、まずはレコードを探すところからですね。次何をかけようかな? と考えながらレコードをDIGってましたからね。
かけながらお客さんの反応を見て考えながらでした。

― その時の感覚が今の作品にも反映しているということですね。

KOO:はい。そこは現場で養ったものを無駄にせずやっていくしかないですから。そこが僕の何よりの強みですね。

アフリカで盆踊り。美空ひばりさん「川の流れのように」をリミックス

― KOOさんはディスコカルチャーのスピリッツを今の時代に持ってきているなと思って。それでこれだけ認知されて、ディスコを知らない人にも愛されている。その中でご自身としても今後DJを活動の軸として展開されていくんですね。

KOO:自分がDJ KOOでないとバラエティに出させてもらっても、他のイベントに出させてもらっても成り立たないんですよね。自分の軸があってこそなんです。“タレント DJ KOO” だと僕は弱いですから。DJという核があって出ていくというマインドでいます。
20周年を越してからそういう活動もしていますが、盆踊りとDJのコラボレーションだったり、日本舞踊とDJでコラボしたり、ゲームコンテンツのアイドルマスターとライブをやって盛り上げたりとか…。DJでいるからこそ、あーりん(ももいろクローバーZ)と一緒にライブをやったりとか、DJと一緒にやると、こんなに音楽が楽しくなっていくんだ、元気が出るんだっていうことをやらせてもらっているんで、そこの積み重ねが大きいですね。TRFとは別にDJがいろいろなコンテンツとコラボレートするということですね。
一昨年ですよね、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の広報企画で JICAさんで “アフリカ盆踊り~BON for AFRICA~” というイベントに参加しました。のをやりました。美空ひばりさんの「川の流れのように」の盆踊りバージョンを作らせてもらって、それを持ってアフリカに行って、スピーカーとDJ機材をセットして、アフリカの人たちに盆踊りを踊ってもらいました。
アフリカと日本の親交が目的だったんですけど、その時は絶対、美空ひばりさんの歌でやりたいと思いましたね。
まず何の曲を持ってアフリカの子供たちや人たちに日本の盆踊りを踊ってもらえばいいかなって考えた時、やはり歌心があって、日本人がだれでも愛するっていうところで美空ひばりさんがベストかと。それで美空ひばりさんの楽曲を管理している事務所にお願いして、「親善のためにアフリカに行くんですが、美空ひばりさんのトラックを貸してもらえますか?」ってお願いしてヴォーカルトラックを借りて、リズムを加えてリミックスしたものをアフリカに持って行きました。
それで現地の人がみんな飛びついたんですよね。僕は今まで洋楽コンプレックスがずっとあって、ロックだったらイギリスが強いし、R&Bならアメリカが絶対強いんだって思いがあったんですが、そういう気持ちがなくなりました。
言葉も通じないのにこうやって日本の音楽を受け入れてくれるんだっていうのにグーッときましたね。

― アフリカの人たちにとってはジャンルではなく音楽自体が楽しいってことですよね。その時踊っている人たちの表情や様子を見ていかがでしたか。

KOO:嬉しかったですね。子供の目がキラキラしてましたね。初めて聴く美空ひばりさんの「川の流れのように」の盆踊りバージョン、BON DANCE MIX。踊りの先生に創作日本舞踊孝藤流二代目家元、孝藤右近さんと二人で行ったんですが、彼らの盆踊りの手つきを見て「あ!楽しそう」って思えました。みんなが輪になって踊ってくれたのは本当に嬉しかったですね。それも予定調和が全くなくてルワンダ郊外の農村市場の近くで「この辺でやりましょうか」ってなったんですが、人がウワーって集まってきましたね。
どこまでもバナナ園が続いているような場所で人が集まってくれて、「あーあー川の流れのように~」というメロディをバックに本当に気持ちよさそうに、でっかい空の下で踊ってくれました。
やはり美空ひばりさんは日本の頂点だと思いましたね。

― 新宿のディスコもフロアで踊る人たちってキラキラしてますよね。それを40年続けてらして、それをアフリカでやってしまう…。その子供たちも一生忘れられないと思います。僕もディスコで踊っていたキラキラした想い出というのは一生忘れられないですから。

キラキラ時代を駆け抜けた人たちと共に「昭和ジェネレーションパラダイス」

KOO:全然懐古趣味ではなくて、普段一生懸命仕事をしている人があんな顔して、キラキラして盛り上がるんだっていう瞬間をずっと作り続けてきているんで、それを今にフィードバックさせるというのが僕の使命。本質的な喜びの笑顔は世界中変わらないと思います。

― その笑顔を作るために長い間日々アップデートされているわけですよね。

KOO:そうですね。時代時代の素晴らしさがあると思うし、時代時代の刺激があると思うし、昔の曲を今かけると、最近のEDMとかフーチャーレイヴとかと音が全然違うんですよね。昔のカセットと今のCDの差ぐらいはあります。僕が凄く嫌なのは、音質でテンションが変わってしまうということ。それだけは避けたいなと思っていて。だからJ-POPのイベントで昔の曲をかける時は自分で一度マスタリングし直して、派手な音にして、洋楽と繋げても大丈夫なようにしますね。

― 僕もクラブで音圧の違いはリアルに感じる時があります。そこをしっかりされてというのは本当に職人だと思います。
そして、『昭和ジェネレーションパラダイス』という今回のイベントについてKOOさんからどのようなものであるか教えていただけますか。

KOO:これは、キラキラした時代を駆け抜けた人たちといい音楽を共有して元気なイベントを作りたいなというのをDJ BLUEとずっと話してきたことでした。それを大きい場所でありたいという第1弾ですよね。

― すると、このプロジェクトは今後も継続されるということですね。

KOO:今までもいくつかそういう企画のシミュレーション的なことをやってきたりもしましたが、しっかりと名前を付けて継続させていくスタートだと思っているます。アイデアもいっぱいあるし、聴かせたい楽曲もあります。いろんなコラボレーションもしていきたいと思っています。
今回は早見優ちゃんとHITOMIですよね。そういうキャスティングからも「こんな人とやれたら面白いね」「こんな人にDJ頼んでみない?」みたいに。だから次はどうなるんだろうという期待、エンターテインメントの部分もありつつ、80’S、90’Sの曲で今踊ると新鮮な笑顔が戻ってくる…。そこですよね!

― 昭和とついていながら懐古ではないということですね。

KOO:やっている僕らが懐古とは全然思わないので、その気持ちをストレートに伝えていけばいいかなと思っています。

― シンプルに今のKOOさんをやればイベントが成立するという。

KOO:最近僕はTikTokライブをやってまして、どういうライブかというとDJライブなんです。DJで90年代の曲とか、申請を出し楽曲の使用許可を取りながらTM Network、globe、アユ浜崎あゆみ、倖田來未、それからELTやBOAやm.c.A・TやMAX、もちろんTRFもですが、そういう曲を使って、画面に昔のDJのようにリクエストを募ったら「これかけてください、あれかけてください」ってコメントが入るのでどんどんかけていくんですよ。
TickTokっていうと若い世代のツールかと思いますよね。1回やるごとに1,500人ぐらい新しいフォロワーが増えてくれて。リクエストも「この人のこの曲知ってるんだ」というリクエストが来ます。それは40代、50代の方だと思うんですが、そういう世代がTickTokを使っているんですよね。はたまた、「今子供と一緒に聴いてます」とかメッセージが入ったり。そのおかげで平均して4、5万人の方が見てくれていたりするんですよね。
こういう配信というところでも昭和や平成の時代が新鮮に感じてくれているみたいです。TickTokというツールから発信出来ているものを『昭和ジェネレーションパラダイス』のライブでやった時に、どれだけみんな喜んでくれるんだろう? って考えるとワクワクしますよね。

― 昭和も平成も未体験の人には新しいカルチャーですからね。そこが全面に出ていれば若い人たちも昭和というキーワードの印象が変わってくると思います。

KOO:最近YouTubeやTickTokでも多くの人が昭和歌謡やフォークソングのギター配信をやっているんですよね。特に女性の若い子たちがギターを持って昔の曲を弾き語りするコンテンツが結構あります。
僕もそういう人たちに連絡を取って、「一緒にやりませんか?」みたいなことを何回かやりました。そういう人たちが生まれる前の曲をやってたりとか、そういう昭和カルチャーに若い子たちが手を出している状況が今ありますよね。

― やはり、カルチャーとして輝いていた時代のものというのは時を超えても輝いていますよね。

KOO:だから乃木坂46さんなんかは「乃木坂スター誕生!」で、歌われていた昔の曲をカバーするしている番組をやっているんですが、そこにも出させてもらって、乃木坂の子たちが『EZ DO DANCE』や朋ちゃんの曲なんかをみんなでやったりするんですけど、そこに乃木坂のファンに加えプラス、昭和、平成のファンが食いついて見ていて、そこで僕がコラボさせてもらうことで、親和性ができるんですよね。

― そうすると今回の『昭和ジェネレーションパラダイス』はすごく意義のあるイベントですよね。

KOO:意義ありまよね。ずっと自分がやってきたことを本命の方たちとコラボできるというのは大きな意義ですね。「やっとみんなと会えたぜ!」というような感じですね。

― 今世の中的にも戦争が起こったりとか、コロナの閉塞感があったりとか、そういう最中だからこそKOOさんが打ち出したい部分もあるかと思います。

KOO:笑顔ですね! 笑顔で健康で楽しく過ごすことを何より優先するということを目指していこうよということです。
だから今回のジェネパラは僕の集大成でもあるんです。実際NHKさんのBSプレミアPで『歌える!J-POP 黄金のヒットパレード決定版』と『歌える!J-POP 黄金のベストアルバム30M』という番組でMCナビゲーターをやらせてもらっているんですが、そのシリーズでも昭和や平成のレジェンドの方たちと一緒にやってきたりしているので、現場で歌も聴きつつ、これDJで使いたいなとも思うんです。リンドバーグやジギーを今聴いてもめちゃめちゃカッコよかったりして。先週も収録があったのですが、世良公則さんがめちゃめちゃカッコよくて! そういうところを実際肌で感じています。

― DJには継承する役割というのが凄く大きいと思うんです。

KOO:そこは落語家さんと凄く似ていて、古典落語をしっかり継承しながらも今のスタイルで作品を作り上げていくというのがありますよね。
いろんなジャンルの方とお仕事させていただいてますけど、僕は現場主義だったりするので、実際ジェネパラでその強みを出せると思っています。

(インタビュー・構成 / 本田隆)


4回に渡ってお届けしたDJ KOOさんのロングインタビュー、いかがでしたでしょうか? DJの職人として、タレントとして第一線で活躍する人の凄みと深さ、アティチュードを感じてもらえたらなによりです。DJ KOOさんの集大成、『昭和ジェネレーションパラダイス』楽しみ過ぎます!

カタリベ: 本田隆

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