北朝鮮当局が「半グレ」取締り…反抗的な若者文化を警戒

北朝鮮は、「青年教養保障法」を採択するなどして、若者に対する思想教育に力を入れている。流行に敏感な若者が、外部の「腐った資本主義文化」を国内に持ち込み、体制を揺るがすと考えているからだろう。

だが、法律や思想教育で彼らを縛り付けようとしても、そう簡単にはいかないようだ。最近の北朝鮮での流行について、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市の松坪(ソンピョン)区域の情報筋は、青年同盟(社会主義青年同盟)が先月から、若者の身体に対するある調査と取り締まりを行っていると伝えた。標的とされたのは「タトゥー」だ。

北朝鮮では、個人的な趣味で、腕や胸にタトゥーを入れる若者が少なくないという。かつては、党と祖国に忠誠を誓うなどと言った文字を刻むのが流行していたが、当局は1980年代にこれを禁止、手首など見える部分に入れられたものは強制的に消させた。

だが、今でもタトゥーを入れる若者は少なくなく、専用の機器がないために、針を使って手作業で行う伝統的な手法が使われている。最近では高級中学校(高校)の卒業生が、軍入隊や社会進出を控え、友との別れを惜しみ、友情のために銃や入隊日時のタトゥーを入れる。

また、「半グレ」の若者たちが結束を示し、他グループと区別するためにタトゥーを入れるケースもある。情報筋は、「若者が腕に裸体の女性のタトゥーを入れているのを見かけたことがある」とし、花や男性の顔といったタトゥーを入れた人もいると聞いたと伝えている。

青年同盟の糾察隊は、道端で若者を捕まえて、タトゥーを入れているかの調査を行う。彼らはタトゥーを反社会主義行為とみなし、発見し次第消すように命じている。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の情報筋は、タトゥーに関する調査が初・高級中学校(中学、高校)で行われていると伝えた。情報筋の弟の話として、学校の青年同盟の指導員が、タトゥーがあるかを確認し、もしあれば、今後の大学推薦や朝鮮労働党入党など出世に響くと警告する。

情報筋の通う企業所では、青年同盟の指導員が、裸体の女性や風変わりなタトゥーを入れた若者を裸にして、前に立たせて恥をかかせる手法を使ったとのことだ。

摘発を受けた若者たちの多くは当局に恐れをなし、外から見える部分のタトゥーを消そうとしている。火で炙った鉄製のスプーンでタトゥーを焼いたり、塩酸をかけたりして消すのだそうだが、非常につらいもので、酷い傷跡が残る。

かつて「総爆弾」「決死擁護」「軍人精神」などと言った国家のプロパガンダに用いられている言葉や、国旗や労働党旗のタトゥーは、体制への忠誠心を示すものとして大目に見てもらえた。しかし今回は、そういうものも取締の対象になっているようだ。情報筋は、なぜ急に取り締まりを始めたのかわからないと首を傾げている。

国内の経済状況が厳しさを増すほど、締め付けを強化するのが北朝鮮のやり方だ。今回のタトゥー取り締まりもその一環と思われるが、いくら取り締まってもきりがないのが現実だ。

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