西武松本の2勝目生んだ辻監督の“親心” 「同点にされようが…」続投させたワケ

西武・松本航【写真:荒川祐史】

新庄ビッグボスの積極策を逆手に好投

■西武 4ー3 日本ハム(13日・ベルーナドーム)

西武は13日、本拠地ベルーナドームで行われた日本ハム戦に4-3で競り勝った。先発した松本航(わたる)投手が、7回3失点の好投で今季2勝目(1敗)。7回1死二塁のピンチをしのぎ、チームの大黒柱へ、ひと皮むけるきっかけとなるかもしれない。

ビッグボスこと新庄剛志監督の積極策を逆手に取った。松本は3月30日にも日本ハムを相手に先発(札幌ドーム)。5回2/3、3失点で今季初勝利を挙げたが、イニングを全うできず降板と課題も残っていた。2度目の顔合わせとなったこの日は、前回の対戦で「今年の日本ハムは、初球から振ってくるなど積極性がある」と印象を持ったことから、安易にファーストストライクを取りにいかないよう神経を研ぎ澄ました。4回までは無安打1四球無失点と完璧。味方打線が3回までに4点を先行したこともあって、試合の流れをぐっと引き寄せた。

辻発彦監督も「日本ハムさんが積極的にファーストストライクから打ってくることにも助けられて、球数を少なく済ませることができた。それも初球から腕を振って投げたからこそ」と評価した。

ただ5回には石井に2号2ランを浴び、7回にも再び石井に中前適時打を浴びて、点差はわずか「1」に。なおも1死二塁と1発出れば逆転のピンチを背負った。ブルペンでは水上と平良が肩をつくっていたが、辻監督は強い思いで続投を決断した。

「球速アップ」テーマにしたトレーニングの成果発揮

「投手コーチから、リリーフの準備もできていると言われたけれど、松本はああいう“ひと山”を乗り越えないと、いつまでたってもダメなので。また弱気の虫が出ていると感じさせるところがあって、あそこで替えるのは簡単だけれど、たとえ同点にされようが、あの回までは松本に投げさせるつもりでした」と明かした。

辻監督の“親心”に応え、松本は万波を外角高めのカットボールで三邪飛、続く淺間も内角のカーブで一邪飛に仕留め、同点を許さずにこの回を乗り切った。

松本は2018年ドラフト1位で日体大から入団したが、辻監督は当初から、ピンチを背負うと慎重になり過ぎる傾向に、苦言を呈し続けてきた。昨季は初めて2桁勝利(10勝8敗)を挙げ、さらにオフには「球速アップ」をテーマにトレーニングに取り組んだ。その甲斐があって、この日は最速150キロを3球計測したのをはじめ、ストレートのほとんどが140キロ台後半。平均144.4キロだった昨季を明らかに上回っていた。

今季の西武は年齢の近い高橋、今井、松本が“先発3本柱”として期待されている。蓋を開けてみれば、開幕投手を務めた高橋はここまで0勝2敗。今井は、右内転筋の張りで開幕ローテから外れて2軍調整中だけに、松本に寄せられる期待はなおさら高まっている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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