熊本地震から6年 長崎県近海にも活断層 対馬、壱岐、五島沖に点在

本県近海の海域活断層

 政府の地震調査委員会が先月公表した30年間の「長期評価」で、これまで知られていなかった長崎県近海の活断層の存在が明らかになった。熊本地震の「前震」から14日で6年。今年に入り1月には九州東部で震度5強、3月には東北地方で震度6強を観測するなど強い地震が続く。専門家は「県内でも、いつ地震が起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らす。
 同委員会は3月、日本海南西部(鳥取-長崎沖)にある海域活断層の長期評価を初めて示した。マグニチュード(M)7.0以上の地震が30年以内に起きる確率は8~13%、このうち九州北西の海域を指す「西部区域」(9断層)=地図参照=で、同様の地震が起きる確率は1~3%と結論付けた。

本県近海の活断層について説明する松島教授=島原市新山2丁目、九州大地震火山観測研究センター

 九州大地震火山観測研究センターの松島健教授(固体地球物理学)によると、今回初めて存在が認知された断層もある。西部区域の対馬や壱岐、五島近海に点在する断層。対馬西沖や五島西沖ではこれまで想定されておらず、関係者に驚きを持って受け止められた。このエリアでは2005年3月にM7.0の福岡県西方沖地震が発生し、最大震度6弱を観測。江戸時代には対馬東沖で同規模の地震が発生したと伝わっている。
 松島教授は「新たに危険性が増したのではなく、地震の可能性がある場所や確率が初めて示された」と評価する一方、「1~3%」という確率は「高い方ではないが低くはない」。
 これらの断層での地震発生を想定したシミュレーションはなく、今後、被害想定が再検討される可能性がある。東日本大震災では海域の断層が立て続けにずれたことで被害が拡大した。本県でも津波に関する啓発に改めて力を入れる必要があるという。
 県は、大規模な地震を想定した地域防災計画を既に策定済み。県危機管理課は「調査の進展を注視し、被害想定を見直す必要があれば検討する可能性がある」としている。
 海域活断層だけでなく、県内では千々石断層など陸上にも断層があり、斜面地の密集地など地震に弱い場所も少なくない。松島教授は「どこでも地震が起きる可能性があることを肝に銘じ、いつ何があっても困らないように備えなければ」と話した。


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