長崎上陸の日 カトリック修道士 小崎登明

昭和五年の四月二十四日。聖母の騎士にとっては記念すべき日であった。コルベ神父ら三人の、最初のポーランド人騎士たちが、長崎に第一歩をふみしめた日だ。

コルベ神父、ゼノ修道士、ヒラリオ修道士の三人はその前日、中国の上海を出発していた。東洋に向けて宣教の旅にのぼったのは五人であったが、上海で二人の修道士が下船し、住居を定め、中国語の勉強をはじめていた。のこり三人が上海を出発。乗りついだ汽船は五千五百トンの日中連絡船・長崎丸であった。二十六時間かかって、午後一時すぎ長崎港に入港した。

すでに朝からの雨はやみ、風も幾分おさまり、曇り空になっていた。港内にはいると船は減速する。左手に神の島の白い天主堂と三菱造船所、右手にはフランス風の建物のマリア園、大浦天主堂、海星学園、オランダ屋敷など次つぎに景色がかわり、雨のあがった長崎の風景はあざやかであった。

「山あり、海あり、緑ありで大変美しいところです」とコルベ師は短い句で表現している。はるばる、夢にまでみた殉教者の国ニッポン。彼らの感慨は深かったであろう。

聖母文庫「長崎のコルベ神父」より

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