国は「非開門」の姿勢 総額100億円の基金による和解を 諫干堤防閉め切り25年

 諫早湾干拓地の潮受け堤防排水門について国は、開門すれば閉め切り後に定着した農業や生態系に影響を及ぼし、防災上も支障が生じるなどとして「非開門」の姿勢を明確にしている。開門せず、総額100億円の有明海振興基金(仮称)による和解を目指す方針だ。ただ、有明海再生事業では2002年度以降、総額493億円(19年度現在)の国費が投じられているものの、十分な成果が上がっているとは言い難い。
 諫干事業を巡っては訴訟も乱立した。堤防閉め切りと一部海域の漁業被害との因果関係を認め、5年間の開門調査を国に命じた10年の福岡高裁判決は、当時の民主党政権が上告を見送り、確定。だが、国は自公政権移行後の14年、「事情変動」を理由に開門の強制執行排除を求め、佐賀地裁に請求異議訴訟を起こした。
 請求異議訴訟で国は「13年以降、漁獲量は増加傾向に転じている」などと主張。福岡高裁は18年、一審判決を取り消し、国が逆転勝訴した。最高裁は二審での共同漁業権の解釈に誤りがあるとして審理を差し戻したが、福岡高裁は今年3月、「共同漁業権の対象となる主な魚種全体の漁獲量は増加傾向にある」などとして国の主張を再び認め、開門命令を「無効化」させる判断を下した(開門確定判決原告側は上告)。
 最高裁は19年、別の2件の関連訴訟で「非開門」の判断を確定させている。請求異議訴訟で開門命令の無効化が確定すれば、司法判断は「非開門」で統一されるが、地裁や高裁ではほかに複数の訴訟が係争中。裁判闘争の出口は見えず、司法決着の限界も指摘されている。開門派が求める和解協議について、国は「非開門が前提」との考えを崩しておらず、両者の溝は依然大きい。


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