答え見つからず戦力外「楽しくなかった」 3年後に北九州で見つけた“ワクワク”

元DeNAで現在は福岡北九州フェニックスに所属する松尾大河【写真提供:福岡北九州フェニックス】

DeNAでは1軍デビュー叶わず「すごく悩んだ3年間だった」

今年から九州で産声を上げたチームで、新たなスタートを切った男がいる。登録名は「大河」。元DeNAの松尾大河内野手だ。所属するチームは、九州アジアリーグに加入する福岡北九州フェニックス(以下北九州)。24歳を迎えたばかりの内野手は、新天地での日々について「ワクワクしてやっています」とニッコリ微笑む。

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職業=野球選手となってはや6年。北九州が4球団目となる。熊本・秀岳館高3年だった2016年、甲子園で春夏連続ベスト4の原動力となった大河は、その年のドラフト3位でDeNAに入団。走攻守三拍子揃った内野手として期待された。

だが、プロ3年目となる2019年シーズンを終えると、1軍デビューを果たせないまま戦力外通告。ファームでの成績を振り返ってみると、1年目が出場102試合で打率.185、2年目が95試合で打率.237、3年目が75試合で打率.193と伸び悩んだ。この3年間について聞かれると、「楽しくはなかったですね」と苦笑いを浮かべる。

「バッティングが悪くなった理由や原因を考えてみても、どうしたらいいか答えが全然見つからなかった。ずっとそういう感じで過ごしていたので、すごく悩んだ3年間だったと思います」

その年の12球団合同トライアウトに参加し、5打席で1安打を含む2度の出塁に成功。いずれも盗塁を試みて1回成功させたが、NPB球団からは声が掛からず。2020年から始動する沖縄初のプロ野球チーム・琉球ブルーオーシャンズ(以下琉球)に入団することになった。

NPB復帰を目指して迎えた2020年は、コロナ禍によりほとんど活動できず。仕切り直しと臨んだ昨年は、8月に新型コロナウイルス感染に関連してチームが活動休止となり、9月からBCリーグの茨城アストロプラネッツ(以下茨城)で派遣選手としてプレーした。

琉球で待っていたかけがえのない出会い「野球を教えてもらった」

琉球で過ごした2シーズンはお世辞にも落ち着いた環境とは言えなかったが、大河にとってはかけがえのない出会いがあった。それが元ソフトバンク、中日で現社会人・ショウワコーポレーション監督の亀澤恭平と、元ソフトバンク、ロッテの李杜軒との出会いだ。

「琉球でお世話になったのが亀澤さんと李さん。野球を教えてもらいました。とにかく守備・走塁・打撃についてずっと話をしていましたね。ベイスターズでもいろいろな方と話をさせてもらったけど、頭にあるイメージが体の動きとして上手く表現できず、どうしようどうしようとハマっていった感じ。それが琉球では頭と体がマッチして、目指すべき方向が自分の中ではっきり見えました」

視界が開けた様子は数字にも表れた。琉球2年目の昨季は8月まで37試合に出場し、打率は3割ちょうどで12盗塁をマーク。茨城でも8試合で4打点を挙げ、盗塁も2つ決めた。この時、走攻守で躍動する大河の姿に光るものを見たのが、当時栃木ゴールデンブレーブスでプレーしていた西岡剛だ。シーズン終了後、琉球を退団した大河の元に西岡から連絡が入った。

「西岡さんから連絡をいただいて、北九州で兼任監督をする方向で考えているから、新チームのトライアウトを受けにきてほしい、と誘っていただきました。ただ、12球団合同トライアウトを受けるので、その返事待ちでもいいですか、と」

11月3日に行われた北九州のトライアウトには合格したが、最終的な返事は保留。12月には12球団合同トライアウトに2度目の参加をし、6打席で1安打を含む3出塁、2盗塁の結果を残したが、NPB球団から連絡はなかった。野球を辞めるつもりはないし、正直なところ西岡の誘いに心惹かれてもいた。

「声を掛けていただき、うれしかったですね。求められる場所にいくのが一番いいし、プロの世界であれだけ活躍した西岡さんの元でいろいろなことが吸収できるんじゃないかと思い、入団させてもらうことにしました」

NPBで「結果を残す」自信はあるが「現実は厳しい」と自己分析

3月のキャンプインから1か月あまり。西岡兼任監督が率いる北九州は、選手の自主性や置かれた状況などを考慮した練習形式を採り入れたり、試合では音楽を流して雰囲気を盛り上げたり、従来の枠を越えた新たなアプローチで野球の魅力を伝えている。ホーム開幕戦となった3月20日の火の国サラマンダーズ戦には、独立リーグとしては異例の1248人ものファンが集まった。

手探りではあるが、チーム一丸となって新しいものを作り出している感覚に「どんなチームになっているか、シーズンが終わった後が楽しみですね。毎日ワクワク楽しい気持ちでやっています」と大河。新チームの勢いに乗って「NPBに復帰する!」と景気よく宣言したいところだが、現実を冷静に見る自分もいる。

「トライアウトを2回受けて声が掛からず、ほぼ戻れない状態だと思っています。もちろん、戻れるなら戻りたいし、戻ったら『結果を残します。ベイスターズの3年間とは全然違う自分を見せます』という自信はあります。でも、現実は厳しいので、自分よりNPBに行く可能性が高い選手に、僕の経験を伝えていきたいとも思っています」

現役を退くつもりはこれっぽっちもない。3歳から始め、20年以上もの付き合いになる野球とは切っても切れない縁にある。辞めようと思ったことは何度もあるが、「やっぱり好きだし、辞められません。今となっては辞める理由を探す方が難しいくらいです(笑)」。自身の売りでもある「積極性と気持ち溢れるプレー」で大いに北九州を盛り上げていくつもりだ。

「自分たちの元気なプレーで、周りも元気になってもらえるように。応援していただいている実感を持ちながら、地元に愛されるチームになっていきたいですね」

NPBを離れて3年目。野球選手として、人として、一回りも二回りも大きくなった姿を、北九州の地で見せつける。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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