畳の両端の縁(ふち)についている布を、畳縁(たたみべり)といいます。
ハンドメイド材料にもなる、畳縁。
畳縁や、畳縁を使ったおしゃれな雑貨を購入できるお店が、倉敷美観地区内にあります。
軽くて壊れにくくて、特別なお土産にもぴったり。
お土産として話題性があり地元民にも愛される、畳縁&畳縁雑貨店「FLAT(フラット)」を取材しました。
FLATには児島本店と倉敷美観地区店の2店舗があり、この記事では倉敷美観地区店を中心に紹介します。
畳縁とは?
畳縁とは、畳の両端についている織物です。
畳は、稲藁(いなわら)などで作られる畳の芯である「畳床(たたみどこ)」に、い草を編んだ「畳表(たたみおもて)」をかぶせ、長辺に「畳縁」を縫い付けて作られます。
畳縁は、以下の役割があります。
- 畳の部材をひとつにする
- 畳表の傷みやささくれを防止する
- 畳の隙間をしめ、埃を溜めにくくする
- 部屋の装飾
現存する最古の畳は奈良時代のもので、この畳にも縁に布が使われているのだとか。
明治時代の終わりごろには畳が一般的になり、畳専用の布として細幅の畳縁が作られるようになりました。
素材は、以前は綿糸や麻糸が使用されていましたが、現在は化学繊維で織られたものが主流となっています。
畳縁のある畳は、ない畳と比べて素材を長く使えるため、環境にやさしい畳といえるでしょう。
岡山と畳縁と髙田織物
岡山で畳縁が作られるようになったのは、大正10年頃。
「岡山の畳縁は品質が良い」と評判が広がり、全国で需要が高まったそうです。
2022年現在、畳縁の8割を岡山県で生産しています。
そのうちの約半数、畳縁生産の全国シェア4割を占めるのが、髙田織物(たかたおりもの)です。
明治25年に織物会社として創業し、昭和初期に畳縁製造を始めます。
昭和30年代後半には、業界で初めて柄の入った畳縁を開発しました。
その後も新しい畳縁の開発や認知拡大に努め、現在は約1,000種類の畳縁を製造・販売しています。
畳縁は、地味な存在と思われがちかもしれません。
しかし髙田織物には、無地や伝統的な和柄はもちろん、カラフルなもの、かわいいもの、洋風なもの……驚くほど多様な畳縁があるのです。
部屋のコーディネートの幅が、ぐんと広がります。
素材としての畳縁
髙田織物は、以前から用途開発に取り組んできました。
その効果もあり、「畳の一部」だった畳縁は、近年「畳縁そのもの」が素材としても注目されるように!
畳縁は、しなやかで軽量、そして摩擦に強くとても丈夫。
アイロンと洗濯はできませんが、厚みがあり、折り目をつけやすく、独特の光沢と張りも特徴です。
手芸向けの出版社とタイアップして畳縁を使ったハンドメイドBOOKを何巻も出版し、ハンドメイド好きの心をつかんでいます。
ミシン縫いでも手縫いでもOK。
畳の縁につける布として発展してきた幅80ミリメートルの独特の織物は、その他の用途でもおもしろく魅力のあるものとして評価が高まっています。
FLATとは
髙田織物が畳縁の認知拡大・価値拡大をめざし、2014年にオープンした直営店が「FLAT」です。
2022年現在、以下の2店舗があります。
「FLAT 児島本店」は、工場と同じ敷地内にあるファクトリーショップ。
工場見学に訪れたかたも、すぐに商品を見られるようになっています。
工場見学しないかたでも、買い物が可能。
和室に使う畳縁を選びに岡山県外から来るお客さんもいるそうです。
児島本店の営業日は工場と同じなので、オープンしているのは主に平日です。詳しくは営業カレンダーを見てください。
「FLAT 倉敷美観地区店」は、その名のとおり倉敷美観地区にあるお店。
アンテナショップのような位置づけで、観光中に気軽に立ち寄れます。
雑貨やオリジナル小物があり、お土産にぴったりです。
児島本店のほうが広いのですが、倉敷美観地区店は雑貨類が多めで、倉敷美観地区店にしか置いていない商品もありますよ。
FLATの商品
FLATにはどんな商品があるのでしょうか?
「FLAT 倉敷美観地区店」にある商品の一部を紹介しましょう。
記載の値段は、2022年4月現在の税込価格です。
畳縁
畳2畳分の10メートルロール(990円~)と、約1.5メートル(330円)の端切れを購入できます。
いろいろな柄があるので悩んでしまいます!
ハンドメイドに必要な材料と制作時間の例は、以下のとおり。
端切れの1.5メートルは、ポーチやカードケースなどの小物をじゅうぶん作れる長さです。
無料で持ち帰れるハンドメイドレシピもあるので、気軽に畳縁でのハンドメイドを試せます。
いくつかのレシピは動画でも紹介されていますよ。
畳縁鮫(小)(5,500円)
背中は畳縁、お腹はデニム、カラビナ(金属リング)をつなぐ紐は真田紐、ネームタグも児島産。
倉敷市児島の名産品を使用した軽くて丈夫なポーチです。
口の中には、5.5インチサイズのスマートフォンなどが入ります。
男女ともに使いやすいかわいさで、ユニークな鮫ポーチ。子ども受けもいいのだとか。
カラビナでベルトに通したりカバンにつけたりできます。
さまざまな色柄があるので、お気に入りを見つけてください。
ミニ畳づくりキット(2,640円)
自分でミニ畳を作れるキットです。
畳縁は入っていないので、店内の好きな色柄が選べます。
髙田織物の工場見学オプションメニューである「ミニ畳づくり体験」がとても好評で、自宅でもやりたいという声が挙がったそう。
その声を受けて社員さんが開発したのが、ミニ畳づくりキットです。
YouTubeでは作りかた動画を見られます。
和小物やフィギュアを置くのも楽しそうですね。
小銭入れ(550円)
家紋や和柄・猫柄・花柄など、種類豊富な小銭入れ。
大手まんぢゅうのパッケージの柄や、児島のキャラクター「Gパンだ」など、岡山ゆかりの柄も。
作家さんのオリジナルアイテム
FLAT 倉敷美観地区店では、地元の作家さんが作ったアイテムを多数扱っています。
土曜日・日曜日は作家さんが店頭に立たれていることもあるそうです。
こだわりのポイントを直接聞けるかもしれません。
倉敷にかかわる女子が、地域に伝わる伝統素材をデイリーユースに使えるアイテムにするプロジェクト「くらしき女子Collection」の商品も。
畳縁を使ったチャーム・ピアス・キーストラップ・コサージュ・ヘアアクセサリーなど多様なアイテムを販売しています。
ハンドメイドレシピ本
無料で持ち帰れるレシピもいくつかありますが、もっとディープに楽しみたいかたには、本がおすすめです。
ワークショップでくるみボタンを作ろう
畳縁を使ったくるみボタンのワークショップも楽しめます。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、2022年4月現在は土日祝のみの開催です。体験内容も短縮しています。
約35種類の畳縁から好きな柄を選んで、ヘアゴム・マグネット・ブローチに。
選べる畳縁は時期によって異なります。
1つ300円で、5分程度で作れます。
大人にも子どもにもおすすめです。
続いて、髙田織物株式会社の代表取締役、髙田尚志(たかた なおし)さんにインタビューをしました。
インタビュー
髙田織物株式会社の代表取締役、髙田尚志(たかた なおし)さんに話を聞きました。
なお直営店FLATを作った理由などについては、髙田織物株式会社のインタビューで聞いています。
FLATのお店について
──FLATという店名の由来はなんですか?
髙田(敬称略)──
3つあります。
1つ目は、1号店である児島本店が1階建で、英語で1階建の平屋住居を「flat」ということ。
2つ目は、「ふらっと」立ち寄ってほしいというシャレ。
3つ目は、畳縁の品質にかかわることです。細幅の織物は表面がポコポコしやすく、クオリティの高い織物のことをフラットというんです。
これらをふまえて「FLAT」という名前になりました。
倉敷美観地区店においても、「ふらっと立ち寄ってほしい」と思っています。
──倉敷美観地区店がこの場所にできた理由はなんでしょうか?
髙田──
もともとこちらの建物には、フランスの輸入雑貨専門店が入っていました。
フランスで日本ナイズした生活を送る人のことを「タタミゼ(tatamiser)」っていうんです。
今でもInstagramで「tatami」と検索するとフランスで柔道をしているかたがたの写真がたくさん出てくるぐらい、畳という言葉はフランスと関連が強いんですね。
それで、そのフランス輸入雑貨店で髙田織物の商品も少し置かせてもらっていたんです。
後に、ここでお店をしてみませんかと提案いただき、FLATをオープンしました。
商品について
──続いて商品について教えてください。手のひらポーチはどのようなものでしょうか?
髙田──
手のひらに収まるサイズの、マチありポーチです。
畳縁2種を縫い合わせていて、裏張りが有るものと無いものがあります。
持っていただいたらわかるのですが、軽くて、耐久性があって。
用途を限定せず日常で気軽に持ち運べます。
──畳縁鮫はどうやってうまれたんですか?
髙田──
畳縁鮫は、地元の作家さんが考案し作っていらっしゃる商品です。
もともとこの鮫は、背面も全部デニムでした。
児島の海沿いには、ジーンズのメーカーがたくさんあります。
そこを「ジーンズのベイ(Bay = 湾)」と呼んで、ジーンズベイにあるもので作った「ジーンズベイ鮫→ジンベイザメ」というシャレから始まったものです。
その後、「児島の繊維製品をぎゅっと詰めこもう」ということになり、畳縁鮫が生まれました。
児島は学生服の生産が盛んな街です。作家さんの作品には、学生服の生地で作られた「ガッコウクジラ」もいるんですよ。
──ご祝儀袋の開発由来を教えてください。
髙田──
最初は髙田織物のアイディアではありません。
畳屋さんが少量作っていらっしゃるのを見て「これはいいな」と思い、相談して商品化しました。
畳縁の柄にはいろいろな意味合いがあるので、どの柄にするか渡す相手のことを思いながら選べます。
たとえば合格祝いならだるまの柄が喜ばれるかもしれないし、お店をオープンした相手だったら招き猫がいいかもしれない。
ご祝儀袋も畳縁と同じように、柄で意味づけを変えられるのがおもしろいと感じています。
畳縁の「縁」はご縁の「縁」。幅もぴったりで、畳縁の部分は受け取ったかたが本のしおりとして使えます。
FLATの想い
──FLATで大切にしていることはなんですか?
髙田──
作り手の想いをきちんと伝えることを、大切にしています。
物を作っているメーカーが直接運営しているお店なので、素材だけが一人歩きしていくのではなくて、よくわかっている人たちが伝えられます。
──FLATが目指すことはありますか?
髙田──
畳縁が、これからも人々の生活のなかに自然とあり続けてほしいと願っています。
そのためにも、いろいろな畳縁があることを知っていただけるよう伝えていき、みなさまのお役に立てたら。
畳縁の認知と価値の向上を目指しています。
それが畳に返ってくれば、よりうれしいですね。
畳縁ハンドメイドに挑戦
ふだんはハンドメイドから遠ざかっている筆者が、畳縁でのリボン作りに挑戦してみました。
作ったのは、レシピに「はじめてさんも!かんたん!」と書いてあった「縁結びのリボン」。
レシピに従い、畳縁を25センチメートルの長さに切り、ヘアゴムと両面テープを用意しました。
「縁結びのリボン」は、縫う部分は少しだけ。
おおまかにいうと、折って両端を少し縫って切れば、ひっくり返して結んで完成です。
レシピには、ミシンの場合に推奨するミシン糸と針の号数、手縫いの場合に推奨する縫いかたとその図説も掲載されています。
筆者は手縫いでチャレンジ。
針を刺すのに力がいるのかなと想像していましたが、すいすいと縫えました。
手でキュッと抑えると型がつくので、折る作業がしやすいのもうれしいポイントです。
久しぶりの裁縫でも、簡単にリボンが完成!
楽しかったので、次は別のレシピで作ってみたいなと思いました。
カラフルで楽しい畳縁に出会おう
身近にあっても意識することが少なかったかもしれない、畳縁。
実はその多くが倉敷で作られていて、畳縁の世界はぐんぐんと広がっています!
独特のツヤ感と手触りは心地よく、軽くて丈夫で、きれいでかわいい色柄がいっぱい。
日常使いに、お土産に。きっと惹かれるものが見つかるのではないでしょうか。
軽くて壊れにくいのは、お土産にうれしいポイントです。
130円ほどの気軽に渡せるものから、特別な人へのプレゼントに使えるものまで揃っています。
食べものではないお土産を探しているかたは、ぜひ立ち寄ってみてください。
カラフルで楽しい畳縁に、出会いませんか。