<社説>

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告で、第3作業部会が温室効果ガス排出削減の道筋を示す報告書を公表した。記者会見で科学者らは、産業界や消費者、先進国、途上国の全てにできることがあると強調し、「道具もノウハウもある。行動を起こす時だ」と呼び掛けた。沖縄でも何ができるのか真剣に考えたい。 IPCCは昨年8月の第1部会報告書で人為的な活動が地球温暖化の原因となっていることを「疑う余地がない」とした。今年2月の第2部会報告書では気候変動で予想される深刻な被害を示した。今回の報告書は、現在、各国が掲げている排出削減目標を達成できても、地球全体ではパリ協定の目標に遠く及ばないとし、遅くとも2025年より前に排出を減少に転じさせる必要があると訴えた。

 そして、一般消費者など需要側ができることを挙げた。「社会文化的変化」「行動の変容」として、電気自動車への移行、公共交通・自転車での通勤、テレワーク、過剰消費の回避などが示された。断熱住宅、省エネビルなども効果が大きいとしている。

 政策としては、まず化石燃料の削減が大きな課題だ。日本政府は、石炭火力発電の全廃は掲げず、石炭火力での水素・アンモニア混焼やCO2回収・貯留技術を進めている。環境団体「気候ネットワーク」などは、排出削減にはならず、かつ経済合理性を欠くと批判している。2月に新築住宅の省エネ基準を25年度から義務化する法案の国会提出を先送りしたことでも、政府は本気度を問われた。

 ウクライナ侵攻に対する経済制裁でロシアから天然ガスや石炭を輸入しないという動きが出てエネルギーが高騰している。日本では円安も加わり国民生活の負担が増している。一方で、太陽光や風力など再生エネルギーのコスト的優位は増している。実用化が見通せない新技術より、蓄電池や輸送技術を含めた、地産地消の再生エネルギーの開発に力を注ぐべきである。

 エネルギー高騰で、英国やフランスで原発回帰の動きが出ている。しかし、ウクライナ侵攻は原発が標的にされる危険性を改めて見せつけた。原発は、廃棄物処分も廃炉もいつ実現するか分からない。福島第1原発問題などを抱える日本で、原発回帰という選択肢はあり得ない。

 県や市町村でできる施策もある。京都府などは、住宅への再エネ設備導入の義務付けを独自に進めている。横浜市は小中学校に太陽光パネルと蓄電池を設置する。昨年3月に「クリーンエネルギー・イニシアティブ」を策定した沖縄県も、その周知を図ることに加え、産業政策と消費者向けの政策を速やかに具体化していく必要がある。

 かけがえのない地球を次の世代に引き継ぐため、脱炭素化は待ったなしだ。沖縄でもすぐにできることがある。

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