元大阪桐蔭主将が女子野球チームを作った理由 1年限定で日本一に挑む覚悟と信念

ミノルマン率いる女子硬式野球チーム「Amazing」【写真:本人提供】

当初は軟式野球チームからスタート、現在は硬式野球にシフトチェンジし日本一を狙う

誰もが共感する野球技術論で、今ではプロ野球選手も教えを請う野球YouTuber「ミノルマン」こと廣畑実さん。大阪桐蔭高では主将を務め、亜細亜大、JR東海と進み、現在は野球塾「Amazing」も経営しながら全国の少年、少女らに指導を行っている。そんな中、自らが監督となり1年限定の女子硬式野球チームを結成。その理由に迫った。

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「男子の野球以外に、もっと人が応援できるものを作りたかった」

高校、大学、プロ野球、メジャーリーグ――。連日、メディアで報じられるのは決まって男子が行う野球。一方、女子は野球日本代表「侍ジャパン」女子代表が「女子野球ワールドカップ」で前人未到の6連覇を達成するなど、実力は世界レベルながら“熱”は一瞬。単発的に報じられることはあっても、知名度は他競技に比べても低いのが現状だ。

そんな女子野球界のために何かできないかと考えた結果、廣畑さんはまず軟式の女子野球チーム「Amazing」を結成。YouTubeなどでも夢を追う女子球児たちを取り上げ、女子野球を普及させる思いも伝えた。選手を集めるために連日、自らがバッティングセンターに通うこともあったという。知人から知人へと野球界の横の繋がりもあり、本気で野球に取り組む精鋭14人が集まった。

ミノルマン率いる女子硬式野球チーム「Amazing」【写真:本人提供】

女子硬式野球連盟が救いの手「ガンガン、盛り上げてほしい」

基本的には野球塾が終わった夜9時~12時まで同施設を使って練習を行っている。企業がバックアップするクラブチームとは違い、選手たちは自分たちで働きながら生計を立てている。「この子たちに何か残せないか」。廣畑さんは「次の仕事にも何か繋がるかもしれない」との思いで、ドキュメンタリーとして映像を残し、映画化することを最大の目標に掲げる。

自らが指揮を執って日本一を目指していたものの、コロナ禍がそれを阻む形となった。参加しようとしていた大会自体が中止になるなど思ったような動きができなかったが、そこに手を差し伸べてくれたのが女子硬式野球連盟だった。

「僕たちの思いを伝えると『ガンガン、盛り上げてほしい』と言ってくれた。壮大な夢を語っても共感してくれて。自分も自信があったので『硬式で日本一』を目標に設定しました」

「Amazing」の笹川萌【写真:荒川祐史】

人気野球女子YouTuberとしても活動する笹川萌さんは関東から関西に移住

軟式から硬式に移行しても選手たちは付いてきてくれた。人気野球女子YouTuberとしても活動する笹川萌さんは軟式時代から所属していたが、今年に入って関東から関西に移住するなど、本気で日本一を狙うナインが揃った。

ただ、なぜ1年限定なのだろうか。

「ダラダラやるより、覚悟を持ってやらないとダメだなと。勝てなかったら来年、というのは違う。もし、日本一になれなかったとしても、そこまでの思いを形にできる。それは選手にも伝えています。一番は女子野球の知名度をガンガン上げること」

今は高校、大学、社会人、クラブチームと全カテゴリーが出場する「全日本女子硬式野球選手権大会」に向けて準備を進めている。過去の大会や試合をチェック。これまでに練習試合も行い「そこまで圧倒的なレベルの違いはない。もっと考える野球を突き詰めれば、絶対に勝負はできる」と、自信を持っている。

今年初の対外試合となった履正社高との練習試合では4-5で惜敗。だが、選抜制覇を成し遂げたことのある全国的な強豪を最後まで苦しめるなど、着実に力を付けている。女子硬式野球「Amazing」が掲げる「1年で日本一」への挑戦が始まった。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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