BTCC開幕前最後の公式テストは王者サットン最速。共通ハイブリッドの運用ガイドラインも公開

 2022年に史上初の共通ハイブリッド機構を導入するBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、ドニントンパーク、クロフトと続いた公式プレシーズンテストの締め括りとして、4月13日のスラクストンでシーズンラウンチを兼ねた恒例の“メディアデイ”を実施。午前、午後と通常どおり設定された開幕前最後のセッションでは、フォード陣営への電撃移籍を決めたディフェンディングチャンピオン、アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)がこのオフ初のトップタイムを記録し、4月23~24日の開幕戦ドニントンに向け万全の準備体制を整えた。

 各陣営とも、新シーズンに向けたお披露目会も兼ねる最後の公式テストが、今季は高速トラックのスラクストンを舞台に開催された。

 そのテストを前に体制発表を終えていなかったチームも続々と新カラーリングやパートナー契約を公開し、昨季のチャンピオンを輩出したレーザー・ツールズ・レーシングから一部機材を購入したチーム・ハードは、こちらもエクセラー8モータースポーツから移籍加入の元ブリティッシュGT王者のリック・パーフィットがドライブする、インフィニティQ50BTCCを披露。そして同チーム残留を決めたF1の7冠王者ルイス・ハミルトンの実弟ニコラスは、アーロン-テイラー・スミスの僚友として引き続きクプラ・レオンBTCCのステアリングを握ることとなった。

 さらにホンダ陣営トップチームとして参戦する古豪チーム・ダイナミクスは、引き続きハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーンのエントリー名でゴードン・シェドンとダニエル・ロウボトムの2台のFK8型ホンダ・シビック・タイプRを走らせるが、そのカラースキームは現チーム代表のマット・ニールが1992年にBTCCデビューを飾った際のBMWをモチーフとした“レトロ・リバリー”を採用した。

 また、今季導入のMスポーツ製新型TOCA共通エンジン搭載のBTCレーシングは、先日発表された3台のラインアップ全車に、英国エナジードリンク企業『リッチエナジー』がタイトルパートナーに就任したことをアナウンス。改めて“ゴールド・グラファイト”と化したシビックはリッチエナジー・BTCレーシングのエントリー名で共通ハイブリッド機構導入初年度を戦うことになった。

 そんな体制発表とフィルミング、フォトシューティングに続いて実施されたセッションでは、今季より名門ウエスト・サリー・レーシングとのジョイントチームで参戦するジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)が、まず午前の枠でトップタイムを記録する。

 この3時間セッションでは本家WSR所属のステファン・ジェリー(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)と、ホンダのシェドンがクラッシュを喫し、長い赤旗中断も発生。さらに終盤は急なにわか雨にも見舞われ、各車ともに走行を見合わせたことで約15分間もトラックが空いたままとなった。

■TOCA共通ハイブリッド機構の運用方法が明らかに

古豪Team Dynamicsは、現チーム代表のマット・ニールに由来する”レトロ・リバリー”を採用した
ディフェンディングチャンピオン、アシュリー・サットン(NAPA Racing UK/フォード・フォーカスST)がこのオフ初のトップタイムを記録
4冠王者コリン・ターキントン(Team BMW/BMW 330e M-Sport)は、BMW Mの50周年にちなみカーナンバーを変更
その名門West Surrey Racingとのジョイントチームで参戦するジェイク・ヒル(MB Motorsport powered by ROKiT/BMW 330e M-Sport)が午前最速に

 幸い天候が回復した午後は参加全28台中(年間エントリー登録は29台)26台がタイム計時を果たすなか、新時代移行の節目にモーターベース・パフォーマンスへの電撃移籍を決めた王者サットンが、午前のヒルをコンマ1秒更新する1分15秒607を記録し、FRからFFへの乗り換えに際して「習熟完了」とでも言わんばかりのトップタイムを刻んでみせた。

 これで総合2番手となったヒルの背後にはロウボトム、シェドンのシビックに挟まれるかたちで、トム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が入って4番手に。

 以下、ダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)、アダム・モーガン(カーガッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)、4冠王者コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)、ダン・ロイド(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)と並び、現役ラストイヤーのジェイソン・プラト(リッチエナジー・BTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が続くトップ10となった。

 このタイムシートの上位8台は、2020年に記録されたスラクストンのコースレコードを更新するかたちとなり、改めてコスワース・エレクトロニクス社製のTOCAハイブリッド・システムのエクストラパワーが証明されたが、この機構は導入初年度より従来の“サクセスバラスト”に代わる役目も担うことから、改めてその運用方法もアナウンスされている。

 この“P2 off-axis”と呼ばれるシステムは、レースのオープニングラップ終了(セーフティカー後のリスタート時も同様)の2周目から1周当たり最大15秒間の追加パワーを供給。車両が75mph(約120km/h)に到達した段階から利用可能とされた。仮にその速度に達する前にハイブリッドを作動させようとした場合、約2秒間の“ロックアウト”が発生。トラックサイドのファンは、リアウインドウの識別ライトを介してシステムの作動を視認できるという。

 さらにハンデ機能の運用面では、サクセスバラストに代えてチャンピオンシップのスタンディング順に予選時の使用時間を制限する方式を採り、各レースでは選手権順位、または前戦のレース結果に応じて使用可能周回数が制限されることになる。

午前の終了直前には急なにわか雨にも見舞われ、約15分間もトラックが空いたままとなった
今季を現役ラストイヤーとするジェイソン・プラト(Rich Energy BTC Racing/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)がトップ10に喰い込んだ
“P2 off-axis”と呼ばれるCosworth Electronics社製のTOCA Hybrid system
新時代移行の節目にMotorbase Performanceへの電撃移籍を決めた王者サットンと、好調を維持するダン・カミッシュ(左)

■TOCA共通ハイブリッド機構(HEMS)運用方法

<予選>

選手権順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 11位以下

使用可能秒数(/Lap) 0秒 1.5秒 3秒 4.5秒 6秒 7.5秒 9秒 10.5秒 12秒 13.5秒 15秒

<決勝/17周以下の場合>

選手権順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 11位以下

使用不可周回数 10周 9周 8周 7周 6周 5周 4周 3周 2周 1周 なし

<決勝/17周以上の場合>

選手権順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 11位以下

使用不可周回数 15周 13周 11周 9周 7周 5周 4周 3周 2周 1周 なし

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