【不動産取引・全面ネット化解禁間近】業界大変革につながるのか ―オンライン取引と不動産IDの行方(下)

昨年7月には専任宅地建物取引士のテレワークが承認され、今年5月には不動産取引3大書面の電子化がいよいよ正式に解禁される。しかし書面の電子化には遵守・留意すべき事項が事細かく整備・ルール化される。一方、不動産関連情報の連携・蓄積・活用を推進する「不動産ID」のルール化は今年度中に決定される予定だ。本格的デジタル社会を迎える中、不動産業界に大変革時代が訪れるのか注目される。

【不動産取引・全面ネット化解禁間近】業界大変革につながるのか ―オンライン取引と不動産IDの行方(上)より続く

不動産IDのルールは今年度中に決定予定

登記簿上の不動産番号と特定コードは計17桁に

すべての不動産(土地・建物)を一元的に管理するために付与する共通コード「不動産ID」については今年度中にそのルールが決定されることになっている。現段階で決まっていることは、不動産の類型にかかわらず登記簿上の不動産番号(13桁)と特定コード(4桁)で構成される17桁の番号を使用する。特定コード4桁は登記簿上の不動産番号だけでは不動産を特定できない場合に付すことになる。例えば賃貸アパートは、登記簿上は1棟ごとに1つの不動産番号しかないので各部屋の番号が必要になる。そのため、不動産番号13桁に部屋の数字4桁を追加する。
区分所有建物のうち、分譲マンションは各専有部分(部屋)単位で登記記録と不動産番号が存在しているのでそれを使用する。ただ、区分所有建物の建物全体に対応する不動産番号は存在しないため、その建物が建つ土地の不動産番号13桁をIDとして使用し、更に特定コードには「建物」であることを表す符号を付すことになるという。

不動産関連情報の連携・蓄積・活用は進むか

課題は個人情報による制限と各種行政情報との紐づけ

この不動産IDが実現すれば、住所・地番の表記ゆれがあっても名寄せが容易になるため、レインズやポータルサイトなど各種データ上で同一物件かどうかを直ちに判断することが可能になる。問題はそれによって、事業者にどのような活用方法が生まれ、ユーザーにはどのようなメリットがもたらされるかだが、国交省は主に以下のようなメリットを掲げている。
当面の段階としては重複掲載やおとり物件の排除、各種入力負担の軽減。中期的には成約価格の推移を把握することによる価格査定の精度向上、住宅履歴情報との連携によるリフォーム履歴などの把握、電気・ガス・水道などの生活インフラに関する事業者間や自治体などとの情報交換の効率化。更に長期的には行政が保有するデータへの紐づけが行われるようになれば最新の都市計画、ハザードマップなどとの連携により、宅建業者の調査負担や重要事項説明書の作成負担の軽減などが可能になるとしている。
しかし、この中・長期的な活用メリットについては住宅の成約価格公開が個人情報との関係でどこまで進むか、各種行政データとの紐づけが技術的に可能かなどの課題が控えており、いずれも現段階では想定の域を出ていない。
とはいえ、国交省は将来的には高精度のAIによる詳細なエリアごとの人口動態など多様なビッグデータとの連携で、新たな不動産関連サービスの創出が期待されるとするなど不動産業界の大変革も視野に入れている。

2022 /3/5 不動産経済ファンドレビュー

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