虐待防止へ父親向け講座 日光のNPOが全国初、プログラム実践

父親向け講座を体験する男性スタッフら=2021年12月、大阪府(画像の一部を加工しています、MY TREE提供)

 子育て支援に取り組む認定NPO法人「だいじょうぶ」(栃木県日光市)は8月から、子どもを虐待してしまう親の回復を目指す「MY TREE(マイツリー)ペアレンツ・プログラム」の父親向け講座を開講する。母親に比べ手薄だった父親への支援を行い、虐待の深刻化を防ぐ。プログラムを展開する全国組織とともに、大阪府内と合わせ全国初の実践として行う。

 プログラムは虐待防止などに取り組む一般社団法人「MY TREE」(大阪府)の代表理事森田(もりた)ゆりさんが2001年に開発し、全国で児童相談所などが導入している。

 参加者は虐待につながる怒りの感情を落ち着ける方法などを体験を通して学ぶほか、悩みや経験を互いに語り合う。心の回復や価値観の変化を促し、新たな虐待行動の防止を図る。

 父親向け講座は21年に開発され、大阪府内で試験的に実施された。だいじょうぶなどに男性スタッフが在籍することから22年度、大阪府内に加え、本県内でも本格開講する。全17回、1回2時間半で10人程度に参加者を限定。事前申込制、無料で秘密は厳守される。

 だいじょうぶは12年から、母親向けの講座を宇都宮市内で実施しており、10年間で66人が修了した。一定の成果を得た半面、「体罰はしつけの一環で虐待ではない」「子育ては女性の仕事」といった思い込みなどを背景に父親への支援が難しく、虐待根絶への課題となっていた。

 厚生労働省の統計で、20年度に全国の児童相談所が受けた児童虐待相談は20万5044件と過去最多となった。親の体罰を禁じた改正児童虐待防止法が同年4月に施行されて以降も深刻な事例が後を絶たない。

 だいじょうぶの畠山由美(はたけやまゆみ)理事長(61)は「子どもを救うには虐待をしてしまう母親、父親両者へのケアが欠かせない」と訴えた。

 MY TREEはクラウドファンディングサイト「READYFOR」(https://readyfor.jp/projects/mytree)で運営資金を28日まで募っている。

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