“第2の朝鮮戦争は起こさせない” / 激変の時代 と朝鮮の進路 ③ 先端兵器の開発と反米自主の共同戦線

「米国は決して私とわが国を相手に戦争を仕掛けることができない」というフレーズが金正恩総書記の新年の辞に登場したのはICBM「火星-15」型の試射に成功し、国家核武力完成が宣言された翌年の2018年であった。その後も朝鮮では国防強化のために戦略及び戦術兵器システムの開発生産が進められた。

2021年10月に初めて開催された国防発展展覧会(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

  いかなる軍事的威嚇も制圧

 世界では軍事技術と兵器システムの発展により軍事作戦の様相と地域の安全保障環境が変わる。

朝鮮も米本土を射程圏内に収めるICBMの試射を成功させた時点に留まることはできない。周辺地域の軍事的不安定性とリスクはその後も変化しており、目の前に現実的に存在する脅威を抑える力と手段を備えなければならない。

その方向性と目標は、米国のいかなる軍事的威嚇も完全に抑制する強力な「平和の盾」を構築することだ。「米国を制圧して屈服させることに対外政治活動の焦点を合わせる」(労働党第8回大会 2021年1月)と公言する朝鮮は、国防部門でも同じ原理原則を適用して新たな兵器システムの開発に拍車をかけている。

朝鮮労働党第8回大会で示された国防発展5カ年計画には、世界における軍事力の急速な変化に対応した兵器開発の目標と課題が定められている。

5カ年計画の戦略兵器部門における最優先課題の一つである極超音速ミサイルの開発はすでに完了し、今年1月に最終試射が行われた。極超音速ミサイルは米・中・露が開発競争を繰り広げている先端兵器だ。

極超音速ミサイルの試射が行われた。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

軍事大国を自認する国々は、既存の軍備計画を随時見直し、新たな戦争様相に合致する戦略及び戦術兵器システムを開発する。覇権国家の軍備増強がその対象となった国々の軍備増強を促すという無限競争が起きているが、ここで刮目すべき変化を見せている国が朝鮮である。

朝鮮は誰かとの戦争を論じるのではなく、戦争を防ぎ国権を守るために文字通りの戦争抑止力を強化している、朝鮮の主敵は戦争そのものであり、南朝鮮や米国といった特定の国や勢力ではない。金正恩総書記は公開演説を通じてそのように表明した。

米国は戦争を仕掛けることができず、南は自分たちの武力に太刀打ちできないという自信の表れかもしれないが、大国の利害が交差し、世紀を超えて軍事的緊張状態が続く北東アジアの真ん中で、強大な武力に裏打ちされた「平和守護の旗標」をこれ見よがしに掲げるのは、簡単なことではない。

 世界各地に形成される反米戦線

 新冷戦の構図が深まる世界で平和と安定の根幹を崩しているのは、米国とその追随勢力の強権である。朝鮮との伝統的な友好関係を重視し、首脳レベルで戦略的互恵関係を強めている中国、ロシアも米国と先鋭的に対立し、地域の軍事的不安定性が増している。

バイデン政権発足後、米国は「航行の自由」を口実に艦隊を台湾海峡に展開し、緊張をエスカレートさせた。

中国の内政に属する台湾問題に対する米国の干渉は、朝鮮半島の情勢緊張をさらに促す潜在的な危険性を孕んでいる。「朝中友好協力と相互援助に関する条約」(1961年締結)には、双方は、いずれか一方に対するどのような国からの侵略であっても、これを防止するためにすべての措置を共同で講じる義務を担うという条項がある。近年、朝中間でこの条約の今日的意義が強調され、両国が「一つの参謀部で緊密に協力し協働する」(金正恩総書記)という意向が表明されているのは偶然ではない。

一方、米国の覇権主義と北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大は、ウクライナにおける武力衝突を触発した。ロシァは国家安全保障上の懸念を払拭するために軍事的措置を取った。ソ連と東欧社会主義が崩壊した後、米国と西側諸国がロシアに対して進めた高圧的な封じ込め策に対する反撃である。

そして、中国、ロシアの隣国である朝鮮は、自国の自主権と安全を保障するためには積極的で攻勢的な政治外交及び軍事的対応措置をとることを躊躇しない。

米国の立場からすれば、世界の至るところに反米戦線が発生し、それに対処する力の限界が明らかになるという不利な情勢が形成される可能性がある。

 自主的平和統一の道

 米国の覇権に打撃を与える方式は様々である。

朝鮮は米国を制圧して屈服させると公言しているが、一方で誰かとの戦争を論じるのではなく、戦争そのものに敵とみなすという立場を明確にしている。

3月24日、新型CBM「火星砲-17」型の試射が行われた。ICBMの試射が行われるのは4年4か月ぶりだ。

金正恩総書記は新型ICBM試射すべての過程を直接指導した (朝鮮中央通信=朝鮮通信) 

戦略及び戦術兵器システムの開発をたゆまなく進めるのも、一義的には相手の開戦意志を完全に打ち砕く力を持つことを目的として定めている。圧倒的な武力を備えた朝鮮を敵対視し対決姿勢をとること自体が、米国の国家安全保障を危険にさらす自害行為になることを当事者が悟り既存政策を撤回すれば、軍事的衝突は起こらない。

改正された労働党規約の祖国統一に関する課題部分には、強力な国防力で根源的な軍事的脅威を制圧し、朝鮮半島の安定と平和的環境を守ることが明確に記された。ここには「分断の元凶」である米国をどのように屈服させ、民族の宿願である統一をいかにして成し遂げるか、その方法についての社会主義執権党の立場が反映されている。

世界が激変の時代に突入し、情勢が大きく揺れ動いている。しかし朝鮮半島で戦火が上がり、北と南の同じ民族が銃を向け合う歴史は二度と繰り返さない。朝鮮の国防政策には、そのような意志が貫かれている。

 

 

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