“速やかな情報開示を” 長崎IR、県議会可決

 長崎県のカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の区域整備計画案は、県議会の承認により大きな一里塚を越えた。だが、県はその根幹となる資金調達先の企業名を示しておらず、県民に十分な説明責任を果たしたとは言い難い。公金を投入して誘致を進めており、今後できるだけ速やかに情報開示をする努力が求められる。
 県は昨年1月にIRを設置運営する事業者の公募を始め、同8月にカジノオーストリアインターナショナルジャパンを選定。だが落選した事業者が「県に辞退を促された」と主張。その真偽も含め選考過程に不透明感があったのは否定できない。
 そもそもカジノ施設は国内にはなく、運営も専門性が高いと思われ、計画の実現可能性を一般人が見極めるのは難しい。だからこそ県には分かりやすい説明が求められる。
 県議会にはこうした点を追及する役割が期待された。だが、資金調達先の公表に関しほぼゼロ回答だったにもかかわらず、最終的に大半が賛成に回っており「結論ありき」と思われても仕方がない。
 IRに地域経済の起爆剤としての期待感があるのは一定理解できる。一方で交通渋滞、治安悪化、ギャンブル依存症などの懸念も残り、これらを払拭(ふっしょく)するためにも徹底した情報開示が不可欠だ。
 県は資金調達先を公表できるよう「ぎりぎりまで検討した」(担当部長)という。実現可能性については今後、国の審査に判断が委ねられるが、認定可否の行方は読めない。国は地域の十分な合意形成を求めており、県は県民の理解を得る努力を続けなければならない。


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